
サブカル界の伝説的「鬼畜系・電波系ライター」こと村崎百郎の名前を覚えているだろうか。1995年のデビュー以降、村崎氏は「すかしきった日本の文化を下品のどん底に叩き堕とす」ためと称し“卑怯&卑劣”をモットーとした作品を次々と書き上げ、世紀末の鬼畜・悪趣味ブームを生み出した。2010年に精神異常者に刺殺されるまで、彼が「ゴミ漁り」をライフワークとしていた逸話はあまりにも有名だ。そんな男の妻であり、公私におけるパートナーこそ、「レディコミ界の女王」の異名を取る超大物漫画家・森園みるく氏である(念のため、現在の森園氏はゴミ漁りをしていない)。
精力的な創作活動を続ける森園氏だが、今年「めちゃコミック」をはじめとする電子書籍サイトより配信が開始した漫画『私の夫はある日突然殺された』が各方面で話題沸騰中だ。村崎氏の死に関する実録エッセイである同書によると、彼は生まれつき“電波”を受信する特異な霊体質だったが、小学5年生の夏休みに海で溺れかけた際に宇宙の始まりを目撃し、その神秘体験を通して身体に侵入した何者かのメッセージを受け取り始めた。この“何者か”こそ、鬼畜活動に邁進する使命を授けた存在なのだという。そして、なんと村崎氏は、自身の死さえ予知していたというのだ! 事の真相に迫るため、筆者は森園みるく氏にインタビューを敢行した。そこで明らかになった怒涛の“霊感エピソード”とは――!?
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■予知通りに訪れた死
――森園先生、よろしくお願いいたします。早速ですが、村崎さんは本当に死を予知していたのですか?
森園みるく氏(以下、森園) 主人は、殺された年に何度か「俺は精神病者に殺されるから、ごめんね」と言っていましたね。そして、「世界は終わるが、それは俺にとっての世界で、他の人にとっての世界は終わらない」と謎めいたことも……。特に脅迫状がきたり、前兆があった訳ではないのだけど、予知通りに2010年7月23日に、私が食事に出掛けている間に殺されたんです(※)。しかも、主人が最後に仕事で使っていたPCがありまして、そこには<ミズの中からさざ波を立てて移動しながら浮かび上がる十字架のイエス像>という文章が残されていました。
※ 村崎氏は、読者を名乗る32歳の男に自宅で48カ所を刺された。容疑者は自ら警察に通報して逮捕されたが、精神鑑定の結果「統合失調症」と診断され不起訴となった。
――それは、まさか電波を受け取っていたということですか? 実際のところ、どの程度の霊感体質だったのでしょう?
森園 他人の妄想や悪意を電波で受け取っていたようです。だから日頃から「もらわないように」と外出する時はいつもマスクをつけて、メディアに出る時は紫色や黒の仮面(片目部分に穴が開いている)を被っていましたね。
■殴る蹴るの緊急除霊も!?
――お二人でいらっしゃる時に心霊体験に出くわすことも多かったのですか?
森園 そうですね。一番スゴかったのは、初めて主人がお盆に私の実家の山口県周南市に来た時のことです。戦争末期に開発され、敵の空母に人間もろとも体当りする人間魚雷「回天」の基地として有名な場所で、近辺に防空壕も多いから「トンネル内に霊が出る」とか、「周南市の離島に住む人はみんな心霊体験している」という噂もあるほどなんですが、探索中に主人は完全に憑依されました。いきなり「ウォーーー!!」と叫びだして、ろれつが回らなくなり、訳のわからない奇声を発して……。私にはユリアさん(筆者)みたいに除霊はできないし、とにかく途方に暮れてしまって、どうしようもないからもう主人を殴る蹴るを繰り返したら、ようやく正気に戻ったんです。「俺、憑依されてたんだね」って。
――お~、先生、勇ましい!(笑) それにしても凄まじい体験ですね。
森園 でも、そんな事がしょっちゅうですよ。一緒に伊勢神宮に参拝した時なんか、二人とも一瞬頭が真っ白になり記憶が飛ぶという体験をしました。しかもその時、風が吹いている訳でもないのに、拝殿の扉が空いたんです。
それから、「ゼロ磁場」で有名な長野のパワースポット、分杭峠(ぶんぐいとうげ)に行った時も、私は何も感じなかったのですが主人は何かを感じ取っていたらしく、ピンクのオーブ写真が撮れました。しかも、その後から私が撮る写真にも時々ピンクのオーブが写るようになって。以前、「まぼろし博覧会」で村崎百郎館を作っている時にもオーブが撮れましたよ(※1)。
私自身はそこまで霊感体質ではないのですが、とにかく主人といる時は色々体験しましたね。「霊感体質の人といると、自身も霊感体質になる」ってよくいいますが……。
※1 「まぼろし博覧会」とは、静岡県伊東市の伊豆高原にあるニューカルチャーや怪しげなオカルト系の展示物で知られるアバンギャルドなテーマパークである。森園氏は、まぼろし博覧会の村崎百郎館の企画・運営に携わっており、生前に村崎氏が集めたゴミ(お宝)の数々や魔術儀式で用いた道具などが展示されている。近年では、海外メディアからの注目も集めており、ドイツやチェコから取材陣も訪れたという。ちなみに、まぼろし博覧会の名物館長である女装コスプレの男性“セーラちゃん”も大人気だ。
――そういえば、ご夫婦で幽体離脱もされていたとか?
森園 これも主人はしょっちゅうですね。私は、主人が持っていたモンロー研究所(※2)のCDを聴いて幽体離脱の訓練をしたら、半覚醒状態の明晰夢で宇宙が見えたことがあります。
※2 モンロー研究所は、人間の意識の探究を主要な活動とする、非営利の教育・研究機関である。意識状態に顕著な影響をもたらす「ヘミシンク」という音響技術を用いて訓練することで、通常を超越した状態を体験することができるという。
■膨大かつ貴重な魔術資料、今は大学に
――ところで、村崎さんは魔術結社にも入っていたそうですね?
森園 19世紀のイギリスに創設された「黄金の夜明け団」系列の「魔術の学院 I∴O∴S∴」という魔術団体に20代の頃から入っていました。私には難しくて発音できない“魔術ネーム”も持っていましたね。主人と一緒に魔術団体のライブに行ったことがあるのですが、魔術師の方がフォークソングを歌っていて驚きましたよ。
――少し詳細を調べてみましたが、そこで行われている魔術儀式に関しては「黄金の夜明け団」を継承した伝統的なものですね。「I∴O∴S∴」の会員は、春分の日・秋分の日に自室にこもり、瞑想したり呪文を唱えて、ソロモンの神殿とカバラ(生命の木)をイメージした儀式を行っているようです。
森園 主人は魔術や陰謀の研究をしていて、占星術研究家の鏡リュウジさんと対談したことがあります。私も鏡さんにお会いしたことがありますが、鏡さんの方はユング心理学を学ばれた研究者っぽい感じ、一方の主人は直感型でしたね。
当時、主人と住んでいた8畳の一室とは別に倉庫として借りていたアパートは、魔術・陰謀・スピリチュアル・死後の世界といった本で埋め尽くされていました。こんな状態で亡くなってしまったから、どうしようか困って、一部を明治大学の図書館に寄贈したんです。
――足の踏み場もないほどの魔術書……! それは確かに日常生活に支障をきたしそうですね(笑)。
■パソコン画面に現れた恐怖の目
――村崎さんが亡くなってから、森園先生は心霊体験をされましたか?
森園 あの事件後にも不可解な心霊現象が何度も起こっています。まぼろし博覧会近くのペンションと、富士山周りの神社を巡った際に泊まった旅館で、それぞれ一度ずつ朝7時にいきなりTVのスイッチが入ったことがあります。
自宅でも毎日のようにラップ音が鳴ったり、足音が聞こえたり、水道の蛇口から突然水が流れ出たり……。睡眠中の半覚醒状態の時、頭のチャクラからゴオオーーッという凄い音とともに光が飛び込んできて、人の声が聞こえたことも何回かあります。知人の霊能者に聞いたら、主人ではなくて別の人からの念だった可能性もあると言ってましたが、私はまったく恐い気がしなかったし、なんの違和感もなかったので、やはり主人ではないかと。
それが確信に変わったのは、七回忌の時です。2016年7月23日ですが、主人が生前使っていたノートパソコンを供養に出そうと数年ぶりに開いたら、目のような模様が浮かんだんですよ。見て下さい。『私の夫はある日突然殺された』の執筆依頼がきたのは、その直後のことです。
――!!! こ、これは……!! 実に恐ろしい現象です。頭から離れないうえ身震いも止まらなくなってきたので、今日はここで終わりにさせて下さい。あ、ありがとうございましたっ!
画面に映ったおどろおどろしい模様は、確かに村崎氏の一つ目のように見える。彼のホームページのトップに掲載されている似顔絵と、驚くべき一致を見せている。そして生前の村崎氏は、前述のようにメディア出演の際、常に仮面の下から片目だけを覗かせていたのだ……! やはりこれは、「『私の夫はある日突然殺された』を執筆するように」という村崎氏からのメッセージだったのだろうか?
ちなみに魔女である筆者は以前、森園氏の自宅で「生き人形による心霊現象が発生している」という話を聞き除霊に出向いたことがあるが、確かに今でも村崎氏の念は至るところに残っているようだった。「すかしきった日本の文化を下品のどん底に叩き堕とす」という村崎氏の使命は、まだ終わっていないのかもしれない。森園みるく氏、そして村崎百郎氏の霊(?)の活躍に今後も期待したい。
(取材・文=深月ユリア)