オリエンタルラジオ再々ブレイクの裏にある壮絶な奴隷時代とは?

オリエンタルラジオ再々ブレイクの裏にある壮絶な奴隷時代とは?
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 オリエンタルラジオが再々ブレイク中だ。ダンスミュージックを取り入れた新ネタ「PERFECT HUMAN」が、“普通に格好いい音楽”としてウケて、iTunesのミュージックチャートで1位を獲得。3月11日には『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)への出演も決定した。同日には、ダンスミュージックの大家であるアンダーワールドも出演する。

 オリエンタルラジオといえば2005年に“武勇伝”ネタでブレイク。芸歴3年目までにレギュラー10本を持つ売れっ子芸人となるものの、間もなく人気は低迷。その後、不遇の時代を経て、中田が“オタク・インテリ”キャラ、藤森が“チャラ男”キャラで再ブレイクを果たしていた。今回で三度目の再々ブレイクと言えよう。

「PERFECT HUMAN」は中田の実弟でありダンサーであるFISHBOYを迎えたダンスダンス&ボーカルグループRADIO FISHによる楽曲である。ネタというより、ひとつのパフォーマンスだ。

 オリエンタルラジオは消えそうで消えない芸人と言える。彼らはなぜ強いのか。中田が著した自伝的小説『芸人前夜』(ヨシモトブックス)を読むと、彼らの芸に対する拘泥、生真面目さが伝わってくる。

 ふたりの出会いは保険会社の自動車事故受付センターのアルバイトだった。中田が初めて見た藤森は“極彩色のタンクトップを二枚重ねにして、サルエルパンツの裾を自前の紐で縛り、ピアスを右に二つ、左に三つ。すべての指にプラスチック製の指輪をし、頭にはターバンを巻いている”(p.39)ものだった。その姿はチャラ男を通り越して、本文に書かれている通り“若い石油王”そのものであろう。

 中田はそれまでお笑い芸人を目指し、大学で友人とコンビを組んで学園祭でライブをやったり、ネットで相方を探していたりしていたところで藤森と出会った。藤本はお笑いにまったく興味はなかったものの、中田宅で学園祭のビデオを見てコンビ結成を申し出る。中田はその誘いを即座に受けず、藤森の本気度をはかろうとする。藤森がお笑いを目指す理由は“普通に就職したくない。ジャニーズとか俳優とか無理だけど、テレビには出てみたい”(p.59)というものだった。この理由はチャラい。

 ふたりは、やがてお笑い芸人を目指し吉本興業の養成所であるNSCに入る。当時の入学金は40万円だった。オーディション(入学試験)の日、ふたりは2ちゃんねるで仕入れた試験情報をもとに、60秒のアピールタイム用のネタを用意し、審査員に「…前に、なんかやってたことある?」と言わしめる(p.70)。

 本書の冒頭には“本書は著者の体験を基に書かれていますが、出版にあたり一部脚色が加えられています。なお、登場人物の名前など一部仮名にしております。”と断り書きがなされている。実際、本書で描かれるNSCの実態は厳しさを通り越し、悲惨ですらある。

 入学試験で見事、スタートダッシュを切ったふたりは厳しい養成所の洗礼を受ける。養成所近くのコンビニを使ったらクビ(前に生徒が騒ぎ苦情が来たため)、近くの公園をネタ練習に使うのも禁止(同じく苦情)、芸人じゃないので捕まっても吉本の名前を出さない(出せば当然クビ)、上履きが汚いということで竹刀で殴られる(人前に出る仕事を目指すため)、口臭チェックがあり臭いと帰される(チェックは一期上の先輩芸人が直接匂いを嗅ぐ人力)、などの厳しいルールがある。ただ即座にクビではなく、丸坊主にして頭を下げれば許してもらえる。そうして従順な奴隷が出来上がる。気づけば夏前までに、500~600人いた生徒は半分ほどに減っている。

 さらに数カ月後からネタ見せの授業がはじまるとふたりは一番乗りでネタを見せる(p.130)など、積極的なアピールを繰り返す。これは、選抜クラスに入るためである。入所後しばらくすると、500人の入学者から10組程度の選抜クラスができる。そこに入らないと、テレビに出ることは難しいと言われる。ただし、ウーマンラッシュアワーの村本大輔など選抜から漏れても活躍する芸人はいる。

 ネタ見せでアピールを続け、見事選抜クラスに入るふたり。そこで武勇伝の原型となる、中田伝説を話すネタを作り上げる。最後に出る「ペケポン」はシメのフレーズとして定着していた「いいかげんにしろ」に代わる言葉として熟考の末にできたものだ(p.164)。ネタを練り上げたふたりは、この年芸歴0年目にして「M-1グランプリ」の準決勝まで進む。吉本に限らず芸歴のカウントは初舞台を踏んだ時である。NSCの場合は養成所の卒業公演が芸人デビューの場だ。M-1予選での活躍を聞きつけ、在学中から『エンタの神様』(日本テレビ系)のスカウトも来ていたという。

 1年間の養成所生活を終え、密かに付き合っていた同期の女性(もちろん学校内恋愛も即クビである)との別離が描かれ物語は終わる。あとがきにおいて中田は本書を“僕はこの本を出すことで、青春と決別するつもりなのだ”とある。確かにそうだろう。

 作中には松本大洋原作による映画『ピンポン』や主題歌となったスーパーカーの『YUMEGIWA LAST BOY』、TBS系ドラマ『木更津キャッツアイ』など、2000年代初頭のキーワードも散りばめられている。ふたりはサブカルチャーを好む普通の大学生であったことがうかがえる。

 武勇伝ネタでのブレイクは“単なるぽっと出”と叩かれ(実際一時期そうなった)、あるいは“シンデレラストーリー”として嫉妬と怨嗟の対象ともなった。だが、『芸人前夜』を読めば、普通の大学生である彼らが、何者かになろうとして相応の努力を重ねる姿が浮かび上がる。アンチオリラジ派の人にこそ読んでもらいたい一冊だ。
(王城つぐ/メディア文化史研究)

※イメージ画像:『オリエンタルラジオ公式サイト』より

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