最近では、11歳にして体重190kgを記録したインドネシアに暮らす世界一の肥満児が胃切除手術を受けることを伝えていた『Barcroft TV』。ここには難病、奇病に苦しむわが子について悩む家族が世界から集まり、「皆さんの温かい理解を」と実名で訴えることが多い。
このたびの話題は「CLOVES症候群」。世界でたった200名しか患者が確認されていないそうだ。

右側の頬から下がふっくらとし、見るからに左右のバランスが悪い頭部。しかし愛くるしい笑顔を見せながら友達との遊びに興じているこの少年(写真・右端)は、まだたった3歳のヴィクター・パディーラ(Victor Padilla)君。米ニューヨーク州のロチェスター市で父ジェリーさん、母ジェニーさんの大きな愛情を受け、15歳および5歳の2人の姉とともに楽しく暮らしている。てんかん発作を起こすことがあるもののプリスクールではとても活発で、誰からも好かれているという。


生まれてほどなく顔面の左右のバランスが崩れていることを指摘され、ゴリサーノ・チルドレンズ病院の小児神経科で検査を受けたところ、クォン博士医師から「CLOVES(Congenital, Lipomatous, Overgrowth, Vascular Malformations, Epidermal Nevi and Spinal/Skeletal Anomalies and/or Scoliosis)症候群」という耳慣れない病名を告げられたヴィクター君。これは混在性の血管奇形により体に大きな腫瘍が生じる先天性の難病で、血管、皮膚組織、脊椎に異常が起こり、脳組織の一部に腫瘍が生じればてんかんを引き起こす。原因や治療法はつかめておらず患者は定期的な診察を受けるが、唯一の対症療法として外観的改善を目的とした腫瘍の切除手術に期待するのみだという。

この奇病と認定された患者は世界でたった200名だが、「診察を受けないだけで、実はもっと多くの患者さんが存在するのではないかと思っています」とジェニーさん。早い段階で事実を知り、それを受け入れ、わが子の体を優れた医師と最新の医療技術に任せることが何より大切だと断言する。いわゆる患者会で手術費の支援もしてくれる『CLOVES Syndrome Community』、病気の研究に必要な資金援助にあたる『CLOVES Syndrome Foundation』の2つの支援組織が夫妻にとって心の拠りどころであり、将来はヴィクター君にも腫瘍切除手術を受けさせたいと考えているそうだ。


しかし顔面は左右に表情筋を持ち、血管や神経が複雑に絡み合っているデリケートな領域である。手術を受けさせるには不安も多いとみえ、「もしも顔の手術を受けるとしたら、私の知る範囲ではヴィクターが最初の患者となります」とジェリーさんは緊張を募らせる。それでもヴィクター君を支える一家のチームワークは素晴らしく、「息子は奇跡の子。きっと良好な結果が得られると信じています」と力強く語った。

プリスクールでのヴィクター君は、担任のアイリーン・ヘンウッド先生によれば「特に5歳のお姉ちゃんが憧れの存在なのか、ヴィクターはいつも彼女の真似をしたがります。カード遊び、歌などが大好きで、私にとってはほかの子と何ら変わりはありませんし、誰もがヴィクターと仲良く遊んでいます」とのこと。
外見上の異変を来す奇病の多くは幼い頃に発症することが多いが、特別扱いすることも奇異の目を向けることもなく、周囲がきわめて自然に接してくれるその状況はヴィクター君と家族にとって何よりの励み、生きる勇気となっているに違いない。

ヘビを想像させるほど重い紅皮症と闘うインドの少女、顔のあちこちから植物の根っこが生えたようになってしまう「ツリーマン病」に悩まされているバングラデシュの少女、そして進行性脂肪腫性巨大症という耳慣れない病名と診断され、グローブよりも大きな手を持て余しているタイの女性。奇病、難病に苦しむ人々の心を誰もが理解し、温かい手を差し伸べる。そんな世の中になることを願わずにはいられない。

画像は『Barcroft TV 「Cloves Syndrome: Three-Year-Old Boy Grows Faster On One Side Of His Body」(Mike Bradley / Barcroft Images)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)