目に見えない障がいを抱える人は周囲の理解を得ることが困難であることが多く、日々葛藤している。このほど英ロンドンに暮らす女性が事前に介助リクエストを入れて航空券の予約をしたにもかかわらず、空港でひとりの女性スタッフに酷い仕打ちを受けた。
『BBC News』『The Independent』など複数の英メディアが伝えている。

ロンドン東部に住むナタリー・オールポート=グランサムさん(23歳)は、フランス人の恋人と一緒に彼の家族を訪れるためロンドン・スタンステッド空港からニース行きの12月31日の便を11月5日に予約した。

ナタリーさんは、慢性的な痛みがあり関節が脱臼しやすいため行動が制限される遺伝性疾患「エーラス・ダンロス症候群」と、立位へ体を動かした際に心拍数が上昇し失神や激しい眩暈を生じる「体位性頻脈症候群(Postural orthostatic tachycardia syndrome、POTS)」、先天異常による結合組織病の「マルファン症候群」を抱えている。見た目には非常にわかりにくいこれらの遺伝性疾患を持つ彼女は普段、公共交通機関を利用する時には障がい者カードを携帯し、遠くまで歩くことが困難なため車椅子を使用している。そこで今回もアイルランドの格安航空会社「ライアンエアー」の航空券予約時に、スタッフの介助が必要であることを添えた。

介助の事前予約時には「自身の車椅子を持ってくる必要はない。
空港で貸し出す」との記載があったため、ナタリーさんは「ゲートまで車椅子を貸してほしい」ということと「手荷物を機内へ持ち運んでほしい」という点をリクエストした。

そして搭乗日当日の朝、ロンドン・スタンステッド空港に恋人と到着したナタリーさんは空港スタッフから車椅子を貸し出してもらった。恋人に車椅子を押してもらいゲート近くのラウンジまで行ったナタリーさんは、そこで車椅子からソファに移動した。その時、男性スタッフは車椅子を再び持ってくると言い、その場から持ち去ってしまった。しかし搭乗時になっても車椅子が戻って来なかったため、ナタリーさんはゲートまで5分以上の距離を歩かなければならなかった。

チェックイン時にはカウンタースタッフから「ゲートではリフトが利用不可なので、階段を上る時にはスタッフが介助する。
手荷物も機内まで運ぶ」と言われたため、ナタリーさんはゲートにいる空港スタッフに改めて事前予約していたリクエスト2件を伝えた。ところがその女性スタッフは、このように言い放ったのだ。

「私は歩行できない障がい者介助のためにここにいるのであって、あなたのためにいるのではありません。搭乗したければ他の乗客同様に並ぶべき。手荷物を持ってほしいなら50ポンド(約7,500円)支払う必要があります。私は障がい者の介助をしなければならないので、あなたに関わっている暇はありません。」

ナタリーさんの搭乗券は、「要介助」の特別なものであった。
女性スタッフは、事前予約済の介助を必要とする搭乗客リストを確認することができたにもかかわらず、ナタリーさんの名前を尋ねるどころか、ゲートで待っている他の乗客全員に聞こえるような大きな声で介助のリクエストを拒否した。

ナタリーさんは「物を持ち上げると関節が外れ、筋肉から内臓まで損傷する危険があるので、自力で荷物を持ち上げることができないから介助を頼んだのに」と伝えると、女性スタッフは「それなら今度から重い荷物を機内に持ち込もうとしないことね」と驚くべき発言をした。

搭乗待ちの乗客らがこのやり取りを凝視しており、ナタリーさんは侮辱された気持ちになり号泣した。すると男性スタッフがやってきて事情を尋ねると、女性スタッフは「この乗客は、私の時間を無駄にしている」と不満をぶつけた。男性スタッフはナタリーさんの名前をリスト上で確認すると、車椅子を貸し出してくれたそうだ。女性スタッフは最後まで自分の非礼をナタリーさんに謝罪することはなかったという。


結果として介助を得られて搭乗したナタリーさんだったが、不快感はおさまらずツイッターでロンドン・スタンステッド空港とライアンエアーに苦情を綴った。同空港からは「スタッフの対応には失望した。詳細を調査する」としてナタリーさんに謝罪、しかしライアンエアーからの返信はなかった。

空港での特別な介助を必要とする場合、予約時に乗客が航空会社に直接その旨を知らせるが、実際の介助にあたるのは空港スタッフであり、スタンステッド空港は「Omniserv(オムニサーヴ)」という会社に業務を委託していた。この件を受けて『The Independent』がライアンエアーに取材したところ、「不都合があったことは非常に残念だが、ロンドン・スタンステッド空港での車椅子サービスは空港の管理・責任となる」という返事が返ってきたという。

このたびの件について、ナタリーさんはこのように話している。


「周りからは本当に障がい者なのかと疑われることが多々あります。過去には『そんな風に見えないほど可愛い』と言われたこともありましたが、障がい者に対して偏見を持ち過ぎます。多くの人が『障がい者はこうあるべきだ』というイメージを持っていて、それにあてはまらないものを嘘つき呼ばわりするのです。今回の女性スタッフの態度は、私が嘘をついていると確信していて、態度や言い方もそれはもう酷いものでした。私だって自分のバッグは自分で持ちたいし、搭乗だって誰の介助も借りずにしたい。でも見た目だけで障がい者ではないと判断されるのはとても悲しいことです。
今回のことは初めてではないし、きっと最後でもないでしょう。だからこそ私は今回の件を大きく取り上げてもらいたいのです。空港や航空会社などの大きな会社なら、法律に従う義務とスタッフを教育する責任があるはずです。」

このニュースを知った人からは「これは酷い」「事前予約してあるんだから、きちんと確認するのが当然でしょう」「どうやったらそんな酷い言葉を投げかけれるのか。こんな空港スタッフは信じられない」「どうして障がいを見た目で判断する人が多いんだろう」「スタッフはきちんとしたトレーニングを受けるべき」といった声があがっている。

画像は『BBC News 2018年1月4日付「Stansted Airport staff told me I ‘don’t look ill enough’ to be disabled」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)