通常はアザラシを中心に狩りを行って生活するホッキョクグマだが、海を泳いで移動中のトナカイに目をつけて襲う姿が注目を集めている。ゆっくりと後ろから近づいたホッキョクグマはトナカイを沈めて溺死させると、岸に引き上げてご馳走にありついた。
この珍しい光景について、専門家は「近年、気候変動の影響でトナカイを襲うホッキョクグマが増えている」と明かした。『Euronews』などが伝えている。

研究者たちを驚かせたホッキョクグマの狩りが目撃されたのは、ノルウェー北部スヴァールバル諸島周辺でのこと。ここにあるポーランドの研究基地で活動していた調査チームメンバーであるマテウシュ・グルシュカさん(Mateusz Gruszka)が昨年8月21日に捉えた映像が、多くのメディアに取り上げられて話題を呼んでいる。

映像には小さな氷塊が浮かぶ海に、立派な角を生やしたトナカイが泳いでいる。トナカイの生息地にはエサとなる飼料の質があまり良くないので、より良いものを求めて移動するが、その際に海や川を渡る必要があるため大きな蹄で上手く泳ぐことができる。

目撃されたトナカイも移動のために泳いでいたが、その後ろには雌のホッキョクグマが追いかけるようにして泳いでいたのだ。スピードはホッキョクグマの方が速く、あっという間にトナカイに追いつくと、ホッキョクグマはのしかかるようにしてトナカイを海の中へ沈めてしまった。

映像は距離があるためハッキリとは確認しにくいが、トナカイの頭や背中部分は沈んで見えなくなってしまい、水面には大きな角の一部だけが残っている。その後、ホッキョクグマは溺死したトナカイを引きずりながら岸に上がり、1頭で大きなトナカイを食べていた。

通常のホッキョクグマはアザラシを狙って狩りを行い、陸地と流氷の上を行き来して生活している。ところが気候変動の影響で氷が解けてしまい陸地で過ごす時間が多くなってきているため、アザラシに代わる獲物を見つける必要が出てきた。


さらに近年、スヴァールバル諸島におけるアザラシの生息数が減少している代わりに、狩猟が禁止されたことからトナカイの数が増えているという。こうした理由からホッキョクグマの次のターゲットとなったのがトナカイだった。

これを裏づけるように、ホッキョクグマがトナカイを襲う光景はたびたび目撃されていた。しかしその一部始終を映像に収めることができたのは今回が初めてのことだった。

この映像を見た人々からは「これは圧巻」「大きなトナカイを引きずって移動するホッキョクグマには少し恐怖を感じる」「トナカイはどこにいても危険になってしまうね」「ホッキョクグマだって生き残るために頑張っているんだよ」など様々なコメントが寄せられた。

なおスヴァールバル諸島では現在、約300頭のホッキョクグマと約2万頭のトナカイが生息している。また陸地での時間が増えたホッキョクグマとの遭遇率が上昇しており、ホッキョクグマの危険性を示す看板が各地に設置されるなどの対処が取られているという。



画像は『The Independent 2021年11月30日付「Polar bear captured on video drowning reindeer as climate crisis intensifies struggle for food」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)
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