被災者の心を読み解く「21の幽霊体験談」! 子どもの遺体を導く母、憑依する霊……

被災者の心を読み解く「21の幽霊体験談」! 子どもの遺体を導く母、憑依する霊……

 過去には国会新聞社で編集次長を務め、お堅い政治からマニアックな民俗学まで、さまざまな分野に造詣深い作家、宇田川敬介氏。現在、フリージャーナリストとしても活動する彼がこの度、東日本大震災の被災地で暮らす人々が体験したスピリチュアルな出来事を紹介する書、『震災後の不思議な話』(飛鳥新社)を上梓した。

 怪談をテーマにしていることから、幽霊を中心としたオカルト本だと思われるかもしれないが、それは必ずしも正しくない。本書では、大切な人を亡くしながら今もなお被災地で生きる人々を取材し、被災者が実際に体験した不思議な現象を現地に伝わる昔話や民間伝承に照らして、その意味するところを分析している。

 選び抜かれた21の体験談は、ひとつひとつが不思議でありながらも、心に響く何かが感じられるのは、被災者の心の叫びがそれぞれの話に散りばめられているからだろう。人々の思いが起こした奇跡の数々は、オカルト的にも、民俗学的にも興味深い内容となっている。

■助からなかった人々の思い

 津波から逃れることができなかった人々はいかほどに無念だっただろう。特に、自らも命を落とし、さらに子を救えなかった母の心情は察するにあまりあるものだ。その無念さを感じさせる話が、第二幕で紹介されている。

 とある地区では高台に神社があり、地震が発生した場合は皆そこに避難することになっていた。そして被災後、逃げ遅れた人にも場所がわかるように、交代で境内にたき火を絶やさないようにしていたのだが、そこで不思議な事が起きる。

「突然、若い女性が現れたのである。津波の翌日までどこにいたのか、すっかり濡れていた。(中略)本堂から出てきた女性たちはタオルなどを持ってきて、その女性にかけた。女性はいきなり泣き出すと、すぐに立ち上がった。『子供たちが……連れてきます』そのまま階段のほうに向かうのだ」(同書より)

 そのまま女性は姿をくらませてしまった。見張り番の若い男が後を追うも、完全に見失ってしまったのである。しかしその夜、彼女は再び現れたという。

「交代した見張り番が、腰を抜かすように本堂の中に入ってきた。『あ、あの、昼の女性が……』『どうした』昼にお盆を持って飛び出した女性が声をかけた『子供を二人連れて来て……』それを聞いて女性が飛び出し、続いて本殿にいた者も、みな境内に出て行った。(中略)階段を昇り切った所に、乳飲み子と三歳くらいの子供のご遺体が、きれいに並んで横たわっていたのである」(同書より)

 見張りが言うには、女性が子供の手を引き、赤ん坊を抱いて石段を上がってきて、一礼したと思うと姿が消えてしまったということである。子供だけでも助けたかった母の強い思いは、死してなお消えることがなかったのだろう。

 この悲しい話は、宇田川氏がどうしても後世に伝えたいものであり、本書を書くきっかけとなったとも述べているものだ。同じ悲劇を繰り返さないために今われわれに何ができるのか、あらためてそれを考えるきっかけにもなるのではないだろうか。

■復興が進まず“帰れない”人たち

 亡くなってしまった人たちが暮らしていた土地には、彼らの生活の記憶が遺っている。津波がすべてを流し去っても、記憶は消えず、彼らもまたそこにいるのだ。被災地のタクシーに幽霊が現れるという話は以前にトカナでも取り上げたが、それもそのひとつだろう。

 宇田川氏によれば、震災で亡くなったり、行方不明になった人はいわば「神隠し」状態であるといい、帰るべき場所を探し求めているということである。そしてその思いは時として、今を生きる人へ及んでしまうようで、復興のボランティアをしていたとある女性が恐ろしい体験をしている。彼女は琴美さんという女性と連日、震災にあった家の復旧作業にあたっていた。そんなある夏の夜のことである。

「突然、琴美さんが胸を押さえて苦しみだしたのです。心臓発作かと思うような痛がりようで、私など、どうしていいかわかりません。慌てて起きようとしたのですが、なぜか動けないのです。私は金縛りにあったようでした。(中略)その琴美さんが突然起き上がり、頭をかきむしって叫びだしたのです。『苦しい……苦しい……』地の底から響いてくるような声、というよりは音でした」(同書より)

 動けなかった彼女に代わって介抱していた周りの人もおののいたが、次の言葉にさらに驚くこととなる。

「『ここはどこだ……まだ水の中にいるのか』普段の琴美さんからは似ても似つかない低い声が、体育館の中に響いたのです。『俺は、どこにいるんだ。家に帰らなければならない。誰か帰してくれ。町がなくなってしまった。私の家はどこだ?』」(同書より)

 その後、金縛りが解けた彼女が琴美さんに抱きつき、「琴美さん、戻ってきて」と叫ぶと琴美さんの力が抜けそのまま眠ったという。これは震災の犠牲者が、人に「憑依」したと思われる話だ。

 帰るところを失いさまよう被災者の魂が安寧を得るためにも、帰るべき場所の復興した新しい姿をみせなくてはならない。そういった意味でも復興を急ぐことは、亡くなった人々への供養になると、宇田川氏は書き記している。

■被災地の未来を見守る死者たち

 宇田川氏は日本の神を、神話に登場する神、地元に土着している神、人が死後神格化された神、と3つに分類し、震災で犠牲になった人々も神となって、被災地の復興を見守っていると本書で述べている。

 事実、取材中も、亡くなった人が見守っている、犠牲になった人が手助けしてくれているというような話はいくつもあったということだ。震災から5年の月日が経つが、遅々として進まない被災地の復興の様子を見た彼らの心配が、不思議な話に現れているのではないだろうか。

 怪談が生まれた背景にどのようなことがあったのか、なぜ亡くなった人がこの世に再び現れたのか、すべてに理由があるはずだ。ひとつひとつの話を詳しく読み解くことは、被災者が負った心の傷を明らかにする一端にもなるだろう。

 そういう意味で、本書はただの怪談本ではなく、被災者や犠牲になった人が直面している問題を従来とは別の視点で明らかにしたといえる。客観的なデータや数字も大事だが、震災にあった人々の内面に何が起きているのかを現象として知りたいという人は、本書がその助けとなることは間違いない。

※イメージ画像:「震災後の不思議な話」(飛鳥新社)

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