二宮和也としてデビューする前に、初めて出演したドラマが『天城越え』だった。彼はのちに、これまでで一番辛かった仕事にその名を挙げたほど過酷な撮影だったらしい。
バラエティ番組『VS嵐』で今ではハリウッド俳優となった二宮が、その当時共演した俳優から元気づけられた思い出を語った。

1998年1月1日に放送された『元旦特別企画・松本清張原作「天城越え」』に、主人公の少年・西浦多吉役として抜擢されたのはジャニーズ事務所の二宮和也だった。ヒロインの大塚ハナを演じたのは女優の田中美佐子だ。そして菓子売りの役で出演したのが『3年B組金八先生』でデビューして、のちに『ふぞろいの林檎たち』で一躍人気者となった柳沢慎吾である。

5月16日の『VS嵐』に、その柳沢慎吾が“チームAB型”として参戦した。彼が対戦相手“チーム嵐”の二宮和也に「ニノ、久しぶり」と馴れ馴れしくあいさつしたのは、そんな関係にあるからだ。
二宮もそのことを覚えており「先輩! どうもご無沙汰しております」と頭を下げる。

すると“チームAB型”の1人、タレントの土田晃之が「さっき、楽屋で柳沢さんが『ニノをここまで大きくさせたのは俺だ』みたいなことを言ってたよ」と明かしたので、さすがの二宮も目を丸くしていた。

しかし柳沢が「覚えてる?」と『天城越え』の現場で二宮にかけた言葉について尋ねると、うっすらと思い出したようだ。「バスに乗っている時に『このままやっていけば、お前は売れるから大丈夫だ!』って言われたのをかすかに覚えてるんですけど」と二宮は答えたのである。

柳沢は当時、田中美佐子と一緒に「がんばれニノ!」、「がんばれ、いつか来るから!」、「大丈夫だよ、1~2年見てろ」など励ましの言葉をかけて元気づけたという。ところがその通りとなり、翌年のある日柳沢がテレビをつけると“You are my SOUL! SOUL!”と嵐としてデビューした二宮が歌っていたのだ。
「ビールで『ニノおめでとう!』って画面に乾杯したよ」と彼は嬉しそうに話した。

その後は数々のドラマや映画で主演し、クリント・イーストウッド監督の映画『硫黄島からの手紙』でハリウッドデビューも果たした二宮和也だが、実はドラマ『天城越え』では本当にまいっていたらしいのだ。

二宮は昨年出演したラジオ番組で「一番辛かった仕事は?」とのリスナーの質問に、「天城越えは辛かった!」と答えている。初のドラマ出演で慣れないうえに時間に追われ、寒い中で薄い浴衣を着て凍えながら撮ったという。冬なのに設定は夏ということで息が白くなるからと氷をなめながら行ったそうだ。

二宮はそのことを「こんなに辛いものかと思ったね。
あれはきつかった…」と繰り返し語っており、10代のその体験を今でも身にしみて覚えているのだ。それを思えば、田中美佐子や柳沢慎吾がかけてくれた言葉はずいぶんと励みになったことだろう。「ニノをここまで大きくさせたのは俺だ」と自慢する柳沢の言葉も、的外れとは言えないのである。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉