■独立して実感したリスクとは
一度しかない人生、自営業やフリーランスで自由に働きたいと思う人も増えていると思います。もちろん、成功する自信と覚悟があるならば、すぐに独立・起業という道を選ぶのもありですが、老後を考えるとサラリーマンの良い条件を享受しながら、収入源を増やすために副業をするというやり方がベストかもしれません。
■サラリーマンの厚生年金と国民年金の金額を比較すると?
厚生労働省年金局が公開している「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況(平成30年12月)( https://www.mhlw.go.jp/content/000453010.pdf )」によると、平成年度末における65歳以上の平均年金月額は以下の通りとなっています。
国民年金 単身者 55,615円※
厚生年金(第1号) 男性 174,535円
厚生年金(第1号) 女性 108,776円
自営業の場合は、収入に関わらず国民年金(老齢基礎年金)を毎月16,410円(平成31年度)支払うことになり、扶養という制度もないため配偶者がいる場合は配偶者分も支払うことになります。また、年金として受け取ることができる金額は現状月に55,615円※となっています。
※老齢基礎年金の受給資格期間を原則として25年以上有する場合
一方でサラリーマンの厚生年金(老齢厚生年金)は、現役時代の収入や勤続年数などにより支払う額も年金の受給額も異なりますが、上記のように現状では男性の平均が174,535円、女性の平均が108,776円と、国民年金の受給者に比べると多く受け取ることができます。
もちろん、少子高齢化の影響で同程度の年金を将来受け取れる保証はありませんし、受給年齢の引き上げも考えられるので、あまり楽観的な皮算用はできません。
■起業やフリーランスは自由がある分リスクも大きい
”人生は一度きり”と考えると、起業やフリーランスで自分の好きな仕事を好きな場所でしたいと思う人も多いでしょう。筆者もその1人で、現在は独立し、幸い仕事は順調でストレスも会社員時代に比べて格段に減っていますが、やはり将来に不安は残ります。
上記の通り年金が少ないことに加えて、退職金もありませんし、病気で働けなくなった時のことを考えるとやはり「怖い」という気持ちはどこかにあります。そのため、万が一に備えて貯蓄は多めに用意する必要があると普段から意識しています。
その点、サラリーマンであれば、ある程度の年金が期待でき、退職金がある場合も少なくないでしょう。産休や育休の制度が整っている会社も増えつつあります。筆者が以前働いていた会社では病気などで休職中の場合も給料の7割を受け取ることができて、今思えば素晴らしい福利厚生だと感心してしまいます。そのため、独立した今思うのは、サラリーマンならではの恩恵を活かしながら、副業で好きなことに挑戦するのが最強なのではないかということです。
■副業解禁・働き方改革で副業がやりやすい時代に
よくサラリーマンの賃金が上がらないと言われますが、グローバルな人材紹介会社であるヘイズ社の調査『2018年アジア給与ガイド』によると、マネジメント層や高度スキル人材については、中国、香港、シンガポールの報酬水準が日本を上回るようになっています。それどころか税金や社会保険料が増えてサラリーマンの手取りは減少傾向にすらあります。
一方で、上述の通りサラリーマンには厚生年金や退職金、有給休暇制度などのメリットはありますし、副業解禁や働き方改革の影響で自分の時間が取りやすくなっています。空いた時間を上手く副業に使うことで収入アップに期待できますし、新しいスキルを習得して本業に活かせる可能性もあるでしょう。本業で月に何万円も昇給するよりも、副業で稼ぐ方が容易な場合もあります。
また、もともと起業を目指している人にとっても、副業から始めるのはリスクヘッジになるでしょう。いきなり起業をして収入が減ると、前年度の収入(サラリーマン時代の収入)に応じた住民税など税金の支払いが必要になり、お金の面で苦労することも。人間関係の構築や仕事の受注がしっかりできると確信してからでも遅くはないので、まずはサラリーマン+副業から始めてみてはいかがでしょうか。
■まとめ
老後のことを考えると、サラリーマンには厚生年金・退職金などのメリットがあります。もちろん移り変わりが激しい社会で、サラリーマンの終身雇用も怪しくなりつつあるので、このままの水準を維持できるかどうかは分かりません。しかし、税金は増え、賃金はなかなか上がらない傾向の日本で生きていく以上、収入源を増やして少しでも多くの所得を得ることを考える必要もあるでしょう。
自営業やフリーランスは、成功すれば収入倍増というケースがあるかもしれません。しかし、やはり時代の移り変わりや健康状態などリスクも多いものです。そのため、サラリーマンの恩恵を受けつつ、新しい収入源を確保できる副業をするのが、老後のことを考えると最強なのではないかと筆者は考えています。