0歳で子供を預けて仕事に復帰すると、「そんなに早く子供を預けると愛情不足になる」とか「3歳までは親の手で育てた方がいい」と言われ、葛藤してきた方も多いと思いかとます。



筆者も下の子が9カ月の時点で保育園へ入れたため、親族やご近所さんを始めとした周囲の人間から、かわいそうだ!という大合唱を浴び続け、とても苦しみました。



保育時間も悩みの原因の一つ。仕事が忙しくて、お迎えが夜遅くなってしまうと、最後に残っていたのが自分の子だけだった…という声も聞きます。



働き方改革が進んでいるとは言え、まだまだ時間軸が男性中心なのも事実。上司や取引先の都合で残業したり、夕方から会議が入ったりで保育園に遅くまで預けざるをえず、罪悪感を抱えている方もいるのではないでしょうか。



では、本当に保育園に長く預けることは、子供にとって悪影響なのでしょうか? 実は、同じ疑問を抱いた学者が、過去に研究をしています。海外と日本で実験が行われているので、見てみましょう。



■保育園に預けた子と預けなかった子、発達の違いは…?



2004年発表された米国の研究論文では、誕生から生後6カ月までに週30時間以上保育施設で過ごしている子ども143人と、0時間である子供183人を対象に、生後15カ月の時点でどう違いがあるかを比較しています。



その結果、精神発達、言語発達、母子交渉における子供の積極性、母親の愛着についての比較では、両群の子どもには全く差がないことが分かっています。



出典:『Child‐Care Usage and Mother‐Infant “Quality Time”( https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1741-3737.2002.00016.x )』(Cathryn L. Booth, K. Alison Clarke‐Stewart, Deborah Lowe Vandell, Kathleen McCartney, Margaret Tresch Owen/First published: 02 March 2004)



保育園に預けること自体は、発育に与える影響は少なそうですね。これは、保育園に子供を預けて職場に復帰するワーキングマザーにとって嬉しい結果です。



では、仕事の都合上、朝早く預けて夜遅くお迎えをするなど、保育時間が長くなることの影響はどうでしょうか?



■保育園に夜遅くまで預けても大丈夫?



筑波大学の安梅勅江教授が行った研究では、全国87カ所の認可夜間保育園と併設されている昼間保育園を利用する1歳児を対象に、毎日11時間以上保育されていた子供239人と、通常の保育を4~10時間されていた子供409人を比較しています。



毎日11時間以上保育されていた子供たちは、運動の発達、社会性の発達、言葉の発達、保育園への適用などについて、2年後と5年後に追跡して調べたところ、通常の保育4~10時間をされていた子供たちと比べても、全く差がなかったということです。



出典:『子育ち環境と子育て支援-よい長時間保育のみわけかた( http://www.keisoshobo.co.jp/book/b26166.html )』(安梅勅江著、勁草書房/2004年)



保育園での保育時間の長さも、子どもの発達とは関係が薄いだろうということが示されていましたね。では、何を大事にして子育てすれば良いのでしょう?



■1. 保育園の環境



保育園の環境は、預ける時間に関係なく気にしてあげたい点です。園内は清潔か、先生たちが充分に愛情を持って接しているか……。保育園に応募する前に見学を受け付けているところが大半なので、ぜひ申し込む前に見学に行きましょう。



しかし、見学といってもどこを見たら分からないという方もいらっしゃるかもしれません。その場合は、インターネットで検索してみると、以下のようなポイントをまとめたチェックリストがダウンロードできますので、保育園を選ぶ際の参考にしてみてくださいね。



  • 保育者の接し方があたたかいか(愛情が込められていて、抱っこなどしてくれる)
  • 言葉のかけかたはどうか(やさしい言葉を使うか、絵本の読み聞かせをしてくれるか)
  • 教育的な動機づけをするか(知的能力を伸ばすような過ごし方をしているか、子供のお友達と遊べるように働きかけているか)
  • 行動の管理をするか(いけないことをした時はきちんと叱るか、危ない行動をしないようにコントロールするか)など

■2. 仕事後や週末の過ごし方



平日の母親不在の影響は、週末の子供との交渉によって相殺できることが、上の2つの研究で示されています。交渉とは、授乳、おむつ替え、入浴など必須とされる世話ではなく、遊んだり、出かけたり、しつけや教育をすることなどを言います。



では、ワーキングマザーは週末に子供とずっと一緒にいなくてはいけないのかというと、そういうわけではありません。これらの研究で示されているのは、短時間の濃い親子の交渉によって、親子の交渉の少なさが取り戻せるので、いつも親がそばにいなくてはいけないわけではないということです。



その代わり、たとえば一緒に買い物に行くなど子供との日頃の接し方や、子育ての相談をしたり支援をする人がいるなどの養育環境のよさが、子どもの発達にプラスに働くことが報告されています。



■おわりに



これから子供を預けて復帰するママも、保育園に預けることに後ろめたさを感じているママも、過度の心配は要りません。

こうした研究結果が示すように、保育園に預ける時間の長さは、発育に関係ないと言えるからです。



それよりも、良質な環境の保育園に預けること、週末や仕事後の時間を一緒に楽しく過ごすことが大切です。平日に働きながら無理して子供と一緒にいるのではなく、養育環境さえ良ければ、ママもリフレッシュして大丈夫。お仕事、行ってらっしゃい!