人間の魔性が現れる ― むごすぎる保険金殺人3選!! ノンフィクションライターが選出

人間の魔性が現れる ― むごすぎる保険金殺人3選!! ノンフィクションライターが選出
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 殺人の中でも特に、「保険金殺人」には人間の魔性が現れるのではないだろうか。もちろん、どんな場合でも殺人は許されるものではないが、憎悪する相手に刃を突き立てて逮捕されるなら、まだ人間的だ。しかし保険金殺人の場合、まず対象となるのは家族や会社の従業員など、苦楽をともにしてきたはずの人間だ。緻密に計画を立て殺害を敢行した後は、身近な者を喪った者として悲しみにくれる演技をし、平然と保険金を受け取る──。

 実は、日本では保険金殺人は、なかなか発覚しない。先進国の中で、日本は法医学分野が極めて貧弱なのだ。アメリカでは(州によって違いはあるが)、法医学の知識もあり捜査権もある監察医が現場に訪れ、遺体を見る。日本では指定された大学の法医学教室で司法解剖が行われるが、実施されるのは、"変死"とされたごく一部の遺体にすぎない。保険金殺人でよく使われる「青酸カリ、トリカブト、サリチル酸」など、どれも死体を見ただけでは判別不可能なのにもかかわらず、被害者が心筋梗塞などと診断され、そのまま埋葬されてしまうことも少なくない。ニュースなどを見ていてもわかることだが、保険金殺人が騒がれるのは、その人物の周囲に4人も5人も死者が出てからだ。

 今回は、保険金殺人の3例を紹介しよう。

【その他の画像はこちらから→http://tocana.jp/2015/05/post_6392.html】

◆CASE1『実の父親による計画的犯行』

「小さい頃は自分をかわいがってくれたので、いつかは同じようにかわいがってくれる」

 今中正夫(事件当時、57)から殺されることになる娘の今中陽子さん(事件当時、20)は、そう話し、自分につらく当たる父に寄り添おうとしていた。

 事件が起きたのは昭和61年。その14年前に今中正夫は離婚し、2人の娘を引き取った。陽子さんが次女である。

 だが正夫は7、8年の間に34回も転職を重ね、働かない時期も長かった。そんな環境の中、長女は高校を卒業し、就職した。だが、陽子さんは非行に走り、高校を中退してしまう。昭和57年、陽子さんはパチンコ店で働きながら一人暮らしをしていたが、正夫は店に現れては、毎月5万円ほどを無心していた。

 正夫が陽子さんを生命保険に入れたのが、昭和58年だ。それから正夫は陽子さんにアイロンで殴りつけたりする暴行を7度も行い、彼女は入院するほどの怪我を負った。

 これを知って長女は、父親の手の届かない場所に逃げるよう、陽子さんに勧めた。しかしこれを、陽子さんは「父の面倒は、自分が一生見る」と断った。

 陽子さんは、非行に走った過去を恥じていた。またこの時、結婚を誓った恋人がいたという。自分が頑張って父親を正道に戻すのが、娘としての務めと考えたのだ。

 だが正夫は、刑務所から出所したばかりの、松田と吉松という2人の窃盗のプロ犯罪者と知り合ったことで、保険金殺人の計画を推し進める。

 普通の殺し方なら2,000万円、交通事故に見せかけたら3,000万円という報酬で、正夫は2人に娘の殺人を依頼する。交通事故死なら、自動車賠償責任保険で2,000万円出るからだ。

 陽子さんはパチンコ店の勤務を終えると、歩いて10数分ほどの婚約者の住む寮に行くのが日課だった。その間は人通りも多く、交通事故に見せかけるのは難しい。

 昭和61年6月、松田と吉松は寮近くの路上で陽子さんを襲い、野球バットで撲殺し逃走した。正夫はその頃、アリバイ作りのために、自宅近くの飲食店でビールを飲んでいた。

 正夫の元妻や長女は、通夜や葬儀中、「お父さんがやったんだ」と話していたという。

 警察が粘り強い捜査を行い、無関係であるはずの陽子さんの住所を記した松田のメモを発見。その後、自供によってすべてが露見した。昭和62年、3人は逮捕された。

◆CASE2【別府3億円保険金殺人事件】ワイドショーにまで出演し、無罪を主張した犯人

 保険金殺人の疑いをかけられながらテレビのワイドショーに出演。その直後に逮捕されたのが、荒木虎美(事件当時、47)だ。

 荒木は結婚前、山口という名だった。昭和48年「子どもが好きなので、子どものいる女性と結婚したい」と、結婚相談所や民生委員を訪ね歩き、出会ったのが3人の子どもを持つ荒木玉子さん(事件当時、41)だった。結婚して、山口のほうが荒木姓となる。

 そして昭和49年11月17日、事件が起きた。午後10時過ぎ頃、大分県別府市の国際観光港第3埠頭から、日産サニーが海に飛び込んだ。辺りには、夜釣りを楽しむ人々も多かった。車が海中に沈んだ5秒ほど後、浮かび上がってきた男が「助けてくれ!」と叫ぶ。釣り人のひとりが差し出した玉網に捕まって、男は岸壁に這い上がった。虎美だった。

 警察が来てサニーを海中から引き上げる。車中では、妻の玉子さん、長女の祐子ちゃん(事件当時、12)、次女の涼子ちゃん(事件当時、10)が溺死していた。

「別府湾の夜景を見るために埠頭に来た。運転していたのは妻で、眠気でうつらうつらしていて、妻の悲鳴で気がついた時には、すでに海の中。割れたフロントガラスから脱出した」それが虎美の説明だった。

 保険金殺人は、病死か事故死、あるいは自殺に見せかけるものだ。自分も含んだ事故で自分だけ助かるというのは、新機軸ではある。だが、すぐに彼に疑いがかけられた。虎美が受け取るはずの保険金が、3億1,000万円に上ったためだ。

 12月10日、別府署の捜査本部は、玉子さんの遺体のひざの皮下出血が助手席ダッシュボードのへこみと一致するという鑑定結果から、玉子さんは助手席にいたと結論づけた。運転していたのは虎美だったというわけだ。

 虎美がフジテレビ放送の『三時のあなた』に出演したのは、その翌日のことだった。虎美が事件の時のことを説明する。

「泳ぎながら『車の中に家内と子どもたちが閉じ込められている。なんとかしてください』と言ったんです。そうしたら、『大変だ。110番しろ』と騒いでいるのが聞こえた」

 ゲストで出ていた、作家の戸川昌子が言った。

「泳ぎながら聞こえるかしら?」

 すると、虎美は怒り出してスタジオを出てしまったのだ。すぐさま虎美は新聞記者たちに取り囲まれ、急遽記者会見を行ったが、その時にはすでに逮捕状が出ていた。そして、フジテレビの裏門から出たところを、警視庁捜査1課の刑事に逮捕された。

 昭和55年3月28日、大分地裁で死刑判決が下されたが、虎美は控訴。昭和59年9月に福岡高裁で控訴棄却されるも、上告。しかし平成元年1月13日、八王子の医療刑務所にて、癌性腹膜炎で虎美は死亡した。61歳だった。

◆CASE3『金策のため放火...放蕩生活の犠牲になった従業員』

 自分の下で働いている労働者を火事で殺し、保険金を手にした夫婦もいる。

 実際の事故で保険金を手にし、思わぬ甘い汁を吸ったことが発端だった。

 昭和56年、北海道夕張の「北炭夕張炭鉱」で大量のメタンガスが発生。93名の死者が出た。

 日高信子(逮捕時、38)が取り仕切る「日高工業」の労働者も、7名が死亡。1億3,000万円の保険金を受け取った。この時、夫の日高安政(逮捕時、41歳)は、別の事件で函館刑務所に服役していた。

 安政は出所後、自分たちが金持ちになったのを知る。豪邸を建て、1,000万円もする車、リンカーン・コンチネンタルを買うなど、金遣いは荒かった。安政は暴力団「日高組」組長でもあった。賭博を開き、サラ金を経営した。信子もギフトショップを開いたが、どちらも順調とは言いがたく、金は減っていくばかりだった。

 昭和59年、あまりにも儲からないため、安政は札幌でデートクラブをやろうと考えた。しかし、信子から、金は100万ほどしか残っていないのを聞かされた。

 そこで日高組に入って2年ばかりの石川清(逮捕時、24)を使い計画殺人を思いつき、「おまえを信頼している」「組でいい顔にしてやる」「500万円やる」などと言って夫婦は説き伏せ、犯行を企てた。

 5月5日、日高組の従業員寮に石川は現れた。「しばらく坑内で仕事をやれと言われ、寮に入ることになった」と労働者たちに話し、費用は持つからと、自分の入寮パーティをやりたいと提案。酒、肉、野菜を石川が買い込み、労働者たちは宴を始めた。

 皆が酔いつぶれてしまうと、石川がライターの火を新聞紙に着け、炎上させた。古びた障子から天井へと火が燃え上がっていく。

 消防車が駆けつけたが、消防士1人が殉職する惨事となった。労働者4人と子ども2人が死亡。総額1億3,800万円の生命保険を夫婦は手にする。

 怪我を負った石川は入院したが「秘密を知っている自分は殺される...」と、疑心暗鬼にとらわれはじめる。石川は病院から逃走し、8月16日、青森まで行ったところで警察に自首。それを受けて、8月19日、夫婦は逮捕された。

 昭和62年3月9日、札幌地裁は日高夫婦にそろって死刑判決を下す。夫婦は控訴したが、昭和63年、それを取り下げた。昭和天皇の容態の悪化を伝える報道が相次ぐ中、恩赦があるのでは...、と夫婦は期待したためだ。しかし恩赦の対象になるには、刑が確定していなければならない。そこで夫婦は、控訴を取り下げ、自ら確定死刑囚になったのだった。

 昭和64年1月7日。昭和天皇は崩御した。しかし、懲役受刑者や禁錮受刑者、死刑確定者に対する恩赦は一切行われなかった。

 平成9年8月1日、札幌拘置支所で日高夫婦への死刑が執行された。

(文=深笛義也)

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