ある日突然、原因不明の難病を患う可能性は誰にでもある。もしも、その難病と闘う患者が、全世界に自分1人しかいないとしたら、想像もできないほど深い不安と孤独感に襲われてしまうことだろう。しかし米国には、実際にこのような状況に置かれ、苦しみ続ける女性がいる。彼女は、なんと「全身の毛穴から爪が生える」症状を抱えているというのだ。詳細をお伝えしよう。
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■全身の毛穴から爪が......
その女性とは、テネシー州メンフィスに暮らすShanyna Isomさん(32)。突然の異変に襲われたのは、メンフィス大学法学部に在学中の2009年のことだった。ある日、彼女はひどい喘息の発作を起こし、救急治療を受けたという。その際に大量のステロイドを投与された直後、身体が強いアレルギーを発症、抑えきれないほどの痒みが続くようになってしまう。さらにその後、症状は治まるどころかみるみる悪化。全身の毛穴から爪が生えてくるという謎の症状まで現れた。
「まったく(症状は)制御不能で、何がどうなっているのか分かりませんでした。彼女の肌は、かさぶただらけのようになりました」
「(全身の毛穴から)爪がどんどん伸びて、触るとチクチクするのです」(母親)
やがてShanynaさんの全身は大やけどを負ったかのような風貌へと変化してしまった。さらに症状が悪化するにつれ、歩行には杖が必要となり、どんどん痩せ細るなど、骨や視力にも影響が見られるようになる。
骨髄穿刺を含む様々な検査を以ってしても、謎の症状の原因は一向に分からない。やがてメンフィスの病院は「もう治療の方法を見出すことはできない」と匙を投げてしまう。そして2011年、Shanynaさんの治療は、メリーランド州ボルチモアにあるジョンズ・ホプキンス病院が担当することになった。
■世界で発症者は1人!!
ジョンズ・ホプキンス病院の医師による綿密な検査の結果、Shanynaさんの毛穴に爪が生える理由は、彼女の毛根から通常の12倍もの皮膚細胞が生まれているためと判明。皮膚細胞の酸素やビタミンの不足が疑われたが、発症から5年が経過した今でも、正確な原因は分かっていない。
現在、この「世界でただひとつの症例」に対して医師たちができることは、頭部から生えてくる固く尖ったツメを何とか抑えることのみに留まっているようだ。
■医療費の地獄
しかし、Shanynaさんを襲った苦しみは、謎の症状だけではなかった。そう、高額な医療費だ。地元テネシー州の保険に加入済みでも、メリーランド州にあるジョンズ・ホプキンス病院での治療には適用されないため、彼女には月に25,000ドル(約290万円)もの医療費が重くのしかかっている。基金を設立して呼びかけた結果、著名人などから支援が寄せられることもあったが、積もり積もった医療費は100万ドル(約1.1億円)にも上り、到底すべてを支払い切れない。
また、月に一度メリーランド州へと向かわねばならないことも大きな負担となっている。さらに、Shanynaさんをつきっきりで看護する必要がある母親は、病院受付係の職を失ってしまい、一家の貯金は底をついてしまった。それでも親戚や友人は、彼女のためにできる限りのことをして、回復を願い続けている。
「泣いてよいのか笑ってよいのか分からない。とても私は恵まれていると思う」(Shanynaさん)
Shanynaさんと支援者の願いが届き、治療法が見つかる日が来ることを願ってやまない。また難病患者の支援は、アメリカのみならず日本も抱える重要な課題と言える。"民主主義"とは、「社会的弱者やマイノリティの尊重」を含意する言葉であることをもう一度噛みしめたい。
※画像は、YouTubeより
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