広島・赤松引退 胃がん治療直後にV祝杯の優しさ

広島・赤松引退 胃がん治療直後にV祝杯の優しさ
胴上げされる赤松

【楊枝秀基のワッショイ!見聞録】「いやいや、ホンマに大丈夫なの? ウーロン茶にしときなよ。病人にお酒は出せないよ」。僕は自分の耳を疑い、思わず赤松に聞き返した。

 2017年、9月18日の出来事だった。広島は阪神戦(甲子園)で勝利を収め連覇を達成。胴上げの輪の中には、胃がんの治療を終えて間もない赤松も参加していた。そこから神戸市内のホテルに戻りビールかけ、優勝会見を経て三宮の街でおのおの祝勝会が始まった。

 赤松のグループが集合したのはスポーツダイニング。私事だが、この店は当欄を担当する筆者の経営する店だった。そこでの赤松のドリンクオーダーが「麦焼酎の水割り」。病み上がり、それもがんと格闘してきた男が飲酒を希望したため、全力で止めに入ったのだった。

「何を言ってるんですか。リーグ連覇の夜ですよ。体も大丈夫だから、グラウンドにも戻ってきているんです。野球選手の体力をなめたらダメですよ。それに今日は松っちゃん(広島・松山竜平外野手)の誕生日なんで。お酒で乾杯したいんです」

 当時はそう言ってグラスのお酒を飲み干していた。だが、それが強がりだったことが後になってわかった。今季の開幕直前、赤松と昔話に花を咲かせたときにはこう証言していた。

「実はあの時は相当に無理してました。かなりしんどかったですよ。でも、自分に気を使わせて、ムードを壊したくなかった」。どこまでも優しい男だ。

 引退試合当日、練習終了後に取材に応じた際には「とにかくみんなの足を引っ張りたくない。僕には最後の試合でも、みんなには本当に大事な一戦ですから」と控えめに話した赤松。試合前には2人の息子と始球式を行いスタンドから大きな拍手を受けた。試合では9回に長野に代わって中堅守備で登場。守備機会はなく終わったが笑顔でベンチへと戻ると、ナインが拍手で迎えた。引退セレモニーでは「僕は幸せものです。成績も残せていないのに」と感謝した。

 がんを乗り越えグラウンドに戻ったスーパーサブの存在は、いつまでもファンの心に残り続けるだろう。

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