3月決算企業の第1四半期決算がほぼ出そろいました。決算発表後、株価は予想外の動きをする場合があります。

失敗しないためにはどうすればよいでしょうか。


第1四半期決算の重要性

 3月決算企業の第1四半期決算(2020年4-6月期)がほぼ出そろいました。この第1四半期決算は、非常に注目していた数値です。なぜなら、新型コロナウイルスが業績に与えた影響がストレートに反映される、初めての決算だったからです。


 2020年3月期の本決算発表の際、多くの企業は2021年3月期の業績予想を発表しませんでした。新型コロナウイルスによる業績への影響が読めなかったためです。


 しかし、2021年3月期の第1四半期決算では、実際の3カ月間の業績数値が明らかになります。

この数値を見ることにより、各企業の影響がどのくらい及んでいるかを読み取ることができます。


決算の読み解きかた

 決算をみると、多くの企業が新型コロナウイルスの影響により業績が悪化しましたが、中には会社発表の業績予想をはるかに上回るものや、前年同期と比べ大きく増収増益になっている企業もありました。


 しかし、業績が好調であることが確認された銘柄も、株価が大きく値下がりしているものもあります。このとき、「こんなに良い決算内容だったのに株価が下がるなんておかしい」と株価が値下がりする中、買い向かいや、保有株の値下がりをそのまま我慢して持ち続けてしまう方は要注意。


 その結果、株価が下げ止まらず、多額の含み損を抱えた塩漬け株を作ってしまう…という失敗につながってしまうのです。


なぜ好決算なのに値下がりするのか?

 その理由は大きく2つあります。


 1つ目は、好決算によりひとまず好材料が出尽くしたとして、保有株の利食い売りを実行する投資家が数多くいた場合です。


 2つ目は、確かに好決算ではあるが、アナリストなどのプロ投資家が予想していたよりも良くない数値だったため、それが嫌気されて売りが出たという場合です。


 1つ目の理由であれば、利食い売りが止まれば再び株価が上昇する可能性が高いです。2つ目の理由の場合は、決算発表をきっかけに売りが増加し、株価の下落が続く可能性が高いです。


 でも、私たち個人投資家が、好決算にもかかわらず株価が下落するのがどちらの理由によるものなのかを知ることは極めて困難です。


好決算かどうかは個人投資家ではなくプロ投資家が決める

「決算が良かったのに株価が下がったから買ってみたらもっと下がって塩漬けになってしまった」「保有株の決算が良かったので持ち続けましたが、なぜか株価が下がってしまったのです」という失敗相談をよく受けます。


 失敗の原因は、発表された決算内容の良し悪しを「自分目線」で判断してしまっていることにより起こります。典型的なのが、会社発表の業績予想や、会社四季報に記載されている業績予想と実際の決算数値を比較してしまうことです。


 しかし、アナリストなどのプロ投資家が会社発表の業績予想や会社四季報記載の業績予想をうのみにすることはまずありません。

独自に企業分析を行い、業績がどのくらいになりそうかをプロ投資家自身が予想しています。


 株式市場で株価を大きく動かす力があるプロ投資家が、たとえ会社発表の業績予想を上回る決算内容ではあるものの、彼ら自身の予想には届かず、期待外れの決算だと評価したならば、株価は値下がりするでしょう。


 いくら個人投資家が決算内容を見て「素晴らしい好決算だ! 株価も大きく上昇するに違いない!」と思っていても、プロ投資家が同じように思わなければ、株価は上昇するどころか逆に値下がりしてしまうのです。


株価のトレンドに逆らわずに行動することが無難

 では、こうした動きを踏まえ、私たち個人投資家はどのように行動すればよいでしょうか。


 個人投資家は、各企業の決算につきプロ投資家がどのように予想しているかを知ることはできません。また、好内容の決算発表後の株価下落の理由を正確に把握することもできません。


 ですから、決算発表後の株価の動きを見たうえで行動することが無難です。


 ここで決して、自分自身の判断により「この銘柄はこんなに好業績なのに株価が下がっている」として値下がりする中を買い向かったり、保有株を我慢して持ち続けないようにしましょう。


 たとえ、好決算で株価上昇間違いなし! と自分が思ったとしても、株価が下落することは多々あります。やはり助けになるのは株価のトレンドなのです。プロ投資家が決算内容を好感すれば株は買われて上昇トレンドになりますし、逆に決算内容に失望すれば株は売られて下降トレンドになります。


 仮に、一時的な利食い売りにより株価が値下がりしただけなのであれば、程なく株価は下げ止まって上昇トレンドに転換するでしょう。

そうなったのを確認してから買えばよいのです。


 好決算に見えても、そう思っているのは自分だけで、プロ投資家は期待外れと思っているかもしれません。だからこそ、決算内容そのもので判断するのではなく、決算発表後の株価の動きにより形成されるトレンドに従って行動することが、大きな失敗の回避につながります。


(足立 武志)