
【安田記念(日曜=4日、東京芝1600メートル)美浦トレセン発秘話】先週の日本ダービーはレイデオロが名伯楽・藤沢和雄調教師に初栄冠をもたらす劇的V。その決着に至る道程は、極めてファンタジックな攻防に満ちていた。
最初に“魔法”をかけたのは、酸いも甘いも知る32年目のベテラン・横山典弘(マイスタイル)。ハナに立ち刻んだラップ(5ハロン通過63秒2)は、1週前のオークスより1秒5も遅い超スローペース。それは各ジョッキーの判断、決断力を狂わせるに十分なマジックだった。実際、皐月賞馬アルアインの松山弘平は「何もできずに終わった」と肩を落とした。
ゆえに、その呪縛を解いたルメールこそ勇敢だったと言えよう。14番手から5ハロン標手前で一気に動いて、金縛りにあうアルアインの前に位置する2番手へ。それはまさに相手の技を逆利用する“魔法の攻防”。騎手の技量を堪能させる「馬3・人7」の競馬は、ファンの記憶に深く残るものとなったはずである。
さて、春の東京GIシリーズも今週・安田記念で見納め。思えば、昨年のこの舞台こそ魔法が鮮やかに決まった一戦だった。
仕掛けたのはロゴタイプに騎乗した“東の魔術師”田辺裕信。マイルGIらしからぬ5ハロン通過59秒1の緩ペースには、怪物モーリス(2着)さえも幻惑された。
「今年もロゴが行くか、それともブラックスピネルか。典型的な逃げ馬がいないのは昨年と一緒。競ってしぶとい馬だけにレースが流れてくれるのが理想なんだけど…」