米大統領選挙と株式市場

 米大統領選挙は4年ごとに行われます。過去に大統領選があった年のS&P500株価指数の月次パフォーマンスを累積的に示すと下のチャートのようになります。


図:大統領選挙の年のS&P500株価指数(1944~2016年)


トランプ再選確率は?先読み!米大統領選とマーケット
単位:%
出所:ストックトレーダーズ・アルマナック

 このチャートから分かることは、大統領選挙の年は平均して+6.94%であり、まずまずのパフォーマンスが期待できるということです。

現職大統領が勝つシナリオではパフォーマンスはさらに良くなることが分かります。


 逆に現職が敗北するケース(グレー)では1月・2月と9月・10月にマーケットが下げているのです。


 一般論として、経済が良く、株式市場も高いときは現職が有利であり、逆に経済が悪いときは大統領を出す政党が入れ替わることが多いです。


 それをもう少し詳しく見てみましょう。


米大統領選の年の過去のS&P500株価指数パフォーマンスは?

 下の表は過去の米大統領選の年の毎月のS&P500株価指数のパフォーマンスを示しています。緑でハイライトした部分は特に月次パフォーマンスが良かった月、逆に赤でハイライトしたのは特に酷いパフォーマンスだった月です。


大統領選の年のS&P500株価指数の月ごとパフォーマンス


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出所:ストックトレーダーズ・アルマナック

1976年の米国株式市場は?

 勝者:ジミー・カーター(民主党)


 1976年の米国株式市場のパフォーマンスは、+19.1%でした。株式市場が好調だった理由は二つあります。

まず1973年に第1次オイルショックがあり、1973年のS&P500株価指数が▲17.4%、1974年が▲29.7%と2年続きで酷い相場だった後を受け、1975年には大きな自律反発の相場があったことが指摘できます。1975年のS&P500株価指数は+31.5%でした。


 もう一つこの年の大イベントとして、株式委託手数料の自由化が発表されました。これにより手数料の値引き合戦が始まり、大衆が株式市場に押し寄せるという期待が生まれたのです。


 1976年1月の月次パフォーマンスが+11.8%と極めて良かった理由は、上に述べたような押せ押せムードの中で機関投資家の「パニック買い」が起きたからです。


 大統領選挙では民主党のジミー・カーターが勝利し、ウォーターゲート事件で辞任したリチャード・ニクソン大統領の後を受け、大統領に自動的に繰り上がった共和党のジェラルド・フォードは負けました。


 市場参加者は「1973~1974年の経済と株式市場の低迷は共和党のせいだ」と考え、政治の一新を求めたわけです。


1980年の米国株式市場は?

勝者:ロナルド・レーガン(共和党)


 1980年の米国株式市場のパフォーマンスは、+25.8%でした。1979年にイラン革命が起きテヘランの米国大使館に勤める職員たちが人質として444日にわたり、拘束されました。ガソリン価格は急騰し、米国のガソリンスタンドの前には長い行列ができました。


 この年の相場は、そのような大混乱を引き継ぎ、カオス的な環境の下で乱高下しました。一例として銀行が上得意の法人顧客に貸し付ける際のプライムレートは、1月の20%から7月には10.75%まで急落、その後、一転して年末には21.5%まで吊り上がりました。


 投資家は経済の混乱を民主党のカーター政権の責任だと感じ、共和党のロナルド・レーガンを選びます。

つまり、ここでも経済の混乱が政権交代につながったのです。


1984年の米国株式市場は?

勝者:ロナルド・レーガン再選(共和党


 1984年の米国株式市場のパフォーマンスは、+1.4%でした。それに先立つ1982年と1983年はS&P500株価指数はそれぞれ+14.8%、+17.3%と好調であり、経済は第2次オイルショックから立ち直りつつありました。


 8月のパフォーマンスが良かった背景には機関投資家の積極的な売買があります。1日出来高で過去最高(当時)の2.37億株を記録したのも8月です。


 この年の大統領選挙ではレーガン大統領が楽々再選されました。


2000年の米国株式市場は?

勝者:ジョージW・ブッシュ(共和党)


 2000年の米国株式市場のパフォーマンスは、▲10.1%でした。1995年から始まったドットコムブームで5年間にわたり、毎年+19.5%から+34.1%という素晴らしいパフォーマンスが続いた後、2000年春頃から設備投資に異変が起き、長年の過剰投資の反動が米国経済を襲いました。


 この年の大統領選挙では、ビル・クリントンの後を受けて大統領に立候補した民主党のアル・ゴアが共和党のジョージW・ブッシュに敗北しました。投資家はドットコムバブルの責任の所在を民主党に求めたわけです。


2008年の米国株式市場は?

勝者:バラク・オバマ(民主党)


 2008年の米国株式市場のパフォーマンスは、▲38.5%と散々なパフォーマンスでした。住宅ブームで借金を返済する能力がないような借り手に対しても見境なく貸付を実行する、いわゆるサブプライム・バブルが起き、それがリーマン・ショックを引き起こしました。


 この年の大統領選挙では民主党のバラク・オバマが勝ちました。投資家は経済の大混乱の責任を共和党に求めたのです。


トランプ再選は順当

 大統領選挙で番狂わせが起きるケースでは、選挙に先立ち経済が低迷した場合が多かったです。

株式市場の低迷も現職大統領が負ける不吉な予兆です。


 ひるがえって現在を見た場合、経済はしっかりしています。インフレも低く、安定しています。失業率は歴史的に低い水準です。


 これらのことから考えて現職のトランプ大統領が再選されるというのが順当なところだと思います。


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▲特集・米国大統領選2020

(広瀬 隆雄)