7月16日(水)のテーマは「愛国心って何? 誇れる国とはどんな国か? アメリカZ世代が討論」。ラボのメンバーが“愛国心”をテーマにディスカッションをおこないました。
※写真はイメージです
◆愛国心を抱くアメリカ人が減少中
7月4日は、アメリカ独立記念日の祝日でした。祝日のたびに星条旗を掲げている……スポーツ観戦時に「USA! USA!」と大声で国名を叫んで応援する……。メディアを通じてこうしたアメリカ人の姿を見ると、日本人の目には「愛国心が強い国民が多い」という印象を受けることもあるかもしれません。
ところが、独立記念日に合わせて発表された世論調査が話題を呼んでいます。アメリカ人の愛国心に関する調査結果が発表され、アメリカ人の68%は「アメリカ人であることを誇りに思う」と答えています。しかし1年前には83%が「誇りに思う」と回答しており、1年で大きく下がったことがわかります。
また30歳未満の成人で「自分は非常に愛国的である」と考えた人はわずか16%、65歳以上の53%に比べて大きな差があることもわかりました。
ラボのメンバーは、独立記念日や愛国心についてどのように考えているのでしょうか。インタビューをおこないました。
ノエ:よくわからないけど、僕は7月4日に「アメリカ人として誇りを感じる」みたいな気持ちを一度も持ったことがないかも。子どものときからずっと。「国に誇り」みたいなものを感じたことがないし、7月4日って言ったらバーベキューをして花火を見て、ただのイベントって感じで、アメリカのことを考える日って感じじゃなかったな。だから「アメリカ最高!」みたいなテンションの人を見ると、いつもすごく違和感があった。
ミクア:本当にそんな感じだよね。バーベキューをするただの休みの日ってだけ。
ノエ:小学校4年生とか5年生? いや、もっと前の3年生ぐらいのときかな? 朝、みんなで「アメリカの忠誠の誓い」を言わされたことがあってね。それもなんか変な感じがしたから、僕はやっていなかったけど。
メアリー:え、マジ? 子どもの頃からそんな意識が高かったんだ(笑)。私は「はいはい、やっとこ」って感じで、毎朝「忠誠の誓い」をやっていたよ、小学校のときはね。
アニー:私はあるときからもう「めんどくさ~」ってなって、口パクでごまかしたり、めっちゃ適当にやっていたよ。
全員が、独立記念日は“ただの祝日の1つ”という認識で、特別に愛国心を感じるようなイベントではないと回答しました。

(左から)ミクア、シェリー、ヒカル、ノエ、シャンシャン、メアリー/©NY-Future-Lab
◆“現状のアメリカ”では愛国心を抱くのは難しい?
若ければ若いほど、いわゆる愛国心が薄れていくのにはさまざまな原因がありますが、アメリカZ世代ならではの理由には、以下のような理由が挙げられるのかもしれません。
メアリー:私はアメリカ人だけどロシア系の血が混じっているんだよね。正直、アメリカ人であることよりも、ロシアにルーツがあることのほうがちょっと誇らしいって感じかな。でもそれも「国として誇りに思う」っていうより、「アメリカだけじゃない文化を持っていて嬉しい」って感覚。うまく言えないけど……。
テオ:僕たちってみんなさまざまなルーツがあって、「いかにもアメリカ人」って感じじゃないから、アメリカそのものに対する強い愛着とかをあまり感じないのかもね。
アニー:私の場合は親が移民で、本国にいられなくて仕方なく逃げてきた人たちだからね。だから「アメリカって素晴らしい!」みたいな感じで育てられたわけじゃないんだよね。そのせいで「ナショナリズム」的な感情はあまり持ったことがないかな。
今回の座談会に参加したアメリカ国籍の5人は、親が日系、ヨーロッパ系、中国系などさまざまなルーツを持っています。そのため、自分たちはいわゆる「典型的なアメリカ人」とはちょっと違う、という感覚を持っているようです。
実際に、アメリカZ世代は人種民族の多様化が進み、ほぼ半数近くはラボのメンバーたちと同様に、いわゆる「アメリカの白人」ではありません。そういう意味でも、かつてのいわゆる「盲目的な愛国心」は薄れ、もっと違う視点や批判的な見方でアメリカという国を見ていると言っていいでしょう。
さらに、彼らの愛国心が薄れていくのは、現在のアメリカの政治や社会状況とも大きな関係があります。
ミクア:年齢を重ねるごとに、特に今アメリカで何が起きているかを知れば知るほど、アメリカ人であることに対する誇りみたいなものは確実に薄れていったと思う。
アニー:最近のアメリカの状況を見ていると、この国に誇りを持つのって本当に難しいなと思う。上にいる人たちの判断とか、いろいろ希望をなくすようなことばかりで……。もちろん「よくなってほしい」という願いはあるけど、今の時点では、ちょっと……って感じかな。
メアリー:ヨーロッパの人たちに「自分の国に誇りはある?」って聞くと、けっこう「ある」って答える人が多い気がするんだ。その理由も、「国がちゃんと社会保障とかをいろいろ提供してくれるから、自然と誇りに思える」みたいな感じなんだよね。
メンバーの口から漏れ出たのは、「アメリカで今起きていることを知れば知るほど、愛国心が薄れていく」という意見。「移民の国、人種のるつぼ」と言われたアメリカは今、政府による多様性の否定や移民の強制送還で、1年前とはまったく別の国のように感じるという人も少なくありません。
また、先日可決されたばかりの巨大予算案では、富裕層優遇税制や軍事予算拡大と同時に、アメリカ史上最大の社会保障費の大幅削減が含まれ、今後1,700万人もの人が医療保険を失うと推定されています。
シェリーは「自然に愛せる、誇りに思える国というのは、強い経済力や軍事力を誇示する国ではなく、社会保障などを住む人にしっかり提供してくれる国であり、多様な人が平和に生活できる場所であること。これは日本も含めて世界共通ではないでしょうか」と語り、座談会の内容を総括しました。
<番組概要>
番組名:NY Future Lab
放送日時:毎週水曜日18:40~18:55放送
出演:シェリーめぐみ
番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/nyfutureweb
特設サイト:https://ny-future-lab.com/