2022年9月23日(金・祝)、武雄温泉~長崎駅間(66キロ)を結ぶ西九州新幹線の開業と同時に、新たな観光列車「ふたつ星4047」がデビューします。
2020年10月にデビューした「36ぷらす3」以来、およそ2年ぶりとなるJR九州のニューフェイス。
そもそも「ふたつ星4047」ってどんな列車?
「ふたつ星4047」は午前と午後で異なるルートを辿る観光列車です。午前便は佐賀県の武雄温泉駅を出発し、長崎本線経由で長崎駅へ。午後便は長崎駅から大村線・佐世保線経由で武雄温泉駅へと向かいます。
列車は3両編成で、1・3号車は普通車指定席となります。座席の種類は複数用意されており、3人以上で利用できる「BOX席」や向かい合った「カウンター席」(ソファ席)などを予め選ぶことができます。ご家族で楽しむなら「BOX席」、ご夫婦や友人とふたり旅を楽しむなら「カウンター席」がおすすめですね。
真ん中の車両「ラウンジ40(よんまる)」は一両丸ごと乗客の共用スペースとなっており、ゆっくりと過ごせるソファ席やカウンター席が用意されているほか、大きなカウンターテーブルを配置したビュッフェで沿線の美味しいものやオリジナル商品を販売します。
走行時間は午前便・午後便とも3時間弱で、午前便ではランチ時間帯にあわせてお弁当を提供(事前にWebサイト上で予約が必要)、一方の午後便ではスイーツを販売します。内陸部を走る西九州新幹線が武雄温泉~長崎駅間を20分台~30分ほどで走破しますので、時間をかけてゆっくり海を楽しみたい方は「ふたつ星4047」を、お急ぎの方は新幹線を利用すると良いでしょう。
また、午前は新幹線で長崎へ、午後は「ふたつ星4047」で大村湾に溶ける夕日を眺めながら……と二つを組み合わせて旅程を組める柔軟性も、この列車の良いところ。そうした使い方も想定し、新幹線と「ふたつ星4047」に1回ずつ乗車できる「かもめぐるりんきっぷ」のような期間限定商品も出ています。
午前便はきらきら光る有明海・穏やかな大村湾を「両取り」できる
午前便は武雄温泉駅出発後、しばらくは3号車を先頭にして走ります。江北駅(肥前山口駅から改称)到着後は向きを変え、今度は1号車を先頭に長崎本線を走ります。
多良駅を出発してしばらく経つと、車窓に有明海が映ります。きらきらとした水面の輝きと干潟の織り成す美しさは有明海ならでは。指定席を取るなら海側が良いでしょう。1号車でいえば、普通座席ならAB席が有明海側にあたります。BOX席やカウンター席は下の表をご覧ください。
逆側の座席を選ぶメリットもあります。
両方楽しみたい方は2両目のラウンジ車を活用しましょう。こちらは共用スペースですから、自分の座席からは見えない海が近づいてきたときはラウンジでくつろいでしまえば良いのです。また「ふたつ星4047」は全ての停車駅で乗降可能ですから、「有明海が見たいので肥前浜~諫早駅間だけきっぷを買う」とつまみ食いする手も。楽しみ方は多岐に渡ります。
「36ぷらす3」旧月曜日ルートとの違いは?
この「ふたつ星4047」午前便、実は2022年9月19日まで運行していた「36ぷらす3」の旧月曜日ルート”金の路”(博多~長崎間)と似ています。
西九州新幹線の開業にあわせて長崎本線の肥前山口~諫早駅間が上下分離方式へ移行し、肥前浜~長崎駅間が非電化化することから、唯一の「電車」D&S列車である「36ぷらす3」はルートを変更し、10月から佐世保行として運行することとなりました。気動車で運行する「ふたつ星4047」は、「36ぷらす3」の旧月曜日ルートを部分的に引き継ぐイメージです。
では両者の違いは? まず何を差し置いても挙げるべきは「運行日」でしょう。「36ぷらす3」は九州をぐるりと回る観光列車なので、長崎行は週に1度、月曜日に運行されていました。
そのほかの大きな違いとして挙げられるのが停車駅です。「ふたつ星4047」では停車駅を江北・肥前浜・多良・小長井・諫早と増やし、各沿線各自治体で停まっていくようにしたといいます。「36ぷらす3」は走行距離の長さもあり、旧月曜日ルートでは博多駅出発後、佐賀駅・肥前浜駅にしか途中停車しませんでした(その代わり肥前浜駅ではおもてなしの時間が約50分と長めに設定されていました。「ふたつ星4047」午前便では17分です)。
西九州新幹線の開業と同時に多くの観光客が佐賀・長崎を訪れることが予想されています。出発・到着駅はその新幹線と同じながら、何倍もの時間をかけて「楽しみ」に特化した「ふたつ星4047」……大村湾沿いが楽しめる午後便も面白そうですが、かつて「36ぷらす3」でも選ばれた有明海沿いのルートもまた魅力的なものでした。
記事:一橋正浩