個人の資産形成を考える際に非常に重要な要素が「住宅」です。住宅を購入する「持家派」か、家を借り続ける「賃貸派」かは、毎回大きく議論が分かれるところです。
■持家か賃貸、議論の意味とは
「あなた賃貸?」「あなた持家?」というような会話を日常的にできるのはよほど仲が良いとできないというのが実際ではないでしょうか。
なかなか友達同士でも聞けないので、毎回メディアで「持家派vs賃貸派」の論争が大きく取り上げられることになります。
その観点は、最終的にはどちらがお得か、という点に話題が及びます。
いつも不毛な議論だなと思うのは、不動産はコモデティではないので、それぞれ条件が異なります。それを一列、同列で議論することにあまり意味はありません。
住宅購入も金融機関から資金調達をして購入する立派な不動産投資です。ですので、最後は買ったよりも高い値段で売れるのかということがポイントになります。
したがって、立地が重要です。物件の場所を議論せずしての「持家派vs賃貸派」論争に意味はあまりないといえます。
もちろん、住宅ローン減税やリフォーム費用などの費用を考慮した賃料との比較は興味深いものがあります。
しかし、それら条件を別々の物件を持っている人同士で比較しても参考にはなりますが、個人の投資判断の材料にはなりません。
それでは、持家派と賃貸派の世代別の比率を見ていきましょう。
■持家派と賃貸派「世代別の」の比率とは
話が長くなりました。
それでは、総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)―2018年(二人以上の世帯)―」をもとに世代別の持家派と賃貸派の比率を見ていきましょう。
世代―持家派の比率:賃貸派の比率、の順に表記します。
- 20代以下 30.6%:69.4%
- 30代 64.3%:35.7%
- 40代 78.0%:22.0%
- 50代 86.2%:13.8%
- 60代 91.1%:8.9%
- 70代以上 93.3%:6.7%
- 全体 84.7%:15.3%
このように、全世代で見ても、8割以上が持家派です。また、定年後のお金の心配をする60代以上の世代は9割以上が持家派です。
そちらが損かとくかは別にして、高齢者の日本の9割近くが賃貸派ということになります。
■住宅購入とは何を意味するのか
家を購入することが投資に見合うのかは個別の議論として、「住宅ローンを組むことができる」というのは、借り手が金融機関から与信をしてもらえたというとことになります。
住宅投資(購入という言葉はあまり正確ではないと思います)は、住宅ローン減税というのもありますし、そもそも現在の住宅ローンの金利は、消費者ローンなどと比べてかなりの低金利で借りることができます。
また、借り換えをすることでさらに下げられるという方も多いでしょう。
住宅投資以外にこのような低金利でお金を借りるは難しいので、見方によっては住宅投資資金を借りられる人の特権ともいえるでしょう。選ばれた人だけが住宅投資ができるのです。もちろん国策という評価もあるのでしょうが、そうした議論もまた必要かと思います。
もちろん、投資ということになれば、するかしないかは本人の自由です。なので、どちらが正解というのもまたないのです。
繰り返しになりますが、どちらが得かというのは物件次第です。
■参考資料
- 総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)―2018年(二人以上の世帯)―」( https://www.stat.go.jp/data/sav/2018np/index.html )