『Spiegel』の報道によると、以前から暴力行為を繰り返し周囲を騒がせていた男は、2000年頃から統合失調症と診断され、マルセイユの病院に勤務する精神科医のもとで診察を受けていた。だが2004年に男は診察中に突然病院を抜け出し、その20日後に自分の祖母のパートナーである80歳の男性を斧で殺害するという事件を引き起こした。事件発生後男は逮捕されたが、その後行われた裁判で彼には刑事責任能力がなかったという判決が下されている。
殺害された男性の遺族はその後、男がこうした事件を引き起こす可能性を見抜くことが出来なかったのは、担当していた精神科医のいい加減な診察が原因であるという理由で、この精神科医と彼女が勤務する病院、そして男の診察に関与した人々を訴えており、治療過程におけるミスの有無が調査されていた。
その結果、彼女の同僚である精神科医9人が男は統合失調症であると判断していたにもかかわらず、彼女は1人「彼は病気ではない」と強く主張しており、そのため男に対する適切な治療が行われていなかったこと、また男は本来なら長期の入院が必要な状態であったが、2003年末には既に退院を許可していたことなど、その治療が非常にずさんであったことが明らかとなっている。