ヤフオクで210万円…! 封印された映画『空飛ぶ円盤 恐怖の襲撃』とは?

ヤフオクで210万円…! 封印された映画『空飛ぶ円盤 恐怖の襲撃』とは?

――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男・天野ミチヒロが、ツッコミどころ満載の封印映画をメッタ斬り!

『空飛ぶ円盤 恐怖の襲撃』
1956年・国光映画(配給・新東宝)
脚本・監督/関沢新一
出演/高島忠夫、江畑絢子、杉寛、天知茂ほか

 今年は『ウルトラマン』が1966年に放送を開始されてから50年。年始から各メディアで50周年企画が特集され、全国各地で様々な記念イベントが開催、または予定されている。そんな国民的ヒーロー番組のシリーズ初期2作品、『ウルトラマン』『ウルトラセブン』の劇中設定に影響を与えた映画があることはあまり知られていない。それが『空飛ぶ円盤 恐怖の襲撃』(56年)だ。これは1960年代後半に何度かテレビ放映されたが、1976年の自主上映会を最後にフィルムが行方不明となり、ソフト化不可能となった幻のSF映画である。

【その他の画像はコチラ→http://tocana.jp/2016/05/post_9668.html】

■空飛ぶ円盤からUFOへ

 メディアでの俗称が「UFO」にシフトしていく1970年代まで、宇宙人の乗り物は「空飛ぶ円盤」と呼ばれていた。それは1947年にアメリカで起きた「ケネス・アーノルド事件」がきっかけだった。カスケード山脈を自家用飛行機で飛行中のアーノルドが、水面を撥ねるコーヒー皿のように飛ぶ物体を目撃。それをマスコミが「FLYING SAUCER」と報道し、日本では「空飛ぶ円盤」と伝えられたのだ。

 この事件を機に、『THE FLYING SAUCER』(50年)、2008年にキアヌ・リーブス主演でリメイクされた『地球の静止する日』(51年)、『未知との遭遇』の元ネタと言われるレイ・ブラッドベリ原作『IT CAME FROM OUTER SPACE』(53年)、H・G・ウェルズ原作の『宇宙戦争』(53年)など、侵略・警告・遭難・ナンパ(笑)といった様々な理由で宇宙人が地球に訪れる内容の作品が続々と製作された。

 その頃の日本のSF映画と言えば、『ゴジラ』(54年)でその特殊技術が世界に認められ始めたばかり。『空飛ぶ円盤 恐怖の襲撃』公開の1956年には大映が、宇宙人が原水爆廃止を地球人に警告する『宇宙人東京に現わる』を製作し、岡本太郎デザインによるひとつ目のヒトデ型宇宙人・パイラ星人が強烈なインパクトを残した。こうした「宇宙」「反核」といったトレンドに、独立プロの国光(こっこう)映画が食いついた。

■『空飛ぶ円盤 恐怖の襲撃』あらすじ

 米ソによる水爆実験が行われる中、M87星雲から空飛ぶ円盤が地球に飛来し、反陽子光線で世界各国の主要都市を攻撃する。やがて円盤は怪ロボットを伴い日本にも現れ、防衛庁の戦闘機を退け、国会議事堂などを破壊。彼らは「ロケットR1号を引き渡さなければ地球を滅ぼす」と警告した。ここで戦時中に軍の協力を拒んだため拷問を受け、空襲で死んだと思われていた保科博士が、首に鉄製のギプス、左目と左手を失い半身不随という変わり果てた姿を現す。この地球最大の危機に博士は、秘密裏に完成させていたR1号で出撃し、宇宙空間で円盤と一騎打ち。必殺のXQ陽子破壊砲が炸裂する!

 燃える展開にワクワクする。1955年に発見されたばかりの反陽子、ヒロインを新聞記者が「ミス放射能」と呼ぶなど、ストーリーには時事ネタを組み込んでいるが、ウルトラファンなら「おや?」というキーワードをいくつか発見するはずだ。

・M87星雲……御存知、ウルトラマンとウルトラセブンの故郷はM78星雲

・XQ陽子破壊砲……『ウルトラマン』第36話「射つな! アラシ」で、アラシ隊員がザラガスを撃った怪獣の脳細胞を破壊する兵器はQXガン

・R1号…『ウルトラセブン』第26話「超兵器R1号」で、地球防衛軍が実験で星を丸ごと消滅させた、水爆8000個分の破壊力を持つ弾道ミサイルの呼称

 ここでふたりの重要人物を説明する必要がある。この作品の脚本と監督を兼ねた関沢新一は、東宝プロデューサー・田中友幸に見出され、岡本喜八監督作品や東宝特撮映画黄金期の文芸を支えた。代表作には、女性にも人気の『モスラ』(61年)、夢の日米怪獣タイトルマッチを実現させた『キングコング対ゴジラ』(62年)、宿敵キングギドラがデビューする『三大怪獣 地球最大の決戦』(64年)、ミニラが生まれる『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(67年)、また『ゴジラ対メカゴジラ』の原作も手掛けた。

 そして、若干20代で『ウルトラマン』の企画立案から番組世界観の統一、さらに脚本もこなした天才・金城哲夫(37歳で早逝)。特撮の神様・円谷英二は知人から紹介された学生時代の金城を関沢の自宅へ連れて行き、シナリオライターの修行をさせた。これが縁で金城は記念すべき『ウルトラマン』初回エピソードの脚本執筆を、師匠である関沢に依頼する運びとなったのだ。ちなみに関沢はウルトラマンの故郷を「M87星雲」と書いたのだが、台本で「M78星雲」と誤植され、それがそのまま劇中で使われて現在に至ったという。

 こういった繋がりで金城は、空飛ぶ潜水艦が登場する円谷プロのテレビドラマ『マイティジャック』(68年)の初回脚本も関沢に依頼。『空飛ぶ円盤 恐怖の襲撃』でR1号が海底の格納庫から海上へと浮上する出撃するシーケンスは、関沢脚本の東宝作品『海底軍艦』(63年)を経て、この『マイティジャック』へと受け継がれていったのだ。

 もうひとつ、もともと脚本には『空飛ぶ円盤 地球は狙われている 宇宙篇』という題名が付けられていた。これは金城脚本である『ウルトラセブン』第1話の冒頭に流れる「地球は狙われている。宇宙に漂う幾千の星から、今、侵略の、恐るべき、魔の手が…」というナレーションで帰結したのだろう。

 その題名だが、公開時に配給元・新東宝の意向で『空飛ぶ円盤 恐怖の襲撃』に変更された。同年こんな邦題のアメリカ映画が先んじて公開されている。ストップモーション・アニメの大御所、レイ・ハリーハウゼンが特撮を担当した『世紀の謎 空飛ぶ円盤地球を襲撃す』。……タイトルからして似ている(笑)。内容も、怪光線を発する円盤とロボット、宇宙人のメッセージを解読、国会議事堂を狙う、地球の軍隊に存在しない架空の兵器で円盤を撃退するなど共通点が多い。よって当時の映画評論家達の評価は概ね「アメリカ作品の二番煎じ」「特撮がお粗末」、果ては「幼児以下」(言い過ぎ!)とまでこき下ろした。しかしそんな酷評は、当時のSF作品に対する理解のなさから来ているのでは? 今や世界的に評価が高い『ゴジラ』さえも、当時はゲテモノ扱いしていた評論家も多かった。正当な評価は観てからだ!

 でも観られないって? ここで朗報! 実は2010年にフィルムが突如ヤフオクに出品され、210万円で落札されたことはマニアの間で話題になっていた。現在、そのフィルムが最新デジタル技術で修復され、ソフト化へ向けて作業中とのこと。作品がリリースされる日を待とうではないか!

(天野ミチヒロ)

※イメージ画像:「Thinkstock」より

あわせて読みたい

TOCANAの記事をもっと見る 2016年5月15日のびっくり記事
この記事にコメントする

\ みんなに教えてあげよう! /

トピックス

今日の主要ニュース 国内の主要ニュース 海外の主要ニュース 芸能の主要ニュース スポーツの主要ニュース トレンドの主要ニュース おもしろの主要ニュース コラムの主要ニュース 特集・インタビューの主要ニュース

びっくりニュースアクセスランキング

びっくりランキングをもっと見る

コメントランキング

コメントランキングをもっと見る

新着キーワード一覧

このカテゴリーについて

世界のびっくり事件や仰天する出来事などついつい気になる情報をお届け中。

通知(Web Push)について

Web Pushは、エキサイトニュースを開いていない状態でも、事件事故などの速報ニュースや読まれている芸能トピックなど、関心の高い話題をお届けする機能です。 登録方法や通知を解除する方法はこちら