200万人の赤ちゃんをたった1人で救った"黄金の腕を持つ男"!! =オーストラリア
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 オーストラリアに住むジェームス・ハリソンさん(78歳)には、ほぼ毎週のように通いつめている場所がある――献血センターだ。実はジェームスさん、過去60年間に1,000回以上も献血を続けているという。のんびり年金生活を送っていてもおかしくない年齢の彼を、何がそこまで駆り立てているのだろう?

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■少年時代の手術を契機に献血の"恩返し"

 英紙「Mirror」(6月9日)によれば、普段のジェームスさんは、娘や孫との時間、趣味の切手収集を楽しむごく普通のおじいちゃんだという。そんな彼が唯一、譲れないのが献血なのだ。

 1951年、ジェームスさんは14歳のとき、片方の肺を摘出した。手術が終わった数日後、父親はジェームスさんに手術の様子を語って聞かせたそうだ。

「私の手術では13個もの輸血バッグが使われたと言われました。無名の人びとの血液のおかげで命が繋がったのだと。父自身ドナー登録をしていたのですが、私も大きくなったら輸血ドナーになろうと決心したんです」(ジェームスさん)

 そして、オーストラリアで献血が許可される18歳になると、すぐさま献血を始めたという。だが、彼の善意は、本人も想像できなかったほど大きな実を結ぶことになるのだ。なぜなら、彼の血は"スペシャル"だったから......。

「CNN」の取材に対し、「オーストラリア赤十字血液サービス」のジェマ・フォルケンマイヤーさんは次のように応える。

「オーストラリアでは1967年まで、何千万人もの新生児が亡くなっていたんです。流産や脳に障害をもって生まれてくる赤ちゃんも後を絶たず、医者にも原因不明で、本当に悲惨でした」

 のちに、その原因は「Rh式血液型不適合妊娠」であることが突き止められた。Rhマイナスの母親がRhプラスの胎児を初めて妊娠した場合、分娩時に胎児の血液が母体内へ流入して母体にRhプラスの血球に対する抗体がつくられる。その後、Rhプラスの第2子を妊娠すると、この母体の中にできた抗体が胎盤を通って胎児の赤血球と結合し、胎児の赤血球を破壊してしまうのだ。

■血液の特殊な抗体が胎児を次々救う

 そんな悲劇が繰り返された1960年代、ある医療チームが「ジェームスさんの血液には特殊な抗体があり、胎児の命が救えるかもしれない」という研究結果を発表した。

 そして、ジェームスさんとダッグを組み、開発されたのが、Rhマイナスの母親がRhプラスの胎児を妊娠したとき、Rh抗体ができるのを防ぐワクチン「抗D(anti-D)」だ。現在、オーストラリアで製造されている抗Dはすべて、ジェームスさんひとりの血液から採取されたものだというから驚愕だ。

 なお、なぜ彼がこのような特殊な血液をしているのかは医者も不明だというが、恐らく14歳のときの輸血が原因なのではないかと推測されている。

 すでに200万人以上の赤ちゃんを救ったことで数々の表彰を受けているジェームスさん。ひとは彼を「黄金の腕を持つ男」と呼ぶ。

 こんなふうに国民的「命の恩人」であるジェームスさんだが、1,000回以上献血をしてもなお、苦手なことがあるという。実はこれまで一度も注射針が腕を刺す瞬間を見たことがないのだそうだ。「あの、チクンが嫌なんです。血を見るのもキライだし」。タフだけど、どこかおちゃめなヒーローだ。
(文=佐藤Kay)

※画像は、YouTubeより