世の中を便利にする技術の進歩はすばらしいが、同時に思いもかけなかったような問題を投げかけてくる。「子どもにいつからインターネットをやらせるべきか?」「スマートフォンを何歳から使わせるべきか?」これらは我々が幼かったころには存在しなかった問題であり、今の親たちは試行錯誤しながら手探りでこの難しい課題に取り組まなければならない。最近、イギリスの社会学者が「子どもにインターネットを使わせないのは児童虐待にあたる」と主張し、話題となっている。
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■子どもにインターネットを使わせないのは虐待?
今月18日付の英「Daily Mail」によれば、4歳の子どもにインターネットへのアクセスを禁止するのは幼児虐待にあたると主張しているのは、英アストン大学の社会学者エリス・カッシュモア名誉教授である。子どもをインターネットから遮断することは、子ども同士のコミュニケーションを妨げ、世界について学ぶことを疎外することであり、オンラインに潜む危険から守れるというメリットよりもずっと害は大きいというのである。
「(インターネットを奪うことは)間違いなく子どもたちに長期的な悪影響を与えます。それは児童虐待も同然です」(カッシュモア氏)
カッシュモア氏は英ティーズサイド大学などとの共同研究で2000人のインターネットユーザーを調査し、過去の研究も合わせて分析した。そして、現代の社会がPCやスマホのスクリーンとインターネットの結合によって完全に変化し、それらの技術が新たな可能性の世界を開いているのだと指摘した上で、カッシュモア氏は4歳からはインターネットへの無制限のアクセスを許可するべきと主張している。
英「Independent」でのインタビューの中で、カッシュモア氏は子どもたちが友人と連絡を取ったり、ゲームをしたり、物事を調べたりするためなど様々な用途でデバイスを使いこなしていることに触れ、次のように述べている。
「オフラインでの子どものこのような活動を親が阻害すれば、ある種の虐待であると訴えられるでしょう。彼らは効果的に子どもの発達を妨げているのですから」
■スクリーンはすでに世界の一部
これまで、インターネットやスマートフォンの過度な利用が及ぼす注意力の低下やうつ病などの精神的なリスクが注目されてきた。しかしカッシュモア氏はこれらのテクノロジーはすでに我々の生活の一部となっており、子ども達はそのような世界の中でどう生きていくか幼いうちから学ぶべきだと訴える。
2016年に内閣府が行った調査によれば、小学生でさえ一日平均93.4分、高校生に至っては207.3分をスマートフォンやPCのスクリーンに向かって費やしているという。インターネットはすでに子どもの生活の一部であるといって差し支えはないだろう。
気になるのはインターネット上に溢れる、子どもたちを危険にさらす様々な悪意である。だが、カッシュモア氏はそのリスクは実際より誇張されていると指摘し、それらのリスクから守るためにインターネットの利用を禁じても、かえって害の方が大きいとする。テクノロジーを使えないことで周囲からの嘲笑やいじめにさらされるリスクは増し、自尊心や自信といったメンタル面にも影響するというのである。子ども達は大人が思っている以上に危険から身を守る術を知っており、潜在的な危険には適切な教育で対応するべきというのがカッシュモア氏の主張である。
インターネットのなかった時代を知っている世代には、オンラインとオフラインを別物と考える感覚が一部残っている。しかし、スマートフォンの普及と共に、オンラインとオフライン、二つの世界はすでに融合したといっても過言ではないだろう。そんな世界が生まれた頃から当たり前の世代に、幼いことを理由にデバイスやインターネットの利用を制限することは、カッシュモア氏が主張するようにデメリットのほうが大きいのかもしれない。
とはいえ、以前トカナでも紹介した「エルサゲート」のように、ネット上には大人でもぞっとするような悪意が確かに潜んでいる。幼い子どもを育てている人たちにとって、テクノロジーの利用は実に頭の痛い問題であろう。
(編集部)
※イメージ画像は、「Thinkstock」より
【衝撃】「4歳の幼児にインターネットを禁止することは児童虐待」英学者が主張して話題! 教育の常識が覆る!
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