Hさんは、都内のオフィスに勤務する30歳の独身OLです。年収は350万円ほどですが、大学生時代のバイト生活から社会人になってからの数年間、ずっとコツコツとお金を貯め続け、30歳目前での貯蓄額はなんと1000万円を超えていたそう。

しかし、そんな堅実なHさんにもお金の悩みがありました。



「1000万円貯まっても、全然安心できないんです。これだけあれば、たしかに結婚資金とか住宅購入の頭金とかにはなりますよ。でも、ずっとこのまま結婚しなかったら?定年まで同じ職場で働き続けることができればいいですが、『リストラ』なんてことになったら、年間200万円ぐらいで質素に生活していったって、5年でなくなってしまうんです」



実は、Hさんのように「貯めても貯めても不安が拭えない」という独身女性は意外に多いようです。



■20代で貯蓄額1000万円を達成している人はどのぐらい?



ここで、「知るぽると」による「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](平成30年)( https://www.shiruporuto.jp/public/data/movie/yoron/futari/2018/ )」をもとに、20代の金融商品保有状況をチェックしてみましょう。



この調査の結果、金融資産を持っていない世帯を含めた20代の金融商品保有額の平均は249万円、中央値は 111万円と示されています。



そして、全体の3.4%の世帯が1000万円以上の貯蓄を所有していることも判明しました。
平均の4倍以上の貯蓄を貯めるとなると、かなりの努力が必要だったはず。とはいえ、Hさんのように「20代で1000万円を貯める」というのは、あながちレアなケースという訳でもないようです。



■貯蓄をするうえで大切なのは「目標」と「モチベーション」の両方



では、20代で貯蓄1000万円を貯めるには、どのようにしたらよいのでしょうか?



「貯蓄を増やす第一歩は、目標を決めること」にあるといわれています。つまり、「とりあえず安心できるくらい」「できるだけたくさん貯めたい」といった内容より、明確な金額を設定しておいたほうが良いからです。まずは、「貯蓄額1000万円」を目標に掲げるところからはじめましょう。



しかし、目標が大きければ大きいほど、達成までの道のりは長くなるもの。貯蓄1000万円を目指すと決めたら、「どのようにモチベーションを保つか」を考えておく必要があります。



貯蓄のために欲しいものを我慢していると、ストレスが溜まってうんざりしてしまうこともあるでしょう。そこで、1カ月間で自由に使える金額を決めておくのがおすすめです。



「毎月5万円が自分のおこづかい」と決めたら、給料日にその金額を財布へ入れておきます。あとは、その金額内を自分の好きなように使うだけ。

こうすることで、「この金額内なら我慢しなくて済む」という安心感が生まれます。「今月はあといくら使える」と分かりやすいのもいいですね。



さらに、自分なりのルールを作っておくのもポイントです。「飲み会は月に2回まで」「美容院に行った月は洋服を買わない」など、おこづかいの使い方をうまくコントロールしておきましょう。



ところで、なぜ、前述のHさんは、平均の4倍以上の貯蓄額を達成しながらも、不安なのでしょうか。おそらくこれは、「目標」の部分に、「〇〇のために」が欠けていたことが原因と考えられます。



夫婦の場合、「家族が増える」「家を買う」「子どもの進学」などの一般的に想定されるライフイベントから、「何のために」「何歳までに」いくらという貯蓄目標が立てやすいといえます。しかし、Hさんのような独身女性の場合、「結婚できるのか」「子どもを産めるのか」など、この先の将来が不透明なことが多く、金額的な「目標」はあっても、何のために貯めているのかといった「目的」がない場合が多いようです。これが「貯めても貯めても拭えない不安」に繋がっていたのかもしれません。



■貯蓄1000万円ある2人以上世帯は、豊かに暮らしている?



では、貯蓄目標が比較的立てやすい、2人以上の家庭なら、貯蓄が1000万円もあれば、経済的に余裕が生まれるものなのでしょうか。ここで、2019年5月に総務省統計局が発表した『家計調査報告(貯蓄・負債編)-2018年(平成30年)平均結果-(二人以上の世帯)( https://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/index.html )』を見てみましょう。



この調査の結果、1世帯あたりの貯蓄現在高(平均値)は1752万円と示されています。

さらに、勤労者世帯(二人以上の世帯に占める割合54.3%)の貯蓄現在高は1320万円となっており、どちらも1000万円を超えています。



ただし、「みんな貯蓄がたくさんあるから裕福なんだ」と断言することはできません。たとえ1000万円の貯蓄を持っていたとしても、それ以上の住宅ローンの借り入れなどがあれば「ネット負債」という状況なのです。



貯蓄にかかる利子でお金を増やそうと思っても、現在の利子はかなり低く、銀行にただ預けているだけでは大きく増やせないのが現状です。



仮に年間20%の運用が可能だったとしても、1年間あたりの超過利益は200万円。利益を確定したら、そこから税金を支払わなければなりません。

もちろん、運用に伴うリスクの存在も抑えておく必要があります。



これら踏まえると、貯蓄が1000万円あるからといって、必ずしも生活が豊かになるとは言い切れないというのが現実でしょう。



■まとめ



「20代でも貯蓄1000万円を持っていながら不安を感じる人もいる」「貯蓄があれば裕福な生活になるとは断言できない」と聞くと、「一体いくら貯めればいいのか」と思う人もいるかもしれません。しかし、貯蓄があるとないとでは、やはりその後の生活に違いがでます。「若いからまだまだ大丈夫」などといわず、独身・既婚かかわらず、20代のうちから貯蓄に取り組むようにしたいものですね。



【参考】
「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](平成30年)」知るぽると(金融広報中央委員会)
『家計調査報告(貯蓄・負債編)-2018年(平成30年)平均結果-(二人以上の世帯)』総務省統計局



【ご参考】貯蓄とは

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。