近年の晩婚化の影響もあり、なかなか子どもに恵まれないと悩んでいる夫婦も多いのではないでしょうか。特に共働きの夫婦の場合、子作りのための時間が取れなかったり、食生活がみだれがちだったりなど、妊娠を困難にするさまざまな障壁が立ちはだかります。
このような状況を打開するために、不妊治療には頼らず“妻が仕事を辞めて妊活に専念する”という選択をしたある夫婦がいます。しかし…仕事を辞めた妻は、想像以上の精神的ストレスを抱えることになってしまったのです。
■子どもはいつでもできる…は大間違い!
最近は女性の社会進出が進み、多くの女性が結婚後もバリバリ仕事を続け、活躍していますが、いずれは子どもを…と考える人も多いのではないでしょうか。しかし共働きの場合、「子どもは、欲しいと思ったタイミングで作ればよい」という考えのもと、子作りに本腰を入れていない夫婦も多いようです。ですが現在の日本の初婚年齢と妊娠適齢期を考えると、あまり悠長に構えてはいられないことがわかります。
ご存知のとおり、男女ともに初婚年齢は上昇傾向にあります。
次に、妊娠適齢期について考えてみます。都内で不妊治療・体外受精専門クリニックを3院展開する医療法人 浅田レディースクリニックのホームページにある「妊娠適齢期( https://ivf-asada.jp/tekireiki/tekireiki01.html )」によると、「だいたい閉経の10年前から妊娠できなくなる」とあります。もちろん個人差はあるものの、平均的な閉経年齢が51~52歳といわれているので、妊娠の限界は41~42歳ということ。もちろん、突然妊娠できない体になるわけではなく、年々妊娠しづらくなることは明白です。
平均41~42歳が妊娠可能の上限であるのに対し、平均初婚年齢が約30歳…つまり、多くの夫婦は結婚した段階ですでに、子どもを持てるか否かのカウントダウンが始まっている状態に置かれているのです。しかし、この事実は世間にあまり浸透しておらず、「生理があるうちは、いつでも妊娠できる」と考える女性も多いと聞きます。
■子作りを理由に妻が仕事を辞めるという選択
筆者の友人A子は、30歳で社内結婚しました。A子は、広告代理店に勤めるキャリアウーマン。結婚当初は積み上げたキャリアを捨てる考えは微塵もなく、子どもを希望しているものの、妊娠してから考えればいいやというラフな人生計画を立てていました。内心、普通に夫婦生活を送っていれば、そのうち妊娠するだろうと思っていたそうです。
妊娠できないのは、忙しすぎて夫婦の時間を持てていないこと、そして食生活の乱れや冷え性などが原因ではないか。このままの生活を続けていては、子どもに恵まれないかもしれない…という恐怖が彼女を襲いました。
結果、大好きな仕事を“子作りに専念”という理由で辞めてしまったのです。
■女性にとって妊娠できないストレスは計り知れない
広告代理店を退職したA子は、不妊治療で通院することはせず、今まで時間をかけられなかった食事作りや体のケアに時間を費やしました。ネットで見つけた妊活におすすめの献立を試してみたり、体をあたためるボディケアに時間を費やしたり、何より睡眠時間がしっかり確保できるようになったことが嬉しいといっていたのを覚えています。
先日、A子から相談事があると持ち掛けられ、話す機会がありました。普段は明るく元気なのに、その日は覇気がなく落ち込んでいるよう。実は退職して3年経った今も子宝に恵まれていないのです。
仕事を辞めて、“妊娠”や“子ども”のことばかりを考える生活に疲れてしまったというA子。詳しく聞くと、今も不妊外来に通うことはなく“とにかく排卵日付近に夫と関係を持たなければ!”ということを目標に生活している。それに対して仕事が忙しい夫は、排卵日と知っていても帰りが遅かったり、疲れているからとリクエストを拒否したり…。
A子はそんな夫が許せない!と思う反面、元同僚なので仕事内容や忙しさは誰よりもわかっている…という想いに苦しめられていました。さらに、健康的で妊娠しやすい体に整え“子作りに専念する”ために退職したにもかかわらず、3年経っても結果が出ていない現状。「なんのためにキャリアを捨てたんだろう…。」という虚無感にさいなまれていました。
女性にとって“妊娠できないこと”のストレスは想像以上に大きいもの。もしA子が大好きな仕事を続けながら妊活をしていれば、今、彼女が抱えている先の見えない大きな苦しみは小さかったかもしれません。
■子作りばかりに頭を支配されない工夫が必要
妊活を理由に仕事を辞めても、なかなか結果に結びつかないこともあるでしょう。女性にとって妊娠できないストレスは計り知れません。この大きなストレスを軽減するためには、何か別のことに頭を切り替えるのが一番かもしれません。
いつゴールがやってくるのか、そもそもゴールが存在するのかさえわからない不安と隣り合わせの期間。大好きな仕事を続けながらの妊活の方が、心にやさしい生活が送れるのではと考えさせられたのでした。