遠藤憲一に聞いた! 公開できるかギリギリの問題作『木屋町DARUMA』に出演した理由

遠藤憲一に聞いた! 公開できるかギリギリの問題作『木屋町DARUMA』に出演した理由

 発禁作品を映画化した問題作、ここに爆誕――。10月3日から渋谷シネパレスなど全国で公開される映画、『木屋町DARUMA』が注目を集めている。

【その他の画像はコチラ→http://tocana.jp/2015/10/post_7477.html】

■タブーエッセンスを凝縮した怪作

 この作品は、"京都の歓楽街である木屋町で、四肢をなくしたヤクザが、借金取りとして、自らの体型を活かして取り立てを行う"という、あまりにも衝撃的すぎる内容から、多くの出版社に刊行を断られた丸野裕行の小説が原作。

 裏社会に蠢く異質すぎる人間たちの生き様を、気鋭の監督である榊英雄のもと、主役である手足をなくした元ヤクザの取り立て屋、勝浦茂雄役に遠藤憲一、その世話を命じられた坂本役に三浦誠己、勝浦に追い込まれる多重債務者の一家に寺島進と武田梨奈など、個性派のキャストが集結し、見事に描き上げている。今回、TOCANAでは主演を務める遠藤氏のインタビューに成功。障がい者、裏社会、多重債務者と、この世のタブーのエッセンスを凝縮したようなこの怪作の主演を、現在ドラマや映画、舞台などで引く手あまたの遠藤氏が受けた理由とは何なのか? そしてこの作品の魅力とは何なのか? 氏に語ってもらった。

■手足がないという制約の中での演技

――今回はインタビューをお受け下さりありがとうございます。早速ですが、『木屋町DARUMA』の方を拝見させて頂きまして、正直に申し上げますとかなりエグいというか、すごい映画だなと。

遠藤憲一氏(以下、遠) だろうねぇ。

――今回、四肢を失ったヤクザという役をオファーされた時、率直にどう思われましたか?

遠 ヤクザは今までたくさん演じてきたんだけど、一番表現すべき両手両足が無いっていうのがね......(笑)。この役は「手足を失っても、それでも生きるんだ」っていうのがテーマだと自分で勝手に作っていったのだけど、顔と心の中だけの状態でどこまでそれを表現できるのかチャレンジしてみたかったから、オファーを受けたって感じかな。

――いや、もうスクリーンを通して遠藤さんの情念がこれでもかと炸裂されているというか...。

遠 本当はね、作品っていうのは観てくれる人を喜ばすものだと思うんだけど、今回は作り手たちが夢中になってて、観客をド無視して作ってるんでね。

――観客をド無視ですか(笑)。

遠 だから、できあがった後、改めて観て「これ一体、誰が観るんだよ」って(笑)。まあでも、なかなかそういう実験ができる作品っていうのは無いからね。とりあえず一回はやってみたかったかな。

――なるほど。実際に演じられて、難しかった部分などはありましたか?

遠 やっぱり、表現の制約がきついってことかな。『ジョニーは戦場に行った(※1)』を子どもの頃に観たことがあったんだけど、あれも手足が無いじゃない。あっちは戦争の負傷者がモールス信号だけで意思のやり取りをするっていう、もっと酷い状態だけどさ。ほかにも、日本映画で、『キャタピラー(※2)』っていうのがあって、観てて「制約がきついなぁ」って思ってたんだけど、実際に自分で演じてみるとやっぱり難しいよね。だけど、その中で必死に蠢いてみたり、心の叫び、さらにふと我に返ってる状態とかを表現してみたり......。自分の中では、やれたこととやれなかったことが半々ぐらいかな。

――ということは、心残りのある部分もある、ということでしょうか。

遠 もっと自由に...というか、予算の都合からCGの制約もあったから、映し方によっては手や足が見えないように処理しないといけない部分もあってね。もうちょっと......うーん、でも、あんまりやるとドギツくなるし、いいのかな、あれぐらいが(笑)。

■この映画には、得体の知れないエネルギーが渦巻いている

――確かにもう十分ドギツい感じはありますね(笑)。そんな難しい役柄をこなす中で、印象に残っているシーンは何かございますか?

遠 そうだね...。ワンシーンごとに監督とディスカッションしながら脚本を変更したり、ドギツめにしていったり。関東の人間の俺が、関西弁も使わないといけなかったし、何度も言っているように動きに制約がある中で、どう表現できるのかっていうのを考えるのが大変だった。でもそれが楽しい部分でもあったから、印象に残っているシーンをひとつだけ選ぶっていうのは難しいかな。

――まさに入魂の作品ということですね。ちなみに、遠藤さんはヤクザとか、そういう裏社会の人間を演じることが多いかと思うのですが、そうした人々にはどういった思いを持っていらっしゃるのでしょう。

遠 全く知らないんだよね。付き合いもないし、情報もない。

――そうなんですか。失礼ですが、意外というか...。

遠 本当のヤクザの人をどうこう演じるのではなく、あくまで人間がメインで、たまたま置かれた環境がヤクザっていう感覚で演じている。その人間が、どんな職業であろうが喜怒哀楽はあるし、もっと言えばそれだけじゃない、色々な感情がある。置かれた状況の中で、どうやって変化していくのか、どうやって喜怒哀楽から先の表現をできるのか。そういう内面に主眼を置きたいよね。だから、ヤクザだからとかはあんまり関係ないかな。

――なるほど。そんな遠藤さんにとって実験とも言える今回の『木屋町~』ですが、周りの方がご覧になった感想とかはどうでしたか?

遠 いや、あまり聞いてないね。俺はネットも見ないし。ただ、自分で見ればわかるから。...ただ、家族そろって観に行く映画ではないよね(笑)。

――それは確実にそうでしょうね(笑)。

遠 でも、この映画はとにかく「得体の知れないエネルギーを持っている作品」だとは思う。たとえば、俺の役柄で言えば、どんな苦しい状況にななろうが生きていくっていうエネルギーがあるから、それを感じてもらえればと思うね。あとは、製作者全員がエネルギーを傾けて作品をつくると、こういう得体の知れない独特な世界観をもった作品ができるんだ、っていうのが伝えわれば嬉しい。

――確かにこれだけの世界観を作り出すのには、かなりの熱が必要だ、ということは私もわかります。ちなみに、共演された方の中で、印象に残った方というのはどなたかいらっしゃいますか?

遠 三浦(誠己)君だね。彼は今回が初共演だったんだけど、彼はいいエネルギーを持っていると思う。内面のエネルギーでぶつかってくるような演技で、お互いそのシーンが終わってから「ああ、こういう風になってたんだ」っていうような状況になってた。素晴らしかったね。

――確かに、三浦さん演じる坂本が、泥酔して勝浦に絡むシーンはかなりグッとくるものがありましたね。では、作品の内容の方に軽く触れさせていただきたいと思うのですが、遠藤さんが演じられた勝浦という人物についてどうお考えですか? 例えば、何か共感できる部分ですとか。

遠 ヤクザって職業の細かいところまではわからないけど、ある程度見栄を張っていく世界だと思うのね。だから、勝浦みたいになっちゃったら大半は引退すると思うんだ。でも、それでも生きていくっていうエネルギーはすごいと思う。

――作品内では、そんな勝浦に追い詰められて、どんどん堕ちていく人々にもスポットが当たってますよね。寺島進さんと武田梨奈さんの演じた一家だとか。ああいう借金で破滅していく人々は、現実世界にもそれなりにいると思うんですが、そういう方についてはどういう風にお思いでしょう。

遠 俺の知り合いにはいないけどな(笑)。でも、家族崩壊してワケわかんない事件になってたりとか、そういうのもたまに聞くじゃん。まったく共感はできないけど、確かにいるんだろうなっていうのは強く思う。

――なるほど。先ほどからエネルギーという単語を多くお使いになられてますけど、遠藤さんのいうエネルギーっていうのはどういうものなんでしょうか。

遠 さっき喜怒哀楽って言ったけど、心の中っていうのは、そんな4色だけじゃなくて、何千色、何万色っていう色があると思うんだよ。ピアノにも鍵盤の数には限りがあるけど、弾き方とか、その順番とかを変える事によって本当に色々な曲が出るじゃない。人が幸せになるのも不幸になるのも、そういう数えきれない色の心の動きにかかってくる部分がある。だからこそ、それ自体が生きる力に直結するもの、つまりエネルギーになるんだよ。

――生命力。

遠 だから役者っていうのは、そういう見えない心の中というものを表現するのが一番だと思うんだよね。この役でも、どんな形であろうと生きていくっていう心の生みだす生命力っていうものを伝えたかったし。ヤクザじゃないにしても、何か自分にとってマイナスの部分を抱えている人っていっぱいいると思うんだよ。中には、それによってガクッとやる気無くなっちゃったり、死んじゃったり、人に当たっちゃったりするんだろうけど、勝浦はあんな姿になっても前に進む、まだ生きようとする。最初に言ったけど、「それでも生きるんだ」っていうこの心の凄さっていうのが、ひとつのテーマだったよね。

――確かに、勝浦のような姿になったら絶望して死にたくなる人がほとんどだと思います。

■作品が過激すぎてテレビでは放送できない?

――話はちょっと変わりますが、この作品の原作となる丸野裕行さんの小説は、内容の過激さから、多くの出版社が本にするのをためらったという経緯があるじゃないですか。映画の方に関しても、別のインタビューで遠藤さんが「公開できるかどうかわからない」っておっしゃっていたそうで。

遠 俺も公開できないと思ってたからね(笑)。

――そうした、過激な作品について公開をするべきではないという世の中の風潮について、遠藤さんはどうお考えでしょうか。

遠 いや、その通りだと思うよ。やっちゃいけないと思う。

――あ、その通りだと思うんですね(笑)。

遠 ただ、世の中にはさ、ヴァイオレンス映画みたいに人殺しをテーマにするものもあるじゃん? これはそういう殺し合いの作品ではないんだよね。戦争でもないし。ただ、体が不自由の極みだから、表現しちゃいけないっていうのは、世の中にある常識がちょっとお門違いかなって、たまに思う事はあるよね。ただ、パッと見の印象で世の中は回っている部分はあるんで、こういうのは特にグロく見えるっていうのもわかる。手足がないのに生きているし、しかもワーワー騒いで、金を取り立ててるしさ(笑)。

――正直、この作品を観た時、人権団体とかからクレームが来るんじゃないかっていうのをちょっと考えましたよね。

遠 そうなったらそうなったでしょうがないね(笑)。

――以前、スタジオジブリのアニメ作品である『風立ちぬ(※3)』でも、喫煙シーンが多すぎるという理由で、NPO法人からクレームが入った事がありましたし。

遠 あれはちょっとどうかと思うけど、やっぱり世の中には限度っていうものを作っておく必要はあると思うよ。まあ、この作品はギリギリのスレスレって感じじゃないかな。障がい者の人の日常を描いた作品ではないからね。むしろ、それを武器にしてるっていうのが一番キツいところなんだと思う。

――確かに、障がい者の中でもものすごく特殊なケースというか。

遠 だから、大半はクレームくるんじゃないかな(笑)。

――大半はクレーム、ですか...(笑)。ちなみに、そんなギリギリスレスレな作品を、どんな人に観てもらいたいですか?

遠 そりゃ色んな人に観てもらいたいけど、実際観るのはコアな人だろうね。覗く勇気がある人は観てみて、世の中にはこういう作品はあんまりないよって(笑)。

――金曜ロードショーとかでは絶対放送されないでしょうしね(笑)。

遠 そうそう。だから宣伝もできないし。宣伝できない、放送できない、じゃあなんで敢えてそんな作品を作ったんだっていうね(笑)。でも、なんで作ったのかっていうのを興味がある人もいると思うんで。見てくれはエグいことばっかりだけど、グロいことをやるというのがテーマじゃないから。さっき言った通り、人間が生きていくことのエネルギーを描いた作品なんだよね。そこを感じられる人に観てもらいたい。「人間って凄えな」って思ってもらいたいよね。もちろん、こういうことをやれってことじゃなくてね。

――やれって言われてやる人はなかなかいないと思いますので、そこは安心して頂いて大丈夫かと思います(笑)。

遠 今キツい人とかが見て、「なんだ、まだへっちゃらじゃん」とか思ってもらえればいいかなって。

■エンケンの不思議体験は...?

――さて、話はものすごく変わってしまうんですが、このTOCANAというのはオカルトなども扱うサイトでして。インタビューさせていただいた方全員にお聞きしているんですが、遠藤さんは何か不思議な体験をされたことってございますか?

遠 オカルト的な話だったら、全くないね。

――じゃあ、あり得ないような偶然ですとか。

遠 そうだなあ...。俺は若い時、一番キツかったのが、高校を辞めるきっかけだったのね。教科書全部入れっぱなしにしたまま夏休みを迎えて、教師に燃やされて。それで、教科書ないから授業で毎時間前に立たされてさ。それで行けなくなって辞めちゃったんだけど。

――それは壮絶な体験ですね...。

遠 でも、そこで高校辞めてなかったら、俺は俳優になってないんだよね。その時は、先生の事を恨んだりもしたけど、後になってみないと、そういう事の意味っていうのはわからないな、とは強く思うよ。

――まさに塞翁が馬ってやつですね。

遠 ホントはもっと、おかしな話の方がいいんでしょ? オバケを見たとかさ。

――いやいや、そういうわけでは(笑)。

遠 でも、さっきの生命力の話じゃないけど、そういうものに惹かれるっていうのは、心が弱っている時なんじゃないかな。見えない時は心が強い時、見ちゃった時は心がとても弱っている時ってことだと思うよ。

――あ、見た事ありますか?

遠 ない。

――(笑)。天下のエンケンの心は常に強い、ということですね(笑)。では最後に、このインタビュー記事を見てくれた読者の方に何かメッセージをお願いできますでしょうか。恐らくコアな方も多いので、結構この作品を観に行く人も多いと思います。

遠 ありがとう! 貴方は凄いよ。よくこの作品を最後まで観てくれた! 貴方は凄い!

――あ、もう観るのが前提になってる(笑)。本日はどうもありがとうございました!

 人間の心から生まれるエネルギー――。遠藤氏が語ったテーマは、四肢をなくした男が裏社会で生き抜く、というストーリーからは一見想像しえないものだった。しかし、ある意味では、そうした苛烈な環境こそが、生きる力というものを克明に描き出すのに最適な題材なのかも知れない。氏の言葉通り、万人向けの作品でないことは否めないが、この作品の異質な魅力に触れることで、得るものがあることは間違いないと言えそうだ。10月3日より封切られるこの作品の公開を心して待とう。
(取材・文=阿佐美UMA 写真=河西亮)

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