ドイツ人たちは縄文タトゥーをどう見たか? カウンター視点の国際芸術祭「ドクメンタ14」&ドイツで開催された『縄文族 JOMON TRIBE』展の顛末

ドイツ人たちは縄文タトゥーをどう見たか? カウンター視点の国際芸術祭「ドクメンタ14」&ドイツで開催された『縄文族 JOMON TRIBE』展の顛末

■今年は、10年に1度の現代美術スペシャルイヤー

 今年6月、オキュパイ・スクールのレギュラー講師陣によるヨーロッパ遠征合宿を決行した。2017年は、5年に一度のドクメンタ、2年に一度のヴェネチア・ビエンナーレが同時期開催される10年に一度のスペシャルイヤー。そんなタイミングで、ドイツ・フランクフルトで大島托&ケロッピー前田の『縄文族 JOMON TRIBE』展、カッセルでのサテライト『縄文族』展示&オキュパイ・スクール『一万年前/一万年後』を開催した。

 「ドクメンタ14」レポート(前編)に続き、伝説の雑誌『BURST』などで世界のカウンターカルチャーを発信してきた私ケロッピー前田が、ここに自身の展示報告も含めてレポートする。

【その他の画像はコチラ→http://tocana.jp/2017/08/post_14142.html】

 カッセル市内30数ヶ所に及ぶドクメンタ展示会場の中には、会場自体が特徴的なところも多い。例えば、地下鉄駅廃墟「クルトゥーアバーンホーフ」や郵便局跡地「ノイエ・ノイエ・ガレリエ」にドクメンタらしさを感じてやまない。どこまで作品なのか、作品そのものが廃墟に馴染んでしまって境界線がわからなくなってしまうところが鑑賞者を試してくる。膨大な数のトナカイの頭骨をカーテン状に吊るすマレット・アンネ・サラの作品は、北欧の先住民サーミ族がノルウェー政府にトナカイ飼いの頭数を制限されたことに抗議するため、膨大な頭骨を積み上げた事件を参照し、トナカイ飼いの是非を巡る裁判の記録などと共に展示している。そこで際立つのは、実際の事件を切り取るドキュメンタリスト的な鋭い眼差しなのである。


■佐川一政のドキュメンタリー

 もうひとつ注目すべき作品としては、元豆腐工場「トーフファブリック」で上映されていたヴェレナ・パラヴェルとルーシャン・キャステーヌ=テイラーによる《共生》と題された佐川一政のドキュメンタリーがある。この事件は、1981年パリへ留学していた佐川一政が友人のオランダ人女性を殺害死姦し、その肉を食べたというもの。佐川は現在、脳梗塞で寝たきりとなっているが、実弟がその世話をしている。現在のカラー映像と子供時代の無邪気な二人のモノクロ映像との対比が言い知れぬ良心の動揺を呼び起こすのである。こんな特異な作品を観れるのも海外の芸術祭ならでは、そこで許容されている表現の幅の広さには衝撃を受けずにはおれない。


■「縄文時代にタトゥーがあったのか?」ドイツでディスカッション

 さて、今回のドイツ滞在は、私にとってはドクメンタのみならず、フランクフルトの美術大学HfGオッフェンバッハ校での『縄文族 JOMON TRIBE』展、さらにはカッセルでのサテライト展示とオキュパイ・スクール『一万年前/一万年後』というディスカッションイベント開催という濃厚なものとなった。
 
『縄文族 JOMON TRIBE』とは、私、ケロッピーがタトゥーアーティストの大島托とコラボレーションして、「縄文時代にタトゥーがあったのか?」という問いに実践的に回答を試みようというアートプロジェクトである。そして、今回のHfGオッフェンバッハ校での展示では、同校のヴェルナー・ロルケ教授のプロデュースにより、ドイツ人ジャーナリストのオリバー・ベッカーによる南スーダンの顔面スカリフィケーション(瘢痕)の写真作品とのカップリング展示となった。

 オリバーは、南スーダンにすでに数回訪れており、この地域で顕著になっている顔面の部族的なスカリフィケーションの復活に注目して、綿密な取材を行っている。長引く内戦により無政府状態となっている南スーダンでは、狭い地域に複数の部族集団がせめぎ合っており、大量殺戮事件が日常と化している。そんな状況下でそれぞれの部族集団が固有の顔面スカーを施すことで仲間意識を高めており、同時に部族抗争も激しさを増している。オリバーもあまりの治安の悪さゆえ、虐殺事件が起こった村にヘリコプターで直行し、現地調査を行なったのち、すぐに逃げ帰るような状況だったという。顔面に施された生傷の生々しさ以上に、彼らの目つきや表情に底知れぬ険しさを感じる。

 一方、『縄文族』は、縄文タトゥーの復興という理由から新しい文様タトゥーのスタイルを構築しようというもので、日本から縄文タトゥーで全身を飾る“縄文族”2人がフランクフルトに駆けつけ、展示会は大いに盛り上がった。

 では、展覧会に集まってくれたドイツ人たちは、縄文タトゥーをどう見たのか? 

 展覧会場であった美術大学HfGの生徒たちは、タトゥーへの興味から縄文時代にも豊かな文様文化が存在していたことを知って、「1万年前なんて、意識したことすらないほど古い」と驚きの声をあげていた。また、南スーダンの顔面スカーとも関連する社会的な視点からは、3.11以降の日本への危機感の現れが、縄文時代のタトゥーを自らの身体に引き受ける動機付けになっているのではないかという指摘もあった。

 そして、さらにカッセルである。「参加することに意義がある」という言葉があるが、開かれた国際芸術祭ともいえるカッセル・ドクメンタにおいて、無謀ながらも『縄文族』のサテライト展示やオキュパイ・スクールを自主開催した。それでもほどよく来場者も集まり、カッセル最後の夜を楽しく過ごした。

 ドイツは第二次大戦後、ナチスやホロコーストに対する重い責任を背負いながらも、社会的なアートという方向性を積極的に追い求めてきた。その成果のひとつが国際芸術祭ドクメンタなのである。そして、そこには新しいアートや表現を柔軟に許容する未来に通じるひとつの道筋があるということを実感できたのである。
(写真・文 ケロッピー前田)

※Oliver Becker, Werner Lorke, Ryoichi Keroppy Maeda, Taku Oshima “JOMON TRIBE & SOUTH SUDAN”@HfG Offenbach

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