首都圏や近畿圏などで緊急事態宣言が発出される中、今年も大学受験シーズンが始まりました。新型コロナウイルスの感染状況によっては直前に入試方法が変更となるケースも報道されています。



ここ数年、東京を始めとする大都市圏の私立大学では定員厳格化により合格者が減ったことで入試が難化し、受験生の安全志向が高まっていました。



そこに新型コロナの蔓延という想像を超えるような出来事が起き、地方の受験生が都市部を避ける動きが加速すると予想されています。果たして「上京して東京の大学に行く」時代は終わりを告げるのでしょうか。



■2020年度に東京の大学に入学した学生数は15万人超



文部科学省が2020年12月25日に発表した「令和2年度学校基本調査」によると、2020年度に東京都にある大学に入学した学生は15万1714人でした。この数字はもちろん全国1位で、全国の大学入学者のうち約24%を占めています。



東京都には東京大学を筆頭に、全国的知名度を誇る私立大学も数多くあります。

そのため、全国から若者が上京しキャンパスライフを送るイメージがありますが、実際はそこまで地方出身者が多いわけではありません。実際に東京にある大学への進学者のうち東京都の高校出身者は3人に1人(34%)を占めています。



さらに首都圏といわれる埼玉県、千葉県、神奈川県の3県の高校出身者も加えると比率は69%にまで上昇。コロナ禍で地方の受験生が東京を目指さなくなると取り沙汰される以前から、都内の大学は”首都圏ローカル化”していると言える状態だったのです。



■東京都の高校出身者は首都圏を出ない



前述の「令和2年度学校基本調査」では、全日制や定時制の高等学校や中等教育学校後期課程を卒業した学生(浪人生も含む)の大学(学部)・短期大学(本科)への進学率が、2020年度に58.6%の過去最高を記録したことが示されています。



一方、東京都の「令和2年度 学校基本統計(学校基本調査報告書)」によると、東京都の2020年3月卒業者(浪人を含まない)の大学・短期大学への進学率は66.8%となっています。

そして、この東京都の高校出身者の多くが首都圏の大学へ進学しています。



令和2年度の東京都における大学進学者数7万7773人のうち、東京都の大学へ進んだのは5万1659人、首都圏に規模を広げると7万2784人。実に93.6%が1都3県の大学に進学しているという状況です。



全国には795校の大学があり、東京都には143校が設置されています。このように、東京には様々な大学があるため、東京在住なら「この大学の○先生に学びたい」「この学部学科にに進みたい」「国公立大学の医学部を目指す」という大きな理由がない限り、地元から飛び出さなくても進学する上で問題のない環境と言えます。



その一方で、コロナ禍による感染の不安や、オンライン授業に切り変わったことによる勉学上、生活上の問題が多々指摘されています。

そのため、東京の大学を目指す動きが鈍り、地方の子どもが上京せずに地元に残ることは十分考えられます。東京都内の大学は”首都圏の大学”というローカル化がますます進むのかもしれません。



■地元志向の高まりを地方の大学はどう受け止める?



東京の大学はそもそも首都圏の高校出身者が大半を占めています。それがさらにコロナ禍で出身地域が偏ってしまうと、似た環境で育った学生の集まりとなり、多様性が欠如するといった側面もあるでしょう。



しかし、現在の地方の受験生を取り巻く環境を考えれば、よほどの理由がない限り上京することを最優先にするのはなかなか難しいと思われます。



もともと私大定員厳格化を進めたのも、若者が東京などの大都市に集中しないようにという地方創生の目的がありました。

皮肉にも、新型コロナウイルスにより東京へ向かわず地元に残る若者は増加し、その目標は達成するかもしれません。しかし、それではコロナによる地方と都市部の地域分断となり、根本的な解決策とは言い難いものがあります。



コロナ禍が収まったあと、各地域の大学がどのような学校運営をしていくのかも真剣に検討する必要があるのではないでしょうか。



参考資料

「令和2年度学校基本調査( https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00400001&tstat=000001011528 )」(文部科学省)
「令和2年度学校基本調査(確定値)の公表について( https://www.mext.go.jp/content/20200825-mxt_chousa01-1419591_8.pdf )」(文部科学省)
「令和2年度 学校基本統計(学校基本調査報告書)( https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp/gakkou/2020/gk20qg10000.htm#kousotu )」(東京都)