国枝栄調教師が警鐘を鳴らす「中央と地方の格差」「いびつな構造」

【美浦発トレセン秘話】「お前、コレを見てどう思う?」

 国枝栄調教師が得意のフレーズで語りかけてきたのは、全休明けの8日の美浦トレセン。指をさしているのは、競馬週刊誌にひっそりと載る地方競馬指定交流競走の厩舎成績だった。

「お、関西厩舎は随分と勝っているんですね」

 当方の感想があまりに的外れだったせいか、トレーナーはかぶりを振って「そういうことじゃない。JRA馬が総数119勝を挙げてることを聞いているんだ」と、いつになく真顔で返してきた。

 119勝。JRAの番組で換算すれば、この数字は、ほぼ開催10日分に相当する。師が懸念するのは、その分だけ割を食う形になった地方競馬関係者の立場だった。

「主催者は馬券が売れればいいってか? 俺ならやってられないけどな」

 興味深いデータがある。地方競馬における収得賞金リーディング第2位はJRAの村山明厩舎(3億535万円)。第3位荒山勝徳厩舎(大井)に1億円近くの差をつける堂々の数字だが、出走回数は後者262回に対して、わずか12回。確かに“やっていられない”格差ではある。

「まさに草刈り場。この状況で地方関係者が馬を集めるのは至難の業だろう。地方が衰退して困るのは自治体ではなく厩舎関係者、さらに売り手がなくなる日高の馬産地でね。馬産を思えば、農水省も規制と緩和のバランスを取る時期だぞ」

 サークル全体の発展を図るには、組織のピラミッド化が本来は理想と思えるが、残念ながら地方自治体を母体とするNARはJRAとは別物。さらにJRAには地方1着賞金に当たる出走手当があるのだから、中央在籍馬に余剰が、地方に過疎が出るのも必然の成り行きである。

「地方で勝つより、中央で負けたほうがお得ってか。年5万競走たる中央の在籍頭数は1万1000頭。平均すれば、年5走もできない計算だ。どの道、このいびつな構造を変えない限り、競馬全体が縮小化の一途だぞ」

 かつてのようにハイセイコー、オグリキャップといった“地方の雄”が時に出現してこそ、地方、中央ともに活性化するはずだが…。現在の交流戦をMLBに例えれば、1Aとメジャーのチームで一戦交えているようなもの。2A、3A不在の格差が埋まらない限り、業界は自らその首を絞めることにもなる。

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