フィリピン南部スルー諸島のホロ島で24日、連続して2回爆発があり、少なくともフィリピン軍の兵士など10人が死亡したと伝えられている(日本時間8月24日18時現在)。



1回目の爆発はホロ島の市街地にあるレストラン付近で発生し、その1時間後にそこから100メートルほど離れた場所で2回目の爆発があったという。



■繰り返し発生するテロや誘拐



詳しいことは分かっていないが、ホロ島があるスルー諸島ではイスラム過激派組織アブサヤフやイスラム国を支持する武装勢力によるテロや身代金目的誘拐が繰り返し発生している。



ホロ島の町パクティルでは、7月上旬にもフィリピン軍とアブサヤフとの間で銃撃戦が発生し、アブサヤフのメンバー5人が殺害されている。



南部ミンダナオ島のマラウィ市では、2017年4月から10月にかけ、イスラム国を支持するアブサヤフやマウテ・グループの戦闘員たちが同市を占拠する惨劇があり、多くの人々が犠牲となった。



アブサヤフやマウテ・グループのリーダーたちはフィリピン軍によって殺害され、マラウィ市は10月に解放されたが、依然として生き残った戦闘員たちはジャングルなどに逃亡し、テロ活動を続けている。



フィリピン陸軍の司令官は最近、依然としてアブサヤフやマウテ・グループ、バンサモロ・イスラム自由戦士など4つの主要なイスラム国系組織が活動しており、地域の治安情勢にとって大きな脅威だとの認識を示した。



■首都マニラにも潜む脅威



また、テロリズム専門家の間でも、最近のアブサヤフやフィリピン南部のテロ情勢を懸念する声が広がっている。



インドネシア・ジャカルタに拠点を置くテロ研究機関「Institute for Policy Analysis of Conflict(IPAC)」のシドニー・ジョーンズ所長は7月下旬、アブサヤフが身代金目的の誘拐や海賊行為を数カ月以内に活発化させる恐れがあると指摘した。



アブサヤフは、マラウィ市占拠のように、2016年から2017年にかけてイスラム国から多額の資金援助を得たため、財政的に豊かであったが、近年は戦闘員や支配地域の住民たちに必要な資金を提供することが困難となり、誘拐や海賊行為で資金を獲得する必要性に迫られているという。



同様に、フィリピン当局もマレーシア東部サバ州沖でアブサヤフによる身代金目的の誘拐が発生する恐れを警告した。



また、シンガポールに拠点を置くアジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)の情報共有センターは先月、フィリピンの海上保安庁からアブサヤフのメンバー5人が海上で身代金目的の誘拐を行う機会をうかがっているとの具体的な情報を得たとされる。



さらに、これは最近筆者が外国の対テロ対策専門家から得た情報であるが、アブサヤフはスルー諸島という一種の僻地で活動するイスラム過激派ではあるが、首都マニラなどにもスリーパーセルを拡大することを狙っているという。



現に、以前マニラでもアブサヤフやバンサモロ・イスラム自由戦士など、イスラム国を支持する個人やセルが摘発された事例がある。

フィリピンのテロ情勢は、日系企業や邦人の安全の観点からも重要な問題である。