「好」という字は、女性がひざまづく姿を描いた「女」と、幼子の姿を描いた「子」という文字を組み合わせた会意文字。
甲骨文字を見ると、いかにも母親らしい女性が、子どもを抱きしめている様子が描かれています。
つまり「好き」という漢字はもともと、母親が子供を可愛がることを表したもの。
さらに、母親の子どもに対する愛情を示すことから、「うつくしい、よい」という意味や、親子の関係を示して「したしい」という意味をもつようになったのです。
生まれたばかりの赤ん坊が最初に触れる母親の肌。
お乳を含みながら、やさしいぬくもりを感じます。
突然放り出された未知の世界への恐怖を逃れ、ここちよい胎内で感じたのと同じやすらぎを得る赤ん坊。
子どもは、心身ともに自分を満たし、守ろうとしてくれるその相手を、理屈ぬきに、本能のまま好きになるのです。
それはやがて、親に対する信頼感となり、いつしか彼らは自信をもって立ちあがり、歩き出してゆきます。
それは、動物たちも同じこと。
お乳を与えるその合間に、赤ん坊をひたすらなめるパンダ。
お腹の袋に入れて歩くカンガルー、抱きかかえたまま木々を飛び回るサル。
彼らもまた、一定の期間を密着して過ごして固い絆を育んだのち、愛情に裏打ちされた厳しさで、生きてゆくための知恵と技術を子どもに伝えてゆくといいます。