線状降水帯による大雨の危機感を少しでも早く伝えるため、「顕著な大雨に関する気象情報」は新たな運用になっています。今年の梅雨も大雨に警戒、注意が必要です。
平成29年(2017年)7月 九州北部地方の「線状降水帯」による大雨
平成29年(2017年)7月5日、梅雨前線が朝鮮半島付近からゆっくり南下し、6日昼過ぎにかけて九州北部付近に停滞しました。5日から6日は福岡県から大分県にかけて、線状降水帯が形成されて猛烈な雨が降り続きました。福岡県朝倉市では、1時間に129.5ミリの猛烈な雨を観測しました。5日から6日までの総降水量は多い所で500ミリを超え、7月の月降水量平年値を超える大雨になった所がありました。福岡県朝倉市や大分県日田市などで24時間降水量が観測史上1位の値を更新するなど、記録的な大雨になりました。
線状降水帯による大雨の予測は、場所、時間を正確に予報することは困難です。
平成29年7月の九州北部の大雨のとき、大雨直前の5日昼前に発表した気象情報でも、記録的な大雨を予測することはできなかったほどです。
線状降水帯による大雨の半日程度前からの呼びかけ
線状降水帯の発生は、現在の観測・予測技術では予測が非常に難しい現象ですが、大雨災害発生の危険度が急激に高まることがあります。
このため、気象庁は、心構えを一段と高めてもらうことを目的に、線状降水帯による大雨の半日程度前からの呼びかけを、令和4年6月から行っています。大雨が予想される際に発表される気象情報に、線状降水帯発生の可能性について、「○〇地方」といった表現で対象になる区分を記述して、言及しています。
「顕著な大雨に関する気象情報」新たな運用 予測技術の活用で早く伝える
従来は、大雨による災害発生の危険度が急激に高まっている中で、線状の降水帯により非常に激しい雨が同じ場所で実際に降り続くと、「顕著な大雨に関する気象情報」が発表されていました。
発表基準は、以下です。
1. 前3時間積算降水量(5kmメッシュ)が、100mm以上の分布域の面積が500k㎡以上
2. 1.の形状が線状(長軸・短軸比2.5以上)
3. 1.の領域内の前3時間積算降水量最大値が150mm以上
4.1.の領域内の土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)において土砂災害警戒情報の基準を超過(かつ大雨特別警報の土壌雨量指数基準値への到達割合8割以上)又は洪水キキクル(洪水警報の危険度分布)において警報基準を大きく超過した基準を超過
これまで発表基準を実況で満たした場合に発表されていた「顕著な大雨に関する気象情報」ですが、きのう25日13時から、発表基準を踏襲しつつ、「現在から30分先までに雨量や危険度の基準を満たす場合」に発表する運用になっています。これまでより、最大30分程度前倒しの発表で、線状降水帯による大雨の危機感を少しでも早く伝えます。
「顕著な大雨に関する気象情報」が発表された際は、これまでと同様に、大雨による災害発生の危険度が急激に高まっている状況になっていることを踏まえ、適切な防災対応をとることが重要です。
今年の梅雨は、前線の活動が活発になる時期がある見込みです。今年も梅雨の大雨に警戒、注意が必要です。
大雨の備え
大雨が予想される場合、災害による被害を少しでも小さくしたいものです。そのために、あらかじめ備えておいていただきたいことは、次の3つです。
① 避難場所や避難経路の確認をしておきましょう。いざ大雨による災害が発生すると、避難経路が通れなかったり、避難場所に行けなくなったりすることもあります。複数の避難場所や避難経路を確認しておくことが大切です。また、川や斜面の近くは通らないようにするなど、浸水や土砂災害の危険性が高い場所を避難経路に選ぶのは、避けてください。
② 非常用品の準備をしておきましょう。非常用の持ち出し品は、リュックなど両手が使えるものに入れて、すぐに持ち出せる所においてください。避難時に履く靴は、スニーカーなど、底が厚く、歩きやすい靴を用意するのが安全です。また、水道や電気など、ライフラインが止まった時に備えて、水や食料も用意してください。
③ 側溝などの掃除をして、水はけを良くしておきましょう。砂利や落ち葉、ゴミなどが詰まっていないかも、確認しておいてください。
いずれも、大雨になる前に、なるべく早い段階で備えるよう、心がけてください。