呪われた世界遺産「マダイン・サーレハ」 ~人跡未踏の砂漠に広がる壮麗な奇観~

呪われた世界遺産「マダイン・サーレハ」 ~人跡未踏の砂漠に広がる壮麗な奇観~

 しばしば混同されるが、「予言者」と「預言者」とは、厳密に言えば意味が異なる。英語ではいずれも「prophet」となるが、日本語で「預言者」と言えば、単に未来の出来事を予言するだけでなく、神の啓示を伝える人物のことを指す。従って、『旧約聖書』に登場するアブラハム、そしてイスラム教を創始したムハンマドも、その意味で「預言者」である。

 イスラム教では、唯一絶対神アッラーこそ、ユダヤ教の神にしてキリスト教の神でもあると考える。故に聖典『コーラン』では、アブラハムやイエスもアッラーの預言者とみなされている。そしてこれらの預言者以外にも、サーレフ(サーリフ)、フード、シュアイブなど独自の預言者を何人も伝えているのだ。

【その他の画像はこちらから→http://tocana.jp/2015/05/post_6412.html】

■サムード人と「マダイン・サーレハ」の伝説

 こうした預言者の1人サーレフは、「サムード」と呼ばれる民族に対して遣わされた預言者であり、『コーラン』では第7章、第11章、第26章、第27章などにその業績が記されている。

 それらの記述によると、サーレフは他の幾多の預言者と同様、唯一絶対神アッラーを崇拝するようサムードの人々に呼びかけた。アッラーは徴(しるし)として、山の中から1頭の雌ラクダを生み出したが、サムード人はこのラクダを屠殺してしまった。すると神の罰がたちどころに下り、サムード人たちは、サーレフに従う少数の者を除いてすべて滅びてしまったという。

 そして彼らの故地には、人の住まない荒れ果てた石の廃墟だけが残った。以来この場所は、神に呪われた忌むべき地として、アラビア語で「マダイン・サーレハ」すなわち「サーレフの街」と呼ばれて畏怖されるようになった。

 この、イスラム版「ソドムとゴモラ」ともいうべき伝説こそが、現在もサウジアラビアに残る大規模な遺跡「マダイン・サーレハ」の起源譚である。

■知られざる世界遺産の光景

「マダイン・サーレハ」の遺跡群は、サウジアラビアにあるイスラム教第2の聖地マディーナから、北西400kmほどの場所にある。マディーナを起点に、砂漠の真ん中を延々と車で進むと、突然巨大な岩山が点々と散らばる場所に出る。

 人跡未踏の砂漠地帯で、ぽつんぽつんと並ぶいくつもの岩山に巨大な建造物が彫り刻まれている光景は、地球上のものとは思えない奇観を呈している。中でも特に威容を誇るのが、高さ20m以上の岩山に刻まれた「ユニーク・パレス」と呼ばれるものだ。

 まさに宮殿を思わせる掘り込みの数々であるが、実際のところ「マダイン・サーレハ」は、紀元1世紀頃にこの場所を支配していた「ナバタイ人」の墳墓跡であると考えられている。

「マダイン・サーレハ」の遺跡群は2008年、サウジアラビアで最初のユネスコ世界遺産に登録された。しかし地元のアラブ人にとっては、やはり縁起の悪い場所らしく、海外からの観光ツアーなどはない。この場所にたどり着くには、何らかの用務でサウジアラビアに入国し、個人的に交通手段を手配するしかないのだ。

 これだけの壮麗な遺跡に一般の観光客がアクセスできないというのも、考えてみればもったいない話ではあるが、それだけに手つかずのありのままの姿で維持されているとも言えよう。機会があれば、ぜひとも足を運んでみていただきたい。
(文=羽仁礼)

※撮影:羽仁礼

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