
世界最高峰の仏GI第98回凱旋門賞(10月6日=パリロンシャン競馬場・芝2400メートル)がいよいよ6日後に迫った。今年は日本からキセキ、フィエールマン、ブラストワンピースの3頭が参戦予定だが、注目は決戦の地・フランスではなく、海を隔てた英国のニューマーケットを最終調整の地に選んだ2頭の関東馬だろう。史上初の凱旋門賞3連覇を狙う女帝エネイブル打倒の可能性の前に、現在までの〝常識〟と今回の戦略の本質に迫ってみたい。
日本のホースマンにとって凱旋門賞は“悲願”と言えるほどのビッグターゲットだが、海外遠征自体は珍しいものでなくなり、勝利という結果を得て凱旋してきた馬も相当数いる。しかし、それでも「正しい遠征スタイル」は確立しておらず、最も正解に近かったとされている1999年エルコンドルパサー(フランスで2→1→1着後の凱旋門賞で2着)のような長期滞在を選択する馬はほとんどない。現地で1戦もしくは前哨戦を使わない“ぶっつけ”の挑戦が現在のスタンダードだ。
今年の6月から英国のニューマーケットで調整を開始。英国遠征では2戦目、ドバイ遠征から数えて4戦目の挑戦で初の海外GI(ナッソーS)を手にしたディアドラ(牝5・橋田)は、近年は見かけなかった長期滞在組。この結果を受けて「現地での長期滞在こそが正解」のような論調が湧き起こったが、当の橋田調教師はこう話す。
「英国の競馬場は日本のそれとは全く違うものであり、その場所に対応するために長期滞在が必要と考えた。実際、英国の調教場で時間をかけ、調教メニューに変化を加えながら調整したことで馬体も変化していったからね。短期間の参戦では今回の結果は得られなかったと思います」