被差別部落の古地図、名誉毀損書籍... 図書館めぐる問題はトンデモ本『亞書』だけではなかった!

被差別部落の古地図、名誉毀損書籍... 図書館めぐる問題はトンデモ本『亞書』だけではなかった!

 今年に入り国会図書館に"謎の本"が大量に納本されていることがわかった。個人によって運営される、りすの書房が発行する『亞書』と名付けられたシリーズ本が、今年に入り78冊納本されている。

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『亞書』はギリシア文字などがランダムに印刷されたもので、文章としての意味をなさない。今年の2月から発行され、現在までに112巻が刊行されている。1冊の価格は6万4800円である。朝日新聞による発行元への取材によれば、大手通販サイトAmazon上で販売されていたものの、1冊も売れていないという。

 国会図書館には納本制度という仕組みがあり、図書などの発行者に納入を義務付けている。納入者に対しては、代償金として定価の5割と送料が支払われるため、『亞書』は、代償金制度を利用した金儲けではないかと指摘する声も多い。

「納本制度の対象となるのはすべての出版物です。商業的に売られたもの以外でも、フリーペーパーや、印刷製本された同人誌なども納本制度の対象です。納本制度は一般流通に乗らない出版物を網羅的に集める目的もあります」(図書館に詳しいフリーライター)

 納本制度は、発行者に課せられた"義務"である。守られない場合は、発行者に当該書籍の五倍までの過料(罰金)を処する規定もあるが、現在までに適用された例はない。

 納本制度の対象となる出版物は、DVDやCD、ゲームソフトなどの電子出版物も含まれる。そうなると、定価は言い値でもOKなのだろうか。例えば200万円の商品を納入し、100万円を受け取るといったことも制度上は可能となる。

「相場を大きく逸脱する出版物は、その場で判断し断っているようです。『亞書』の1冊6万4800円という値段は、本として著しく高いわけではない。国会図書館には大量の出版物が納入されていますから、そのまま受領されてしまったのでしょう。納本制度は出版者、納入者の良識によって支えられている制度ともいえます」(前出・同)

 今回の『亞書』の例にとどまらず、国会図書館では出版社と図書館の間で"地味な攻防"が続いてきた。国立国会図書館では著者の没後、50年が経過し、著作権が失効した資料を電子化し「近代デジタルライブラリー」として公開している。ところが、2007年に公開された『大正新脩大蔵経』に対し、仏教書の専門出版社である大蔵出版が抗議を行った。

「大蔵出版は、『大正新脩大蔵経』をはじめ、仏教の専門書を販売することで収益のほとんどを得ています。著作権が失効しているからといって広く公開されては、商売にならないということでしょう。最終的に、話し合いは『大正新脩大蔵経』の電子データ閲覧は館内に限るという結論に落ち着きました」(前出・同)

 商業的な問題だけでなく、図書館では表現の自由をめぐって常に議論が起こってきた。名誉毀損やプライバシー侵害が記された書籍や雑誌を、図書館がそのまま提供してよいのか、被差別部落の場所や地名が記載されている古地図を公開すべきか、といった問題が生じている。

「日本国憲法第21条に定められた"表現の自由"には"知る権利"が含まれています。図書館はそれを保障する場所です。"特例"である情報を非公開とすれば、それが無限に拡大されてしまう恐れもあります。これが大原則です。個別の事例に関してはその都度対応しているというのが現状ですね」(前出・同)

 内容がどうであれ発行者が『亞書』を作り出版する"表現の自由"は保障されなければならない。今回の件は、納本制度を"表現の自由"をめぐる議論を呼び起こすことになりそうだ。
(文=平田宏利)

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