茨城一家殺傷 岡庭容疑者が「無罪」となる可能性は小さくない…捜査で欠けている2つの要素

茨城一家殺傷 岡庭容疑者が「無罪」となる可能性は小さくない…捜査で欠けている2つの要素
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茨城県境町にある被害者宅。田園地帯にぽつんとある(撮影・編集部)

茨城県・境町で2019年9月に小林光則さん(当時48歳)と妻の美和さん(当時50歳)が刃物で殺害され、長男と次女が負傷した事件で、茨城県警が5月7日に埼玉県三郷市在住の無職・岡庭由征(26歳)を殺人などの疑いで逮捕してから10日が過ぎた。

この間、岡庭容疑者が高校中退後の2011年、ふたりの少女に刃物で襲い掛かり、重傷を負わせる「通り魔事件」で逮捕されながら、少年法の壁により刑事罰を免れていた事実などが明らかになった。

こうした経歴に、今回の事件に関する状況証拠を合わせて眺めると、境町での殺傷事件は岡庭容疑者の犯行で「決まり」のようにも見えるかもしれない。

しかし実のところ、捜査や取材の現場では「起訴しても、このままでは無罪判決の可能性もある、との緊張が漂っているのが現実」(週刊誌記者)なのだ。なぜか。犯行が岡庭容疑者によるものであることを説明する、2つの重要な要素が欠けているためだ。

事件は「室内」で起きていた

境町の殺傷事件を巡り、県警はどのような証拠を確保しているのか。これまでの報道で明らかになった内容を見てみよう。

まず、県警は岡庭容疑者が事件前に被害者宅周辺を撮影した動画を確保している。岡庭容疑者宅から境町の現場までの距離は約30キロ。また、被害者宅は道路からちょっと見ただけではわからない、林の中に位置している。被害者一家との面識がないとされ、運転免許証も持ってない岡庭容疑者が偶然通りがかり、撮影するような映像とは思えない。つまり件の映像は、岡庭容疑者が被害者宅を「下見」した可能性を示しているわけだ。

茨城県一家殺傷事件 岡庭容疑者は30Km以上離れている被害者宅をいかにして走破したのか 実際に走行してみた結果

次に、Wi-Fiの接続履歴だ。スマートフォンは一般的に、常に周辺から飛んでいるWi-Fiの電波を拾っている。たとえIDとパスワードを入力して接続しなくとも、スマホに内蔵されたGPSなどの位置情報の精度を上げるために、移動中にも周囲のWi-Fi電波を拾い続けているのだ。

この履歴を辿れば、持ち主がいつ、どのような経路で移動し、どのエリアにどれだけの時間滞在したかがわかるわけだ。この情報から、岡庭容疑者が事件当夜に現場周辺にいたことは確実と見られているのだ。

ただ、これらはいずれも状況証拠に過ぎない。岡庭容疑者が事件前に現場周辺を撮影したことがいかに疑わしくとも、「偶然」の可能性が排除されるわけではない。

「動機」を説明できない

また、Wi-Fiの接続履歴からわかるのは、概ねの移動経路と滞在エリアだけだ。境町での殺傷事件は被害者宅の中で発生している。Wi-Fiの接続履歴だけで、岡庭容疑者が被害者宅の内部にいたことを証明することは不可能と思われる。岡庭容疑者が被害者宅の室内に侵入したことを示す証拠がなければ、事件当夜に「偶然通りがかっただけ」である可能性は否定しきれないわけだ。

犯人が被害者宅の内部に侵入したことを証明するために有力な手掛かりになるのが、室内で採取された指紋や毛髪などだ。

しかし、今回の事件では、これらの証拠が発見されていない。岡庭容疑者が、自宅に硫黄45キログラムを所持したとして埼玉県警により三郷市火災予防条例違反の容疑で逮捕されたのは、2020年11月である。指紋や毛髪が採取されていたならば、境町での殺傷事件でもとっくの昔に逮捕・起訴されていたはずだ。

犯行は室内で行われたのに、岡庭容疑者が被害者宅の内部に侵入したことを証明する証拠がない――これが、岡庭容疑者が犯人であると説明する上で欠けている、第1の重要な要素だ。

このような状況にもかかわらず、県警はなぜ、逮捕に踏み切ることができたのか。週刊新潮の報道によれば、現場に残された「足跡」が捜査を進展させたという。事件当夜、被害者宅1階の脱衣所の窓は施錠されておらず、犯人はそこから侵入した可能性が高いと見られている。新潮によると、この窓のある外壁に、犯人がよじ登った際についたと思しき足跡が残されていた。そして、岡庭容疑者が事件前に購入していたとされるレインブーツと、現場の足跡、いわゆる「下足痕」が一致したのだという。

これでもまだ岡庭容疑者が被害者宅の内部に入り込んだ証明にはならないが、他人の家の外壁に足跡を残すというのは常識では考えられない行動であり、彼が犯人に違いないとの心証は限りなく高まる。

それでもまだ、犯行が岡庭容疑者によるものであることを合理的に説明するには、もうひとつの重要な要素が必要になる。動機だ。

過去にも、殺人事件の容疑者が状況証拠だけで逮捕・起訴され、有罪になった例はいくつもある。それらのケースで検察官は、被告の自供がない中でも、犯行の動機について説得力ある推理を語った。怨恨がらみによる事件ならば関係者の客観的証言が、保険金殺人であれば事件前後の被告の行動が、強い手がかりになったためだ。

一方、岡庭容疑者の場合はどうだろうか。10年前、見ず知らずの少女たちを襲った動機は、彼の「心の中の闇」にあった。その闇の中では常識とはかけ離れた思考により、暴力的な衝動が芽生えているのだ。岡庭容疑者がいつ、どのようにして小林さん一家に殺意を抱き、犯行を決意したかを、他人が推理するのに必要な客観的な根拠――これこそが、岡庭容疑者が犯人であることを説明する第2の重要な要素だ。そんなものが存在するとすれば、岡庭容疑者の頭の中だけだろう。

しかし現在、岡庭容疑者は犯行を否認しているとされる。捜査当局は彼の自供を取れないまま、有罪に持ち込むことができるのだろうか。(取材・文◎編集部)

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