胸筋や手指が生まれつき欠損している「ポーランド症候群」という疾患をご存じであろうか。この症状と闘いながら俳優として舞台に上がるイギリスの青年の話題を『dailymail.co.uk』が伝え、人々の大きな関心を集めている。


こんな先天性の疾患があることを世の中に理解してもらいたい、同じ疾患に悩む人々の心の支えになりたいとして、あえて自身の手指をメディアのカメラの前にさらすこの男性は、英ヨークシャー東部ビバリー出身のリチャード・ストットさん(28)。少年時代はサッカーなど体育の授業にも積極的で、マンチェスターの「Arden School of Theatre」に進学。いくつものオーディションで挫折を味わい、舞台製作など裏方の仕事を続けた後、ついに俳優として舞台に上がる喜びを知ったところだという。

胸筋や手指が欠損して誕生し、胸郭の変形や手指の形成不全に悩まされる「ポーランド症候群」と診断され、長いこと左手は役に立たないものであったというリチャードさん。15回ほど手術を繰り返し、11歳の時に自身の両足の第2足指を切断して手に接ぎ足す手術を受け、やっと満足感を得られる状態に至った。脳の命令を受けて左手の指はそれなりに動き、物をつかんで持ち上げることも可能。
しかも接合部の傷跡や色合いの違和感はまったくない。彼の奇形を伴ったその手指に気づかない人はとても多いとして、リチャードさんはこう語っている。

「何かを持ち上げてその手や指にスポットライトが当たるようなシーンがある役は、さすがにオーディションの段階で落とされました。でもそれさえなければ僕の手指に注目する人はまずいません。むしろ僕はこの外見を利用する時もあります。ニッチな役で“リチャード3世”や“美女と野獣”に出演させてもらえましたからね。」

なかなかのイケメンであるリチャードさんには、ケンブリッジ大学の幹細胞学研究者であるロリアナさんという29歳のガールフレンドがおり、彼の稀な疾患をよく理解してくれる上、交際はもう5年にもなる。
現在は彼女とケンブリッジに暮らしているが、18歳の時に「ナショナル・シアター」で受けた深い感銘が忘れられないといい、「いずれはロンドンの大きな劇場の舞台に立ちたい」という夢を抱いている。「セリフが2~3しか与えられなくても、それでも嬉しい」とリチャードさん。彼のポジティブな生き方に共感してくれるプロデューサーや監督と是非とも出会って欲しいものである。

出典:http://metro.co.uk
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)