イクメンという言葉の浸透や、男性の育休取得の推奨が話題になっていますが、それでもなお家庭における女性の家事・育児負担率が高い日本。



もちろん積極的に男性への呼びかけを行うことも大切ですが、女性自身が「私がやらなければ…」という責任感、家事・育児に対する完璧主義に追い詰められている場合も多いようです。



1人でも多くの方が心からゆとりを持って生活できるような考え方のヒントをご紹介します。



■世界ワースト基準 日本の家事育児の平等性



近年日本では、男性のみが働いている世帯よりも共働き世帯が多くなっています。



内閣府の『男女共同参画白書平成30年度版』によると、1997年以降は共働き世帯が男性のみが働く世帯を上回っています。



さらに第一子出産後の女性の就業状況のデータを見ると、2009年までは離職する女性の割合の方が多くなっていましたが、最新の調査では就職を継続する女性が53%へと上昇しました。つまり子どもがいる世帯においても、働く女性が多いことがはっきりとわかります。



総務省統計局の『平成28年社会生活基本調査結果』の6歳未満の子どもを持つ夫婦の1日あたりの家事・育児関連に費やす時間のデータを見ると、日本男性の平均は1時間23分となっています。



一方、女性は7時間34分と女性の家事負担が圧倒的に多いことがわかります。



他の国を見ると、アメリカは男性3時間10分、女性5時間40分、男性の参加時間が最も多いスウェーデンでも男性3時間21分、女性5時間29分など、女性の家事・育児に費やす時間が多いという点は変わらないとはいえ、日本男性の家事・育児参加時間は非常に低水準であることがわかります。



共働き、子どもがいる家庭での女性の就業率が上がり続けている現代に関わらず、未だ日本では「女性が家事・育児を行う」という意識が根付いていることがわかります。



この社会背景によって、日本では女性が家事・育児に関して完璧主義になりやすくなってしまうと考えられています。



■日本人女性が陥りやすい、家事・育児の完璧主義とは



そもそも「完璧主義」とは心理学でも定義づけられている概念で、何事も完璧に行いたい、やると決めたらとことん取り組み、自分に対する厳しいノルマを課すような性格の人を言います。



逆を言えば、「ちょっとだけやってみる」という曖昧なことができなかったり、適度に手を抜くことが苦手だったりします。



これを家事や育児に当てはめて考えてみます。



リンナイ㈱の『世界5カ国の「ワーキングママの育児事情」に関する意識調査(2019年調査)』によると、ベビーシッターを最も利用している国はアメリカで、52%の家庭が定期的に利用しているとしています。



また、保育サービスの利用率が最も高いスウェーデンでは77%近くの家庭が利用しています。しかし日本での利用率は、ベビーシッター7%、保育サービス25%と各国と比べても低い結果が出ています。



これらの結果から、日本では育児を外部サービスに頼むという考え方が少なく、共働き世帯が多くてもまだまだ家事や育児は女性が行うという風潮が根強いことがわかります。



そのため「料理や洗濯、掃除などの家事はすべて自分が責任を持たなくては」「保育園や育児サービスを利用しても、お迎えや根本的な子育ては自分が頑張らなくては」と知らず知らずのうちに、日本人女性が家事や育児において完璧主義となってしまうようです。



■完璧主義をやめて、「自分で」から社会も含めた「全員で」の発想に



日本人女性が家庭の完璧主義思想から解放されるには、大きく2つの方法があります。



1つは女性自身が完璧主義を手放すことです。



完璧主義をやめるには、自分が思う〇〇ができて当たり前という概念を見直すこと、物事を加点方式で捉えること、自分がダメだと思っていることも思い切ってさらけだしてみることなどがあります。



「今日は掃除はしたけど洗濯ができなかった…」のではなく、「掃除ができた!明日は洗濯をやろう」と少し視点を変えるだけで、自己肯定感が増し幸福度も増えていきます。



また、できなかったことを隠すのではなく、パートナーにお願いしてみることも大切です。できなかった自分をさらけ出すことで、罪悪感なく家事や育児を分担していきましょう。



2つ目は社会全体で家事や育児を行うという考え方を、日本でもしっかりと持つということです。



先述のように、世界に目を向けると育児サービスを利用する国が非常に多いことがわかります。日本でも近年病児保育サービスが増えたりと、社会で育児を担うサービスなども増えてきています。



必要な時に社会に頼る育児は責任放棄などではありません。ぜひ世界に目を向けて、自分がやりやすい形での育児サービスを探してみてはいかがでしょうか。さらに家事に関しても、家事代行サービスなどを利用する方法で負担を減らすことができます。



■まとめ



まだまだ女性が家事や育児を担うという考え方が根付いている日本。けれど、自分自身の考え方を変えるだけで、誰かに頼むことができます。



「自分がやらなくては」という完璧主義を手放して、家庭や社会全員で家事・育児を行うことが、日本全体の意識を変えていくことにもつながるのではないでしょうか。



【参考】
『男女共同参画白書平成30年度版( http://http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h30/gaiyou/html/honpen/b1_s03.html )』内閣府
『世界5カ国の「ワーキングママの育児事情」に関する意識調査(2019年調査)』リンナイ調べ
『平成28年社会生活基本調査』総務省統計局
『「平成28年社会生活基本調査」の結果から~男性の育児・家事関連時間~』内閣府男女共同参画局