動物と会話ができたら…ペットを飼っている人ならば、そう思ったことがあるのではないだろうか。このほどフランスから“海の殺し屋”の異名を持つシャチが人間の言葉を話すという話題が届いた。
シャチやイルカは比較的知能が高いと言われるが、想像以上に高度な学習能力を備えているのかもしれない。『Metro』『CNN』などが伝えている。

フランス南部アンティーブにあるマリンランド水族館のシャチ「ウィキー(Wikie)」が、見事な発音で言葉を話す様子を捉えた動画が話題になっている。これは先月31日に生物学誌『Proceedings of the Royal Society B』が発表したもので、シャチが人の言葉を真似て話すのはこれが初めてのことだという。

ウィキーは雌のシャチで現在16歳になるが、実験が行われたのは2年前のことになる。これまでにも様々な訓練や実験に参加しており、トレーナーの行動を模倣できることからその被験対象となった。
ウィキーは慣れ親しんだトレーナーのエイミーさん(Amy)が発する言葉を真似したのだ。

ウィキーが発した言葉は「ハロー」「エイミー」「ワン、トゥー」「バイバイ」などである。まるで乳幼児が母親の言葉を真似ているかのような発音だ。その他にもエイミーさんがブーイングする時のような音を発すると、ウィキーも同じように「ブルルルルルーッ」と真似して見せた。

『CNN』によるとウィキーは覚えるのが比較的早く、10回教えることで言葉を真似ることが出来、1回教えただけで習得できた言葉が3語あったという。また論文に関わったセント・アンドルーズ大学のジョセップ・コール博士(Josep Call)はこのように話している。


「耳から入ってきた音を模倣するのは、哺乳類では稀なことです。もちろん人間には容易いことですが、面白いことに哺乳類の中で模倣が一番上手なのが海洋哺乳類なのです。」

なお研究者らは、ウィキーが言葉の意味を理解しているとは考えてはいない。しかし人間とシャチがコミュニケーションできる日が来るのではないかという希望を捨てていないようだ。同じく論文に関わったマドリード・コンプルテンセ大学のホセ・ゼット・アブラムソン博士(Jose Z. Abramson)は、次のように述べている。

「ウィキーはいつか人間と会話ができるようになるかもしれません。過去にはアフリカ原産のヨウムやイルカによるアメリカ手話を使った会話の実験が行われています。
例をあげると‟これを持ってきて”、‟これをこの場所に置いてちょうだい”といった会話です。」

「しかし、人間の概念を動物に課すことは注意が必要です。人間の言語を教えるより、同じ種のもの同士が普段どのようにコミュニケーションをとっているのかを解析するほうが私達は多くのことを学べるでしょう。」

野生のシャチはグループで行動し、グループだけに通用する鳴き声を使ってコミュニケーションを図り、それを次世代に引き継ぐそうだ。今回の被験対象は水族館で暮らすシャチのウィキーだったが、飼育されているか野生であるかにかかわらず、シャチはイルカの呼びかけやオットセイの吠える声を真似るという行動が観察されている。



画像は『Metro 2018年1月31日付「Wikie the killer whale speaks by saying hello, bye bye and blowing raspberries」(Picture: Reuters)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)