五輪会場「海の森」 領土問題の今

 五輪会場をめぐる“もう一つの戦い”は今――。2020年の東京五輪・パラリンピックの会場見直し問題でカヌーとボート会場が「海の森水上競技場」に正式決定したことで、約40年にわたる懸案事項への注目が高まっている。小池百合子東京都知事(64)のおかげで全国的に有名になった会場だが、実は住所がないのだ! 会場一帯の中央防波堤埋立地について、大田区と江東区が帰属を主張する“領土問題”が続いている。

 東京都議会の2020年東京五輪・パラリンピックに向けた特別委員会が6日開かれ、国際オリンピック委員会(IOC)、大会組織委員会など4者のトップ級会合で決まった会場見直し問題について都が報告した。

 ボート、カヌー・スプリント会場「海の森水上競技場」と水泳会場「五輪水泳センター(アクアティクスセンター)」の新設が決定した一方、バレーボール会場は有明アリーナの新設か既存の横浜アリーナへの変更かが先送りになったことを説明した。

 都のオリンピック・パラリンピック準備局や大会組織委員会のホームページを見ると、「海の森――」の所在地は「江東区青海3丁目地先」となっている。だが、これは江東区という意味ではない。「海の森――」のある一帯は中央防波堤埋立地といい、内側と外側との2つからなる。1973年に内側の埋め立てが始まったころから帰属問題があり、実に43年の歴史がある大問題なのだ。

 江東区の主張の柱は埋め立て地がゴミ処分場となっており、江東区からアクセスできたことからゴミを運ぶトラックが大量に江東区を通過。それにより住民がゴミ問題という犠牲を強いられていたのだから、当然、江東区に帰属するというもの。

 江東区の港湾臨海部対策担当の職員は「それ以外にも地理的に密接であることから、これからも臨海地区の開発に地元として都と一体で貢献したい思いがあります」と話した。江東区と中央防波堤埋立地は青海から海底トンネル、若洲から東京ゲートブリッジが開通している。

 今のところ、中央防波堤埋立地は気軽に行けず、人も住んでいない。江東区は埋め立て地をどう活用するつもりなのか。

「江東区の開発を進める上で欠かせないエリアです。計画では『オアシスゾーン』として緑化など景観が優れたところとして開発していきたい。若洲の海浜公園と連携して回遊性の向上にも努めます。『海の森――』に決まったのもいいことだと思います。のちのちレガシーになるので」(前出の江東区職員)

 一方の大田区はどうか。大田区とは臨海トンネルでつながっている。

 大田区の企画経営部担当職員は「埋め立て地は今後、港湾機能の整備がされていきます。物流機能の拠点としての役割が期待されており、(大田区にある)羽田空港の空運機能がこれを支える。陸・海・空を結ぶ利活用が図られます。日本経済に大きな効果を生むでしょう」と意気込む。東京港もあり、人とモノの動きの連携を強化するという。

 世間的には「海の森――」は江東区のイメージがある。というのもメディアで「江東区青海3丁目地先」と説明されることが多いからだ。

 しかし、大田区も負けていない。最高裁の判例に地方公共団体の境界線決定の基準があるという。

「昔はどうだったかをよく見るべきだというものです。埋め立てる前の海を利用していたのは大田区民でした。この海でノリの養殖をしていたのです」(前出の大田区職員)

 ノリの養殖場を廃業するという犠牲を払った上で陸地化されたのだから、その土地はもともと利用していた大田区民のものだという理屈になる。

 また、「これまで『海の森――』について江東区と報道されることがありまして、キー局に間違っていると訂正を求めたこともあります。争いがある以上、『東京臨海部』という表現にすべきです」(前同)と表記にも気を使ってきたという。

 40年以上も決着がつかなかった帰属争いだが、今年に入って両区は6回も協議を重ねている。五輪・パラリンピックが開催される2020年がめどになっているが、決着方法は未定だ。

 周知の通り、有明やお台場など埋め立て地からなる東京臨海副都心は発展目覚ましい。中央防波堤埋立地も開発の余地がたっぷり。どちらの区も譲る気配はなく、長期化しそうだ。

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