チンギス・ハンの直系の子孫は世界に1,600万人!? 史上最強のビッグダディ伝説(最新研究)
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 大相撲界でこれまで記録を塗り替えることが不可能といわれていた伝説の横綱・大鵬の優勝回数を超え、今も破竹の勢いで活躍を続ける平成の大横綱・白鵬――。朝青龍の時代から大相撲ファンに強烈なインパクトを与え続けているモンゴル人の驚異の身体能力と闘争心は、やはりユーラシアに大帝国を築いた稀代の猛将、チンギス・ハンから受け継がれたものなのだろうか。最新の研究で、今も世界で1,600万人がチンギス・ハンの直系の子孫であることが判明して話題を呼んでいる。

■アジアの11人の"偉大な父"

 英レイセスター大学のマーク・ジョブリング教授らの遺伝学研究チームが1月14日にオンライン版「Nature」で発表した論文では、アジア人男性のDNAを分析して先祖のルーツを辿った研究が報告されている。研究によれば、現在のアジア人男性の約4割が、チンギス・ハンを含む11人の"偉大な父"のいずれかの血脈を受け継いでいるというのだ。

 研究は、アジアの中の127の地域に住む計5,321人の男性のDNAを分析し、西暦1100年から紀元前1300年ほどの間の過去に遡って"偉大な父"を突き止める試みを行なった。具体的には、DNAの中の男性にしかない「Y染色体」の塩基配列をサンプリング調査したということである。

 集められたY染色体を分析してみると大半はまったく共通点のないランダムな塩基配列をしていたものの、分析の数を重ねていくといくつかのグループに分けられることが徐々にわかり、最終的に11のグループの存在が浮き彫りになったということだ。そして調査した男性の約4割にあたる37.8%のY染色体は、この11つのいずれかに分類されることが判明したのだ。実際の人口に照らし合わせると、約8億3,000万人のアジア人男性がこの11人のいずれかの血脈を継いでいることになる。

 この11人の"偉大な父"の筆頭に挙げられるのが他ならぬチンギス・ハンである。12~13世紀にかけてユーラシア大陸に巨大なモンゴル帝国を築きあげたチンギス・ハンだが、その"直系の子孫"は統計上は今も1,600万人存在しているということだ。おそらくそこには朝青龍や白鵬も含まれているのではないだろうか。チンギス・ハンは本妻の他に幾人も愛人を抱えていたといわれ、一説では生涯で産ませた子供の数は百人を超えているともいわれている。

 多くの女性と接触、交渉することができたのはチンギス・ハンが生涯を通じて高い地位にあったからに他ならないが、もうひとつの重要な要素は馬を使った移動にあるということだ。政治と軍事に忙しい身であっても、チンギス・ハンは愛馬の機動力を駆使して、広範囲の女性と頻繁に一夜を共にすることができたのである。

■残る8人の"父"は誰なのか?

 チンギス・ハンに続いて名前が挙がっている歴史上の人物は中国明朝後期の女真族の一派、建州女直の部族長といわれているギオチャンガだ。ちなみにギオチャンガの孫は後金の創始者で清朝の初代皇帝のヌルハチである。ギオチャンガもまた多くの妻と子供を持ち、現在の男系の子孫は150万人以上と計算されている。

 11人の中からさらにもう1人、耶律阿保機(やりつ あぼき、872年-926年)の名前も挙がっている。耶律阿保機は契丹(きたい)帝国の建国者で、かつて契丹帝国だった現在の中国北部には今も多くの子孫が暮らしているといわれている。

 この11人の"偉大な父"のうち、歴史上の人物として特定できるのは残念ながら今のところこの3人だけのようである。残る8人がいったい誰なのか様々な想像が膨らむところではあるが、場所と年代がある程度把握できている血脈もいくつかあり、例えば紀元前700年頃のトルコ北部や、西暦1100年前後のイランにも"偉大な父"がいたということだ。ということは"偉大な父"の中にイスラム系の人物がいる可能性は高そうだ。

 このトピックを最初に目にした時、ややオタクな話ではあるが筆者は思わずかつての歴史シミュレーションゲーム『蒼き狼と白き牝鹿・ジンギスカン』(コーエー)を思い出してしまった。ちなみにゲームでは12世紀頃に現在のイランにあった「アッバース朝」があり、国王のムスタンスィル(1192年-1242年)もキャラクターとして登場している。イスラム世界に注目が集まっている中、今このゲームをプレイしてみるのもいろんな意味で興味深いかもしれない。

 今回の研究は基本的に大陸を舞台にしており、おそらく日本には直接関係していないと思われるが、当然ながら東アジアの島国・日本にもこの11人の"偉大な父"の血脈は受け継がれているだろう。しかし大陸と比べればまた少し違った島国ならではの特色が現れてくるのかもしれない。あの「失われた十支族」のこともあることだし、今後は日本人男性のY染色体の傾向も何らかの機会にどこかでぜひ調査して欲しいところだ。
(文=仲田しんじ)

※チンギス・ハンの胸像 画像は「Wikimedia Commons」より