
中止か、開催か、はたまた再延期か――。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今年夏の東京五輪開催をめぐって各界の関係者からさまざまな意見が噴出している。もはや収拾がつかない事態だが、仮に中止とするなら誰がどのような手順に添って決断を下すのか。その場合、誰が損害をかぶるのか? 立教大学法学部教授でスポーツ法に詳しい早川吉尚弁護士(52)に「法の見地」から五輪の行く末を占ってもらった。
いったい誰の意見が「正解」なのか。菅義偉首相(72)は20日に「準備を進める」と改めて開催への意欲を示し、国際オリンピック委員会(IOC)のセバスチャン・コー委員(64)も海外メディアに「中止にはならないと思う」と断言。一方で、2012年ロンドン大会の組織委員会副会長を務めたキース・ミルズ氏(70)は英BBCラジオで「(開催は)疑わしい。組織委には中止計画があるはず」と話すなど、意見が割れている。
この状況に、早川氏は「まず五輪開催の決定権はIOCにある。これが大前提。日本には何の決定権もないんです」と前置きした上で、中止に至る2つのケースを挙げた。まずは日本が〝ギブアップ〟した場合だ。
「五輪を主催するIOCに対し、日本は場所を提供する立場。だから、日本が開催できませんって言えば、場所を貸す契約義務を果たさないのだから当然、莫大な賠償金が発生します」
ここで言う「日本」とは政府、東京都、大会組織委を指すが、この3者が開催地断念をIOCに提案し、受け入れられた時点で賠償金支払いが決定。具体的な金額は開催都市契約に記されていないものの、早川氏によると少なくともIOCの重要な基盤となっている米テレビ局の放映権料(1大会約1200億円)を補填する金額が請求されるという。今回のような未曽有の事態でも「法律はそういうもの」と〝値引き〟はないようだ。