POSシステムとマネージメント機能を統合した、個人経営者向けプラットフォームが数多く登場している近年。米国ニューヨークに本社を構えるCentsは、コインランドリー向けの経営管理オールインワンプラットフォームを提供している。
コインランドリー経営者は注文、販売、支払いを管理できるほか、機械の稼働状況の確認や、売上の比較など、あらゆる業務を1つのプラットフォームで進めることが可能だ。
海外のコインランドリー事情
Image Credits : Cents
まず前提として、海外のコインランドリーは基本的に有人店舗である点を説明しなければならない。これは、治安の問題が多分にあるだろう。衣類も盗難の可能性がある以上、それを防止するためにどうしても店員を置かなければならない。街角に自動販売機があり、農作物を並べる無人販売所というものが存在する日本は、やはり極めて治安の安定した国だと言える。
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また、海外のコインランドリーは集荷サービスを行っている場合も少なくない。だが、店内の洗濯機の稼働状況を考慮しながら集荷を行う……というのは非常に煩雑な仕事。そのあたりにかかる管理を一括統合すれば、業務の大幅負担減につながるはずだ。
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そこでCentsはPOS、マシン内支払い、収益追跡、POS、配送サービスなどを実行できるランドリー事業向けのプラットフォームを展開。従来の洗濯機にカードリーダーを増設し、そこからクレジットカードやデビットカードで決済・稼働できる機能のほか、それらの稼働をダッシュボードで中央管理できる機能、顧客のリピート率分析、洗濯機のリモート操作もCentsの提供するCents OSで実施できる。
注文管理から従業員のマネジメントまで
集荷サービスはGopuff、DoorDash、Uberなどとも連携し、集荷・配送状況を常時モニタリングする機能を備えている。Centsのオンライン注文ページをGoogleと統合しているため、ウェブサイトやアプリだけでなく、Google経由で集荷の注文予約を受け取ることが可能。また、Google検索・マップで顧客と直接つながれるのもメリットだ。
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こうした情報を含めて売上を算出し、純利益や従業員の給与の計算をするまでがCentsの役割である。複数店舗を抱えている経営者の場合、各店舗の売り上げや稼働状況をCentsで一元管理できるというメリットもある。また、それまでは「コインランドリー」の文字通り現金決済が主流だった業界であったが、Centsの登場によりこの分野でもクレカ決済が基本形として定着しつつあるようだ。
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なお、上述の「洗濯機に設置するカードリーダー」だが、これはメーカー・年式・タイプを問わず簡単に後付できるとしている。それがどのような場合でも主張通りなのかはわかりかねるが、少なくともCents OSを導入するために専用の洗濯機を購入する必要はないそうだ。シリーズBラウンドで4,000万ドル調達
そんなCentsは、今年8月に大金星を挙げた。Camber Creekが主導するシリーズB投資ラウンドで4,000万ドルの資金調達に成功したのだ。
投資家の顔触れを見てみよう。Bessemer Venture PartnersとTiger GlobalはCentsにとっての以前からの投資家だが、それ以外にはTech Pioneer Fund、RXR、Derive Ventures、Alumni Venturesなどが参加している(参照)。
今のところ、Centsは2,700以上の小売ランドリーと3,500以上の共同ランドリールームで導入されているという。これはアメリカ全体のコインランドリーの14分の1に相当する数である。キャッシュレス対応が遅れてきた分野において、それも含めて一気に近代化してくれるプラットフォームの登場は、世界の投資家も大いに注目しているようだ。
参考・引用元:Cents
(文・澤田 真一)