英紙「Daily Mail」(2月18日付)によると、ジンバブエ生まれのプロスペール・マティ君(1歳)は、明るく元気な赤ちゃんとしてすくすく育っていたという。しかしある日、両親は息子の唇と舌が異常な速さで肥大していくことに気づいた。急成長は止まらず、あれよあれよという間に、とうとう顔の半分くらいの大きさにまで腫れあがってしまった……。
■唇と舌にできた「血管腫」が急激に膨張
急いで医者に見せたところ、プロスペール君は「血管腫」に罹っていることが判明した。これは非がん性の良性腫瘍で、比較的よくみられる病気なのだそうだ。できやすい場所は太ももなどの下肢の他、頭や首などの頭頸部、上肢などが多いが、良性の場合が多く、経過をみるだけで特別に処置はしないのが普通だという。ただし、良性であっても目の周りや唇、呼吸を妨げる箇所にできたときは切除が必要になる。プロスペールくんの場合、運悪く唇と舌にできてしまっていた。
特に舌は成長とともにどんどん膨れあがり、最終的には気道をふさいで窒息死してしまうというのだ。だが、ジンバブエにはプロスペール君の手術ができる病院がない。両親は一大決心をして母国を脱出、南アフリカへと向かった。幸い、国の北東部にあるハウテン州テンビサで手術をしてくれる医師を見つけ出すことに成功。だが、無常にも1300ポンド(約21万円)の緊急手術が必要だと告げたのだった。
貧しい両親は目の前が真っ暗になったと話す。母親のモディトールさんは無職、父親のギルフレッドさんはスーパーに勤めてはいるが、そんな短期間で手術代を捻出することは不可能に近かった。
もはやコントロール不能状態の我が子の唇と舌。費用が工面されるまでは手術は行わないと告げる医師。両親は死に物狂いで資金調達に奔走した。だが、並大抵のことではない。タイムリミットが刻々と迫っていた――。
そして、救世主は現れた。マティ家の噂を聞きつけたテンビサの地元紙「Tembisan」の記者ジャンティ・ヌエンヤマ氏その人だ。彼はプロスペール君の窮状を記事にし、彼の運命を変えてくれるよう財源の提供を広く呼びかけたのだ。結果、ヌエンヤマ氏らによるハウテン州保健局との粘り強い交渉が功を成し、現在プロスペール君はテンビサ市内のスティーブ・ビコ・アカデミック病院に入院中、悲願だった手術も当病院が引き受ける方向で進んでいるという。
2月19日付の「Tembisan」紙の最新情報によれば、ハウテン州保健局報道官のスティーブ・マボナ氏により「我々は、市民の皆さまにプロスペール君の手術手続きが完了したことをお伝えいたします。まもなく医療チームによる手術が執り行われます」と発表した。
生後12カ月にもならないうちから、いきなり苦難の道を歩みだしたかに見えた小さな天使。だが、人びとの善意でその命はつながった。プロスペール君に笑顔が戻るのもそう遠くないはずだ。
(文=佐藤Kay)
※イメージ画像:「Thinkstock」より
「制御不能の口」を持つ少年、肥大する舌と唇を手術へ=南アフリカ
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