感染症拡大の傾向を見る数理モデルでは、人口動態や移動率、過去のインフルエンザ発生率などのデータが用いられる。ただ、現実的には感染が拡がるかどうかに、信念に基づいた大衆の行動パターンが関わっていると考えられる。

このほどスタンフォード大学の研究者は、マスク着用やワクチンに対する嫌悪感など、文化的行動を数理モデルに織り込んだ。

この数理モデルでは、人々の間に伝わる健康関連の考え方や行動が公衆衛生にどのように影響するかを明らかにする。

SIRモデルを採用

疾患を悪化させる可能性がある民間療法や文化的習慣が一部のコミュニティで広がる現象に目を付けた研究者は、病気の伝染と感情の伝染の関連を調べようと考えた。

研究には、大衆を感受性保持者、感染者、免疫保持者の3区画に分割して分析するSIRモデルを採用。行動ダイナミクスと感染ダイナミクスが別次元で扱えるこのモデルは、それぞれの関連を理解するのに有効だという。

現実世界では、ワクチンに対して嫌悪感を持つ人が心変わりすることもありうるが、研究者によるモデルではこうした複雑な分類はせず、嫌悪感を持つ人と持たない人、どちらでもない人…とシンプルに区画わけしている。

ワクチン接種に対する感情の影響を可視化

目標は、正確な予測を行うことではなく、あくまで現象が互いにどう影響するかを理解することにあるようだ。

この研究は、大衆の大多数はすでにワクチンの接種を受けているはしかのような病気を念頭に置いて設計されたもの。モデルでは、ワクチンへの嫌悪感が感染拡大にどう加担するかを示している。

ワクチンが開発されて以降の新型コロナにも適合可能とのことで、リスクコミュニケーションにも役立てられる可能性があるだろう。
参照元:Models explore how disease dynamics change when cultural behaviors harmful to health spread like a pathogen/ Stanford News