
ロンドンにあるローマ時代の墓地から、22体の人骨が発掘された。それらを分析したところ、その中の2体の骨は何と中国人らしい。マルコポーロがアジア文化を初めて西欧に持ち込んだといわれていたが、この発見によれば、それよりもはるか1000年も前に古代ローマには中国人が住んでいたことを示しているのだ。
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■古代ローマ帝国と漢王朝
古代ローマ帝国と漢王朝は8000キロ以上離れた場所に存在していたが、共に強力な古代帝国であった。エジプトを制圧したローマの征服者は、中国との交易が盛んな様子を目の当たりにした。その後も漢王朝は、かの有名なシルクロードを使い、絹、スパイス、その他の贅沢品を西洋に送り、裕福なローマ人たちを喜ばせていた。
ローマ人にとってその時代の中国は東に位置する神秘的な文明、かつ競争相手であり、中国から来る絹は高く評価されていた(ローマ帝国の政治家でもあった哲人セネカは、中国から来る絹は女性の良識を壊すと批判的であったらしい)。一方、中国人はローマ帝国の「背の高い気取った人々」に強い好奇心を持っていたという。
■英国:ロンディニウム
このように2つの帝国間には明らかな結びつきがあったにもかかわらず、今まで見つかったアジア系の人骨はイタリアで発掘された成人男性の1体だけであった。
しかし今回、ロンドン博物館の研究者たちが古代ローマ時代のロンディニウム(Londinium:ローマ人が紀元後1世紀頃に造った交通の要所でロンドンの原型となった)の墓地でアジア系の人骨を2体発掘した。
また同墓地からは22個の頭蓋骨も発掘され、非常に興味深い可能性が示されている。米ミシガン州立大学の法医学専門家の分析によれば、少なくとも4つの頭蓋骨がアフリカから、 2つはアジアから来た人物のものであることがわかったのだ。またアイソトープ同位体分析を行った結果では、さらに5つの頭蓋骨が地中海から来ていることも解明したという。
この結果は、ロンドン郊外からテムズ川の南にわたる地域には多くの移民がいたことを示している。これはおそらく中国からの訪問者がこれらの地域に定住し、また彼らがブリタンニア(古代ローマが現在のイギリス南部に設置した属州)の中心で交易業を始めた可能性を指すともいう。
この発掘研究を率いるロンドン博物館の考古学者レベッカ・レッドファーン博士は、「Journal of Archaeological Science」に寄稿した記事の中で、彼らがどうしてロンドンで死んだのかは不明であるが、以前考えられていたよりも多くの移民がヨーロッパにいたことは確かだと書いている。また博士はその時代インドと中国、そしてインドとローマの間には奴隷貿易があり、墓地で発掘された多くの移民は奴隷、もしくは奴隷の子孫であることが考えられるとも付け加えた。
■古代カルタゴの工芸品がロンドンの墓地で発掘される
研究者たちは、それらの人骨のDNA解析が人種的ルーツ解明、そしてさらに深い知識をもたらすことに期待している。例えばさらに詳しい解析をすれば、彼らが遠い土地から到着したばかりだったのか、あるいは奴隷としてイギリスに連れてこられた人の子孫で、その土地で生まれ育った人間だったのかがわかるという。
その一例として同墓地で発掘された1人の十代の少女がいる。彼女はヒョウの形に彫った象牙の折り畳みナイフと共に墓地で埋葬されていた。これに似たナイフはカルタゴ(ローマに滅ぼされたアフリカ北岸の古代都市国家)で見つかっていて、彼女の歯のアイソトープ分析によると、この少女は北アフリカで育ち、その後ロンドンに来た(連れてこられた?)ことがわかった。
DNAテストによれば、この少女は青い目で南東ヨーロッパとローマ帝国の端にあったユーラシア大陸にさかのぼる母系祖先を持っていた事が明らかになっている。考古学者は、彼女はローマ帝国とカルタゴ間にあった多くの戦争で奴隷になったのかもしれないと推測する。この少女が生きていた時代のローマ帝国は、まだ二分される前で繁栄の頂点にあったのだ。
ローマの古代墓地で見つかった中国人は、いったいどうやってローマ帝国に行きついたのだろうか? もしかしたら彼らは最古の貿易商だったのかもしれない。さらに詳しい解析結果が待ち望まれる。
(文=三橋ココ)
※イメージ画像:「Thinkstock」より
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