画像:三井化学株式会社

三井化学株式会社は大牟田工場において原材料の搬入等に使用している三井化学専用線(旧三池炭鉱専用鉄道)を2020年5月に廃止し、6月のラストランイベントを含む「ありがとう炭鉱電車プロジェクト」を開始します。

三井化学専用線とは

旧三池炭鉱専用鉄道の歴史は1878(明治11)年、三池炭鉱の大浦坑から石炭を搬出するために敷設された馬車鉄道から始まりました。1891(明治24)年には蒸気機関車の運転が開始され、1908(明治41)年の三池港開港にともなう石炭輸出の増大とともに翌1909(明治42)年から電化を開始、電車が走り始めました。

支線を含む総延長は約18.5kmにも及び、一時期は地方鉄道として旅客の輸送も担い、大牟田の風景として沿線住民から「炭鉱電車」の愛称で親しまれてきました。1997(平成9)年の三井三池炭鉱の閉山とともに多くの路線が廃止されましたが、一部の区間(1.8km)は三井化学専用線として運行を継続してきました。

現在三井化学専用線で使用している電気機関車は、1915(大正4)年三菱造船製を始め日本で稼働する最古級の車両です。これまでは三井化学が修理・メンテナンスを行い使用してきましたが、三井化学専用線の廃止とともに引退となります。なお、三池炭鉱専用鉄道跡は「明治日本の産業革命遺産」として2015(平成27)年に世界文化遺産に登録されています。

「ありがとう炭鉱電車プロジェクト」

三井化学は100年以上の長きにわたり活躍を続けてきた炭鉱電車への感謝と未来に向けたレガシーとしての活用を検討する「ありがとう炭鉱電車プロジェクト」を開始します。

まず、炭鉱電車の歴史を振り返りつつ現在も現役で稼働している様子を収め、「風景の資産」としてメモリアル映像を制作します。制作を担当するのは2019年公開の映画「いのちのスケッチ」などを制作した映画監督の瀬木直貴氏。完成した映像は大牟田市及び関係団体へ寄付・提供します。

炭鉱電車が発する「音」を記録として残すため、炭鉱電車にまつわる音をASMR音源としてアーカイブします。音源はだれでも聞くことが出来るだけでなく、サンプリング音源として無償で使用できるようコンテンツ化し公開します。また、炭鉱電車の音源を活用した楽曲の制作を大阪出身のアーティストであるSeiho氏が手掛けます。

上記メモリアル映像の完成披露試写会とあわせ、2020年6月を目途にラストランイベントを実施。車両の近くで写真撮影できる機会も用意するとのことで、内容・日時詳細は決まり次第三井化学WEBサイトで告知されます。

現役で活動している5台およびそれらに付随する電源車などの各車両や駅舎などの取り扱いは現時点では未定です。三井化学は、今後広く引き取りの希望などを聞き、協議の上決定していくとしています。

鉄道チャンネル編集部