
【旭堂南鷹の競馬講談したい馬】関西の競馬ファンには、暗黒の時代があった。今の競馬ファンには想像できないだろうが、大レースのほとんどは関東馬がかっさらっていった。
その時代に希望の光となった馬が、テンポイントであり、サッカーボーイだ。阪神3歳Sの衝撃的な勝ち方が、全国の競馬ファンを驚かせた。しかし、僕たち関西人は、そのひとつ前、もみじ賞でタダ者ではないことを知った。
僕はテンポイントをリアルタイムでは知らない。だけど、サッカーボーイがもみじ賞を勝った時、暗黒の地下壕に差し込む光を見たような感動があった。おそらくは、テンポイントにも同等以上の希望を、ファンは抱いたと想像できる。
レース名が現在のもみじSに変わってからもビワハヤヒデ、フジキセキなど、名馬を輩出している。2年前のもみじSを勝ったダノンスマッシュも、相当な勝ち方だった。
ただ、今はあの時代とは真逆の西高東低が長く続き、馬券は東西全レース購入可能で、東西の垣根は低くなった。そのせいで情報は共有されて、強い勝ち方をすれば、その名はまたたく間に全国に知れ渡る。そうした利便性が進歩する陰で、強い馬への神秘性はうせつつある。
ダノンスマッシュのもみじSは、神秘的輝きを隠し持った競馬だった。僕はあの名馬たちを思い浮かべた。だが、一般的にあまり印象に残っていないのは、そうした時代背景があるのだろう。
「人の指示に従順で、操作性の高いところは父譲りだね」