2021年も新型コロナウイルス感染症拡大の影響による緊急事態宣言に伴い、宣言の対象地域では飲食店の営業時間短縮(午後8時まで)が要請されています。



さらに、2021年1月12には「昼間の外出自粛」を呼びかけられる状況となりました。



このような事態になると、外出せずに自分が好きな食事が自宅で楽しむことができる「出前サービス」の優位性が高まることになります。



今回は日本での二大デリバリーサービスの「出前館」「UberEats」を比較してみました。



■出前館の業績はどうなっているのか



まず、出前館について見ていきましょう。



売上額については大きく規模を伸ばしているのですが、



  • 2020年8月期通期:103億円(前期比154%)
  • 2021年8月期第1四半期:42億円(前期同時期比232%)

営業利益については、売上の伸び以上に赤字幅を大きく拡大している状況です。



  • 2020年8月期通期:▲26億円(赤字拡大)
  • 2021年8月期第1四半期:▲31億円(赤字拡大)

営業赤字がかさんでいる理由として、出前館の2021年8月期第1四半期にて、下記のような説明がされています。



ユーザー利用の拡大については、テレビCMをはじめとしたブランドの訴求や様々なキャンペーンを実施したことに加え、2020年11月10日よりLINEアカウントとの連携及びLINEアプリ内での『出前館』アイコンの掲出を開始 し、LINEユーザーへの『出前館』の訴求を強化したことで、ユーザー数及び利用の促進につながりました。



出前館:2021年8月期第1四半期決算短信p.2より引用



「出前館」はLINEとの業務提携を行い、積極的なプロモーション活動を行っていたことがわかります。今回のこの投資を今後、回収できるか、今後の推移を見守る必要があります。



■世界のウーバーはどうか



続いて、Uberについて確認します。



2019年分のアニュアルレポート/Form 10-Kによると、グローバルの2019年分売上(セグメント別)は



  • Rides(タクシー配車):107億4500万ドル
  • Eats(食品デリバリー):25億1000万ドル
  • Freight(貨物輸送):7億3100万ドル
  • Other Bets(その他新規事業):1億1900万ドル
  • ATG and Other Technology Programs(自動運転技術):4200万ドル

となっており、UberそのものにおけるEats(食品事業)はそこまで大きな存在ではありません。



ただし、今回は日本における出前館とUberEatsの比較なので、「Uber Japan(Uberの日本法人)」の決算を確認しておきましょう。



Uber Japanは官報で決算を公表しており、2019年12月期の純利益は3億3659万円という状況でした。



日本拠点ではRidesとEatsに相当する事業が展開されているので、この純利益は2事業の合算値と判断できます。



したがって、この純利益額も厳密にEatsのみの利益とは言えませんが、UberEatsは出前館と比べると着実に黒字を積み上げる、堅実な事業運営状況だと言えそうです。



■出前館・UberEatsの配達員を比較する



続いて、出前館・UberEatsの配達員についても比較していきます。



UberEatsの配達員が業務委託契約で、出来高制であるというのは複数メディアでも報じられているのはご存じでしょう。



一方、出前館の配達員は出前館のアルバイト従業員としての雇用と、業務委託の出来高制が選べることはご存じでしょうか。



また、出前館のほうはどちらの業務形態であっても、「拠点に常駐しているスタッフ」に相談したり、トラブル解決を依頼したりすることもでき、サポート体制が手厚いです。



実際、私自身もUberEatsが混んでいて注文できない時に出前館を活用することがあるのですが、出前館の配達のクオリティのほうが安定しています。



UberEatsは各種SNSなどでも指摘されていますが、商品がほぼ破損に近い状態で届いても、サポートを依頼するのが難しかったりしました。



そのため、出前館の配達員のほうが、雇用としては安心できる体制ですし、ピークタイム時の安定感や、トラブル対応といった、総合的なサービスクオリティを重視する場合は、個人的経験からは、出前館のほうがお勧めだと感じます。



■出前館・UberEatsの今後はどうなるか



出前館の今後については、先述の通り、「投資を回収できるかどうか」にすべてがかかっているでしょう。



UberEatsについては、日本法人は純利益を確保できているのですが、グローバルで見ると、2019年の調整後EBITDA(金利・税金・償却費控除前利益。Uberはこれを重視している)は27億2500万ドルの赤字となっており、決して安泰という状況ではありません。



更に、2020年1月にインドのUberEats事業をZomatoに売却する(アニュアルレポート/Form 10-Kより)など、一部地域での撤退も開始している状況です。



両社とも、今後の動向に目が離せません。



参考資料

  • 出前館「業績ハイライト」( https://corporate.demae-can.com/ir_information/highlight.html )
  • 出前館「2021年8月期第1四半半期短信」( https://ssl4.eir-parts.net/doc/2484/tdnet/1915618/00.pdf )
  • ウーバー「2019アニュアルレポート」( https://s23.q4cdn.com/407969754/files/doc_financials/2019/ar/Uber-Technologies-Inc-2019-Annual-Report.pdf )