飲むと前向きな気分になれる、熟睡できるなど、「ヤクルト1000」の感想がネット上で話題となり、店頭から姿を消し幻の逸品となっています。
「ヤクルト1000」は既に2022年3月期に対前年同月比2~5倍の販売増を続けており、ヤクルト本社(2267)の2023年3月期は増収増益となりました。
「ヤクルト1000」は更に販売を伸ばし同社の業績及び株価の伸びを後押しするのか、今後の販売動向及びヤクルト株の行方が注目されます。
■1. 店頭ではほとんど姿を見ない幻の「ヤクルト1000」
飲むと前向きな気分になれる、熟睡できる等の感想で「ヤクルト1000」がネット中心に話題です。
「ヤクルト1000」のサイトを見ると「ストレスをやわらげる」、「睡眠の質を高める」、「腸内環境を改善する」と魅力的な研究成果が並んでいます。
ストレス体感抑制については、“試験を控えた医学生を対象にした実証データ”と医学生を対象としたデータを公開しており、ヤクルトの並々ならぬ意気込みを感じます。
そんな「ヤクルト1000」は店頭ではほとんど買えない幻の一品となっています。
ヤクルト製品はヤクルトレディの直販が中心とはいえ、ヤクルト製品が店頭でほとんど姿を見ないというのは前代未聞でしょう。
なお、ヤクルトレディから購入できる「ヤクルト1000」と店頭販売用の「Y1000」は正確には別製品ですが、ヤクルト本社は「Y1000」を「ヤクルト1000」の店頭向けシリーズとしており、記事内では同一に扱っています。
■2. 「ヤクルト1000」の2022年3月期の販売量を振り返る
「ヤクルト1000」の発売開始は2019年10月です(「Y1000」の店頭販売がスタートしたのは2021年10月)。
当初は静かなスタートとなった「ヤクルト1000」ですが、2021年3月のヤクルト本社の開示資料(国内乳製品の1日あたりの販売数量前年比)から突如「ヤクルト1000」が現れ、その爆発的に増える出荷量が明らかになります。以下、数字を並べてみました。
- 2021年3月度 237.9%
- 2021年4月度 546.4%
- 2021年5月度 516.7%
- 2021年6月度 436.4%
- 2021年7月度 433.9%
- 2021年8月度 372.1%
- 2021年9月度 216.6%
- 2021年10月度 206.8%
- 2021年11月度 229.1%
- 2021年12月度 208.0%
- 2022年1月度 200.1%
- 2022年2月度 203.1%
- 2022年3月度 186.6%
- 2022年4月度 105.1%
2021年3月度から対前年同月比2~5倍の販売数量を見せる「ヤクルト1000」は、2022年3月期は年間を通じて大幅な販売増を果たしました。
ただし2022年4月になり、さすがに前年同月の販売の伸びを加味すると前年同月比では微増の数字です。
それでも2022年3月期の年間の「ヤクルト1000」の伸びは驚異的です。
■3. ヤクルトの2023年3月期の業績予想は保守的
「ヤクルト1000」の販売急増効果はヤクルト本社の2022年3月期決算に現れています。しかし今期の2023年3月期は「ヤクルト1000」の効果は限定的と同社は見ており、比較的保守的な予想決算を発表しました。2021年3月期からの決算の推移は下記となります。
- 2021年3月期 売上高3857億円、経常利益576億円、当期純利益393億円
- 2022年3月期 売上高4151億円、経常利益685億円、当期純利益449億円
- 2023年3月期(予想) 売上高4465億円、経常利益680億円、当期純利益455億円
「ヤクルト1000」の販売増の効果から、2022年3月期は増収増益を果たしました。
ただし翌2023年3月期の経常利益は同▲0.8%減とほぼ横ばいの予想です。
ネットでは現在進行形で話題の「ヤクルト1000」ですが、既に成長はピークを迎えているのか、毎月開示される「国内乳製品の1日あたりの販売数量前年比」の推移が注目されます。
■4. ヤクルトの株価は7000円をブレーク

ヤクルトの株価は2020年末の5000円台前半から緩やかな上昇を続けています。2022年5月終盤の終値は7000円を目前に前後する状態が継続していましたが、6月に入って上方にブレークしました。
ヤクルトの週足チャートを見ると、2020年4月以降7000円でフタをされていた状態です。
しかし、ついにそのフタを超え、7000円の水準に到達しました。
■5. 「ヤクルト1000」の更なる販売増に後押しされヤクルト株はさらに上昇するか?
2022年3月期に急激に販売を伸ばした「ヤクルト1000」ですが、開示資料からは伸びが一服した状態にあります。
ただし店頭では品薄状態が続いており、ネットでは今まさに話題沸騰中です。筆者の周辺ではヤクルトの以前からの定期購入者は「ヤクルト1000」の愛飲率が意外に高く、昨年度の「ヤクルト1000」の販売増は既存ユーザに対する販売が中心ということを実感しています。
2023年3月期は保守的なヤクルト本社の業績予想ですが、定期購入の既存消費者から店頭購入の一般消費者に「ヤクルト1000」の販売が広がり、業績の拡大そして株価のさらなる上昇を後押しすることになるのでしょうか?
今後の「ヤクルト1000」の販売状況や業績動向に加え、ヤクルト株の行方が注目されます。
■参考資料
- 株式会社ヤクルト本社 IR情報( https://www.yakult.co.jp/company/ir/ )
- Yakult(ヤクルト)1000/Y1000( https://www.yakult.co.jp/yakult1000/ )