未だに収束の気配が見えない新型コロナウイルス(2019-nCoV)だが、誤った情報が広まり人々が混乱する事態も発生している。このほど中国で、地元メディアがペットについて事実とは異なる情報を伝えたことにより、高層マンションの上階から飼い主がペットを投げ捨てるという事件が起こった。
『news.com.au』『The Sun』などが伝えている。

中国・天津市内の高層マンション敷地内駐車場で、1頭の死んだ犬が発見された。近隣住民によると朝4時頃にタイヤがパンクするような大きな音がしたというが、この犬はマンションの住民によって上階から投げ捨てられ、地上に停めてあった車のサンルーフに激突し地面に落ちたものと見られている。車のサンルーフは激しく破損しており、犬はかなりの強い衝撃を受けたことを物語っていた。

また上海市内のマンション敷地内では、誰かに飼われていただろうと思われる毛並みをした猫が5匹、地面で流血したまま絶命していた。この猫達もマンション上階から投げ捨てられたようだ。
この数日間でペットに対するおぞましい行為が相次いでいるのは、次のような理由があった。

先月末頃、中国のリ・ランジュアン博士(李兰娟)が『中国中央電視台(China Central Television)』のインタビューにて「もしペットが新型コロナウイルスの感染者と思われる人間と接触した場合、隔離するべきだろう」と話していたが、これを別の地元メディアは「猫と犬が新型コロナウイルスの感染を拡大させる可能性がある」と事実と異なる表現で報じてしまったのだ。

さらに同メディアはこの誤った情報を中国のSNS「ウェイボー(微博)」に投稿したところ、瞬く間に拡散された。そのため飼い主達が混乱し、マンションの窓から犬や猫を投げ捨てたのではないかと見られている。また一部のマンションではウイルスの感染拡大を懸念し、ペットを飼うことを禁止したうえで飼い主に処分を促す張り紙などを掲示したという。

その後、この誤った情報の拡散に終止符を打とうとした『中国グローバル・テレビジョン・ネットワーク(中国環球電視網:CGTN)』が、WHO(世界保健機関)が発表した内容を引用しウェイボーに投稿。
こう述べている。

「WHOは最近の新型ウイルスについて『猫や犬などのペットが新型コロナウイルスに感染するという証拠はありません』と発表しています。また人間と動物を介してウイルスを運ぶようなことがないように、しっかりと石鹸などで手洗いをするようにと勧めています。」

ちなみに『news.com.au』や『The Sun』などでは、虚偽の情報を拡散したメディアを「Zhibo China」と伝えており、ウェイボーでも現在、『中国网直播(Zhibo China)』が誤った情報を流したとして謝罪を求める声があがっている。

また今回起きた問題について、「PETA Asia(動物の倫理的扱いを求める人々の会 アジア支部)」の広報担当であるキース・グォ氏(Keith Guo)は「警察ができるだけ早めに動物をこのような目に遭わせた、残酷な飼い主を見つけるよう願っています」と語り、メディアのインタビューを通じて次のように訴えた。

「実際、私たち人間の健康を脅かすのは不衛生な状態にしている工場や農園、食肉処理場、生肉市場なのです。それは新型コロナウイルス、SARS、鳥インフルエンザなどの致命的な病気を引き起こすウイルスの温床となっているのです。」

グォ氏が指摘するように、今回の新型ウイルスの感染源は野生動物を生きたまま販売していた中国武漢市の海鮮市場が疑われている。


画像は『news.com.au 2020年2月1日付「Dogs and cats thrown from apartments in China over virus spread fears」(Picture: AsiaWire/Australscope)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)